もどかしさや悔しさが行動の源【永迫昌之|枕崎市役所|第1話】

公務員図鑑

最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』

今回のゲストは、枕崎市役所で働く永迫昌之さんです。

この記事は9分で読めます^^

前編では、公務員として外で活動することの苦悩や挫折の経験を中心に、お話を伺いました。

永迫さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。

<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase取材者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>

永迫さんのプロフィール

1990年11月生まれ。

鹿児島県薩摩川内市出身。2児の父。

高校までを薩摩川内市で過ごし、鹿児島国際大学を卒業後、肝付町で教員として働き始める。

ふとしたきっかけで今後の生き方について考え直し、枕崎市役所へ入庁。

水産商工課で「きばらん海」の担当になったことでお祭り男となり、枕崎や枕崎で暮らす人のためにやれることをやりたいと思うようになる。

試行錯誤しながら2023年6月に『一般社団法人枕ラボ!(まくらぼ)』を設立。

枕崎市役所で働きながら、枕ラボ!の代表理事として枕崎のために奮闘する。

以前は教師として肝付町で働いてました

森満
森満

今日は、よろしくお願いします!

めちゃくちゃ久しぶりですよね!?

永迫さん
永迫さん

こちらこそよろしくお願いします!

4年前、いちき串木野市の研修会で初めてお会いして以来なので、かなりお久しぶりですよね!

今回場所を提供していただいた『ゲストハウスKoToKoTo』
森満
森満

ですよ!

あれからどんな人生を歩んできたのか気になっていて。

SNSを見る限り、かなり色々な挑戦をされてきたんじゃないかなって思いまして。

永迫さん
永迫さん

紆余曲折、いろんなことがありました。。笑

森満
森満

笑笑

ちなみに今って、枕崎市役所のどこに所属されているんですか?

永迫さん
永迫さん

企画調整課っていう部署で働いてます。

スノーピークのチェアが縁側に置いてあり、最高の座り心地でした。。
森満
森満

どんな仕事を?

永迫さん
永迫さん

企画調整課の政策推進係で、「地方創生」に関することをしています。

地方版総合戦略の策定や事業の立案、関係課のヒアリングや事業の取りまとめ&効果検証をしたり、企業誘致に関する仕事をしたり。

森満
森満

すごい!

市役所の中枢じゃないですか!

永迫さん
永迫さん

いやいや、自分はペーペーです。笑

もともとは肝付町で教員をしていた

上木
上木

永迫さんって、新卒でいきなり枕崎市役所に入ったんですか?

永迫さん
永迫さん

いやっ、もともとは肝付町で教員をしていたんですよ。

というかそもそも薩摩川内市の出身で、枕崎に特に強いつながりがあったわけでもなかったんです。笑

上木
上木

ほぉ!笑

そうなんですね!

永迫さん
永迫さん

肝付には3年間いたんですけど、あるタイミングで今後の人生を見つめ直す機会があったんですよね。

このまま期限付きで教員をずっと続けていくというよりも、今後の生活のことを考えたら他の場所で他の働き方をした方がいいんじゃないかなって。

上木
上木

なるほど。

永迫さん
永迫さん

で、これからどこで生きていこうかなって考えた時に、『枕崎で生きていこう!』と思って。

森満
森満

…なんで?笑

なんで急に枕崎!?

永迫さん
永迫さん

あの..暖かそうだったんですよ。

気温が

森満
森満

気温が!?笑

永迫さん
永迫さん

南だし。笑

あとは大学の頃に調査で数回枕崎を訪れたことがあって。

鰹ラーメンが美味しかったことを思い出したんですよ。

森満
森満

ほうほう。。

永迫さん
永迫さん

そういえば仲の良かった友人も、枕崎で花屋さんを継ぐとか言ってたよなって。

友人もいるし、ご飯も美味しいし、気温も暖かそうだし。

枕崎で仕事を探してた時、枕崎市役所の試験がちょうどありまして、受けたら拾ってくださった。

そして今の僕があります。笑

上木
上木

理由が『暖かそうだったから』って、最高ですね。笑

初っ端に水産商工課を経験できたことが幸運だった

森満
森満

そこから枕崎市役所に入って、まずはどこに配属を?

