“移住”という人生の大きな決断をして、鹿児島の最前線で活躍する地域おこし協力隊が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『地域おこし協力隊図鑑』
今回のゲストは、長島町で地域おこし協力隊員として働く江副佑輔さんです。
第4話では、長島町で暮らす上での想いや、プライベートの部分について、お話を伺いました。
江副さんの姿をとおして、人生をかけて必死に働いてる地域おこし協力隊員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase編集者)、森満 誠也(KagoshimaBase取材者)>
福岡より長島の方が暮らしやすい
長島での暮らしを振り返ってみて、当初の感覚と今で、違いがありますか?
地域おこし協力隊に誘っていただいて、まず長島がどういうところなのかを知るため、一泊二日で長島を旅行しました。
初めて長島を訪れた時、福岡県にある『糸島(いとしま)』に似てるなって感じたんですよ。
海に面して道路がある感じとか。
たしかに!
友人が住んでいたこともあって、たまに糸島に遊びに行ってたんですよね。
だから僕にとっては安心感があって。
あと、長島の住民の方と話をすると、みなさん口をそろえて「長島は田舎だ」っていう表現をされるんです。
「鹿児島は何もない」って、昔、自分も言ってた気がします。
でも、僕は全くそういう風に思わないんですよ。
というと?
『地方』っていう表現は分かるんですけど、自分の住んでる町を卑下する意味で『田舎』って言う必要はないんじゃないかなぁって。
なるほど。
安心感を特に感じたのは、今も住ませていただいている空き家が自分のばあちゃんの家にすごく似ているんですよね。
それも嬉しくて。
利便性の面でも長島って『島』なんですけど、橋が通っているので買い物の不便さは全く無いんです。
もちろん、景観も抜群ですし。
なるほどなぁ。
利便性のところは面白い視点ですね。
32年間を福岡で暮らしていた身からすると、僕にとっては福岡よりも長島の方が住みやすいです。
ほぉ!
人と人の距離感や相手への思いやり、気にかけ方。
そういった視点で『暮らしやすさ』を考えてみると、僕にとっては圧倒的に長島の方が合ってます。
長島の空気感や人の温かさが、江副さんにそう思わせてるんだろうなぁ。
届ける先の顔が見えるという喜び
長島町の人口約1万人に向けて僕は広報紙を作っているんですけど、福岡で不特定多数に向けて広告物を作っていた頃と比べると、届ける先の顔が見えるんです。
そのことが、僕自身の喜びに直結してますね。
誰のために情報を届ければいいのか。
自分が届ける情報でどんな人達が笑顔になってくれるのか。
そこが明確なんですね。
町を歩いててすれ違うおじちゃん。
たまたまスーパーであいさつをしたおばあちゃん。
バス停で待ってる時の雑談で、
何をしてる方なの?
実は役場で広報紙を作ってるんです。
あ!私、見てるわよ!
みたいな、
こういう、ちょっとしたすれ違いの瞬間に会話が出来る環境って、福岡では考えられなかった。
なるほど。
それって、ずっと鹿児島に居る私たちは見失ってしまってるかも。
外からやってきた江副さんだからこそ、そこに価値を見出せたんだなって思います。
たしかに、僕たちにとっては当たり前になりすぎて、そこに価値があるって気づけないもんね。
うんうん。
僕にはやっぱり、ちょっと挨拶を交わしたり、ちょっと気にかけたり、気にかけてもらえたりっていう距離感が合ってるんです。
なるほどなぁ。
車と保護猫と私
話は変わるんですけど、長島町って実のところ・・・野良猫の数が多くて問題化しているんです。
地域の問題になってはいるんですけど。町全体として啓蒙活動以外、特に解決の手立てが見つからない状態でして。
なるほど。
それでも『じゃあ、せめて自分に何ができるんだろうか』と考えた末、猫を保護するという活動だったらできるんじゃないかなって。
長島に移住した当初は、原付で約11ヶ月間ぐらい生活をしていたんですけど、長島という町に本気で定住したいなという気持ちが固まったので、車を買ったんです。
結果的に、車を購入したことが保護猫の活動にもプラスに働いて。
車を買うことが猫を保護する活動のプラスに?