永迫さん
永迫さん

最初が水産商工課でした。

今思うと初っ端にそこの部署を経験できたことは、自分にとってすごく良かったなと思っています。

森満
森満

というと?

永迫さん
永迫さん

私は観光の係だったんですけど、『きばらん海』の担当になったんですよ。

鹿児島の夏を彩る大花火大会
永迫さん
永迫さん

市役所のことも枕崎のことや言葉もよく分からない中で、これから100年続けていくんだっていう祭り(伝統行事)の担当になって。

この仕事を通して少しずつ感化されていくんですね。

森満
森満

感化されていく?

永迫さん
永迫さん

『祭りの成功』というひとつの目標に向かって、行政も民間も壁をとっぱらった状況で一緒に進んでいくわけです。

それを4年間経験したことで、良い意味で自分の感覚がバグっていくんですよ。

森満
森満

なるほど。

いわゆる『公務員らしい働き方』とは異なる働き方ですもんね。

永迫さん
永迫さん

ですね。

枕崎のことも枕崎の人たちも、今まで以上にめちゃくちゃ大好きになりました。

僕が27-8歳ぐらいの頃です。

『大好きな枕崎のためにもっとできることがあるんじゃないか?』って、自分の中で試行錯誤し始めたタイミングでしたね。

旗を立てても折られて自暴自棄に

森満
森満

観光の仕事を4年経験して、次はどこに?

永迫さん
永迫さん

現職である企画調整課の政策推進係に異動になりました。

地方創生総合戦略をまとめたり、国とやりとりをして事業の計画書を作ったり、企業誘致のためのPRや制度設計を見直したり。

森満
森満

めちゃめちゃ大変そうな部署。。

永迫さん
永迫さん

正直、前の部署の働き方が自分としては充実してたので、最初は少し寂しかったですね。笑

でも、企画調整課の仕事も楽しいなと感じてたんです。

ただ…

森満
森満

ただ?

永迫さん
永迫さん

ちょうど異動したぐらいのタイミングって、自分で言うのもあれなんですけど、気持ち的に沈んでたんですよ。

なぜかというと『きばらん海』の担当をしてた頃、実は自分の中で色々と仕掛けていて

森満
森満

仕掛ける?

永迫さん
永迫さん

仕事はもちろんしっかりやった上で、業務外のことにも色々チャレンジしていたんです。

ただ、旗を振っては折られ、また新しいことにチャレンジをしては上手くいかず

そんなことを繰り返していて。

森満
森満

なるほど..

同じ経験があるから、すごく良く分かります。

永迫さん
永迫さん

実はその時に森満さんにDM送って、いちき串木野市の研修でお会いしてるんです。

当時、頴娃町の地域おこし協力隊だった前迫さんに『森満さんに会いに行った方が方がいいよ!』って背中押してもらってて。

2019年6月、いちき串木野市役所の研修でお会いした時の永迫さん(写真左)と森満(写真右)。写真中央はグリーンファームの橋口園長。
森満
森満

おお!

お会いしたのは、そのタイミングだったんですね!!

僕も苦しんでましたよ!笑

永迫さん
永迫さん

当時は『枕崎のために何かしたい。もっと何かできるはずだ!』って思いながら、自分のできる範囲でアクションをしてみるんですけど、その度に挫折してたんです。

森満
森満

「余計なことしてないで、仕事に集中しろよ」的なこと、僕も散々言われてきましたもん。

公務員からは『余計なことするな』と言われ、民間の人からは『もっと頑張れ』と言われ。

どちらも悪気がない分、結構心に刺さるんですよね。苦笑

永迫さん
永迫さん

ですね。。

『正直誰とも話したくない..』っていうのが、企画調整課に異動した最初の頃でした。

『これ以上まちづくりに関することで誰とも言い合いをしたくない』って思ってしまって。

森満
森満

なるほどなぁ。

永迫さん
永迫さん

ただ、その時私に白羽の矢が立った出来事がありまして。

上木
上木

白羽の矢が?