車って『自分以上のものを運べるツール』じゃないですか。
原付と違い、保護した猫も車で連れていけますし。
おかげで動物病院に行けたり、譲渡会にも行きやすくなりました。
なるほど!
少し話はズレるんですけど、車を手にいれる3ヶ月間ほど、ずっと気にかけていた野良の仔猫がいたんです。
家の軒先に仔猫がいるタイミングで、ご飯をあげるぐらいの関係性だったんですけど。
うんうん。
車を購入するため、福岡に1週間ほど家を空けていたんですが・・・長島に帰ってきたら、その仔猫がボロボロの状態になっていて。
なるほど…
車を購入する前は、猫と親しくなりすぎないように線引きをしていたんです。
けれど、車を持って移動できるようになったことで、身捨てられず『これも何かの縁だよなぁ』と思いまして。
その仔猫を保護することにしたんです。
うんうん。
そこから里親探しを始めるんですけど、3ヶ月後ぐらいに里親が見つかって。
無事に引き渡すことができたんです。
そっか!
保護をするって、自分で育てるだけじゃなくて、里親を探すっていう選択肢もあるわけですね!
無関心で問題を野放しにすることもできます。
『ペットとして飼う』という選択肢もあります。
地域猫として距離を置きながらも共存する選択肢も。
悩み、たくさんの事例を学んで、僕なりに見出した選択肢だったと思います。
その後も、少し経ってから仔猫を2頭保護して里親を探し、無事に引き取られていきました。
なるほど。
無関心でいることが、おそらく一番ラクな手段ですよね。
僕みたいに無関心だった側の人は、『色々な選択肢があるということを知る』っていうところから始めても良いのかもなぁ。
そうですね。
ただ、その後に保護した2頭の仔猫たちがいるんですけど、譲渡会に出そうとした矢先、血液検査でその子たちの病気が判ったんです。。
病気?
猫の病気には「猫白血病ウイルス感染症」や「猫免疫不全ウイルス(エイズ)」というものがありまして。
猫って本来は15~20年ぐらいの寿命なんですけど、その病気を持った子たちは寿命が3年なんです。
えぇ…
そうなると、譲渡会でもやっぱり『里親に出せない』っていう状況になりまして。
僕自身、甘い考えなのかもしれないんですけど、里親を探す前提で動いていた手前、この子たちをどうしたらいいのか、途方に暮れたんです。
それはなかなか辛い状況…
今後の協力隊の活動で出張などで家を空けることもある・・・。
この子たちの面倒を自分がずっとみないといけない。
家を空けること自体が難しくなるんじゃないかって、考えてしまって。
うーん…
そんな時、同じ集落のご近所の方が相談にのってくれて。
それから、その方が一緒にご飯をあげたり、トイレのお世話を手伝ってくれることになるんです。
めちゃくちゃ素敵な話。。
長島で暮らしていく
車を購入したり、猫を保護する活動をしたり。
話を聴いてると、協力隊を退任した後も、長島で暮らしていく感じなんですね。
そうですね。
猫を保護する活動に関しても、周りの人から「猫を保護するってどんな覚悟が必要か分かってるの?」って言われたりもして。
僕も甘い考えだったり、弱い部分があったので、すごく反省するところもあったんです。
うんうん。
ただ、少しずつ周りに頼ったり、仕事を抱えすぎないようにしたりと、最近は余裕を持つことを意識してます。
意図的に余白をつくるって、めちゃくちゃ大切なことですよね。
僕もすぐパンクしちゃいそうになるので、すごく分かります。笑
協力隊を辞めたいと思うこともあった
ですね。
それこそ最近まで、本当に休み無く働いてしまっていたんですよ。
仕事とプライベートの境目が無さそうですもんね。笑
詰め込んじゃうんですよね。笑
1ヶ月のうち7~10日が広報紙の制作集中期間。
その他の空いたところで、広報紙につながる下準備や自分のやりたいこと、色々な事業者さんのお手伝いをしていて。
なるほど。
僕の感覚だと、プライベートも仕事もやりたいことをやってるので、もともと線引きは無かったんです。
だから、気づいたら夜中の3~4時まで仕事をしちゃうっていうクセがあって…。
今となっては良くなかったなって思うんですけど。。
夜中の3~4時まで仕事…やばすぎますね。笑
そうなんですよ。笑
平日も土日も関係なく、お仕事や町内の困りごとの手伝いをしていて。
正直に話すと、『協力隊の仕事を辞めたいなぁ』って思うタイミングが、今まで何回かありました。
そうなりますよ。。
協力隊の僕に協力してくれる人達の存在
ただ、その度、僕にアドバイスをくれる人、僕のことを心配してくれる人が現れてくれるんです。
周りの人に支えられて今の僕があるって、そういう風に感じていますね。
今は、夜中まで仕事をするみたいな生活スタイルから、少しずつ変わってきました?
少しずつ変わってきました。
食事ひとつとっても、大切にできるようになったと言いますか。
ご飯をちゃんと食べるとか、、いや、本当は当たり前のことなんですけど。。
笑笑
僕は『地域おこし協力隊』という職種なんですけど、協力隊の僕が困ってる時に周りの人が協力してくれるって、なんか面白いですよね。
うんうん。
地域おこし協力隊の『隊』って、僕はすごく違和感があったんですよ。
でも、協力隊員が一人で何かしようとすればするほど、周りの人達が助けてくれる。
協力隊員の協力をしてくれる人も含めて『みんなで協力隊として活動をしてる』っていう、今はそういう感覚ですね。
なるほど…深いなぁ。
江副さん自身が魅力的だから、そうやって周りに助けてくれる人が現れるんじゃないかなぁ。
江副さんの人柄があってこそ、今の環境が構築されているんだと思います。
ありがたいです。
1年に1回、江副さんの話を聴きに来ましょうよ!
これから1年後、3年後、5年後って、江副さんがどうなっていくか、純粋に楽しみじゃないですか?
楽しみよ!
江副さんにはこれから、たくさんの良いことがおこるんじゃないかなぁって、そう思うよね。
僕自身、手を付けていることがたくさんあるんです。
デザインはもちろん、宿泊業に関しても興味を持ってくれる方が増えてきてて。
他にもまだまだやりたいことがたくさんありますので、順番に手を付けていきたいなぁって思います。
いやぁ、、素敵な話をありがとうございました!
こちらこそ、遠いところをありがとうございました!
江副さんが教えてくれた観光ルートを巡って帰りますね!笑
ありがとうございました!!
まとめ
ちょっと気にかけたり、気にかけてもらえたりっていう距離感が合ってる
『福岡よりも長島の方が暮らしやすい』と語ってくれた江副さん。
すれ違う人とたわいもない会話が出来ることに価値を感じると教えてくれて、その感覚が逆に新鮮で、ハッとしました。
帰り際、長島町のおすすめスポットをいくつか教えてくれたので、ぶわーっと回って帰ったんですけど、全部最高で…‼
神聖な空気が流れ、長島全体が見渡せる行人岳☟
新鮮で美味いづけ丼が800円で食べられる『道の駅長島(ポテトハウス望陽)』☟
お洒落すぎるカフェ『StopBy』☟
物産館には野菜やお魚がたくさん売ってたし、他にもまだまだ魅力的な場所、人がいる長島町へ、是非行ってみてください!(長島町を推す『まとめ』になってしまった…)
ということで第4話では、長島町で暮らす上での想いや、プライベートの部分について、お話を伺いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ではまた次回、お会いしましょう!
※2022年4月1日に江副さんは、保護した仔猫のお世話のことを相談し、助けてもらった「その方」と入籍されましたとさ。
めでたしめでたし。
(To Be Continued…)
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