永迫さん
永迫さん

はい。

枕崎の青年会議所に入らないかって、誘ってもらったんですよ。

もともと祭りを民間の人達と一緒に進めていたので、その頃から「どう?」って声をかけてもらっていたんですけど。

上木
上木

うんうん。

永迫さん
永迫さん

で、青年会議所に入って活動に参加させてもらってたんですけど、事業の設計や到達点など、ホントにいろんな角度の考え方の人たちがいるなぁって勉強になりまして。

自分の中で大きくスキルアップにつながったんですよ。

青年会議所の皆さんには本当にお世話になりました。

上木
上木

様々な人と意見を交わすことで多角的な視点が持てるようになるって、市役所の外に出てみないとなかなか持てない感覚だと思います。

永迫さん
永迫さん

ただ、その一方で、市役所の中での自分自身に無力さを感じるようになりまして

『結局僕は何ができるんだろう..』って。

上木
上木

市役所という組織の中にいると、「いち職員」の立場で、下から突き上げて自分の思ってる方向に組織を持っていこうとするのって、かなり難しいですもんね。

永迫さん
永迫さん

ほんと、そのとおりで。

組織の中の決定権のない自分という存在がもどかしく、精神的に苦しくなってきましたね。

コトを前に進めるためには自分がトップに立つしかない

森満
森満

魂込めて必死にやってた分、反動で気持ちが落ちちゃったんですね。。

永迫さん
永迫さん

それでも、他の地域のイベントとかにはちょこちょこ顔を出してたんです。

素晴らしい取り組みをしてる他の地域の人達と話してるうちに、自分の中のもどかしさが少しずつ怒りに変わってきて。

森満
森満

分かります!

そういうのが聴きたかったんです!笑

永迫さん
永迫さん

笑笑

その怒りが、行動するためのパワーに変わっていきました。

『..僕は何をしてるんだろう!』って

ちゃんと枕崎の課題に向き合いたかったし、その課題を解決するために血の通ったチャレンジをしてみたかった。

森満
森満

なるほど。

永迫さん
永迫さん

行政の手が届かない所を、自分たちが行政とは違う切り口でやっていくんだっていう部分を、本気で取り組みたくて。

上木
上木

なるほどなぁ。

すごいねぇ。。

永迫さん
永迫さん

で、結局行き着いた所としては、自分がやりたいことをスピード感を持って成し遂げるためには、やっぱり自分がリスクを負って先頭に立つ組織をつくらないとなって思ったんです。

森満
森満

なるほど!

それが一般社団法人枕ラボ!の立ち上げにつながっていくわけですね!

まとめー第1話ー

もどかしさが怒りに。怒りが行動のパワーに。

行政職員として働きながら、職場外で活動をしようとする時に直面するのが、『公務員だから仕事以外に余計なことをするな』という同調圧力。

編集部の私自身も、今まで様々な同調圧力に苦しんできた分、永迫さんが苦しんでいた時期のお話は共感しかありませんでした。

永迫さんのお話は、いわゆるキラキラした部分だけじゃなくて、そこに至るまでに下積みや苦しみを経て正直にお話してくれるからこそ、応援したくなる

苦しんだことがある人は同じ苦しみを抱える人を包み込めるし、怒りが原動力にある人は、軸がぶれずに強いと思うなぁ。

ということで前編では、公務員として外で活動することの苦悩や挫折の経験を中心に、お話を伺いました。

次回は、モヤモヤ期を抜け出して一般社団法人を立ち上げるまでの永迫さんの感情の変化を中心に、お話を伺います。

枕ラボでのミーティングの様子

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

また次回、お会いしましょう!

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