“移住”という人生の大きな決断をして、鹿児島の最前線で活躍する地域おこし協力隊が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『地域おこし協力隊図鑑』
今回のゲストは、長島町で地域おこし協力隊員として働く江副佑輔さんです。
第2話では、地域おこし協力隊に着任した後の暮らしや働き方について、お話を伺いました。
江副さんの姿をとおして、人生をかけて必死に働いてる地域おこし協力隊員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase編集者)、森満 誠也(KagoshimaBase取材者)>
協力隊としての仕事&裏ミッション
江副さんの地域おこし協力隊としてのミッションって、何ですか?
メインの仕事は、役場の広報紙の編集とデザインですね。
これまでの長島町の広報紙って、職員が作成してたんですか?
そうですね。
私が来るまでは、役場職員が1人で『編集』も『デザイン』もやっていて。
でも、デザインの仕事って、短期間で技術を学んで、パッと結果が出せるようなものでは無いんですよ。
異動してきた役場職員が、簡単に出来ることではないですよね…。
なので、僕が着任する前は、広報紙の担当職員(1名)に色々な仕事がのしかかってて、すごく大変そうだったんです。。
広報紙の担当って1人でやってたんですか…⁉
それはなかなかですね…。
年休が消化できなかったり、夜遅くまで仕事をしないと終わらなかったり。
とにかく大変な業務になっていて…。
私が広報紙のデザインを担う協力隊に加わることで、『職員の業務負担を手分けする』ということも、裏ミッションとして望まれていましたね。
なるほど!
僕が着任して3年目の今となっては、役割分担がある程度明確になりました。
昨年から新しい担当者と一緒に広報紙を制作してるんですが、その担当者の方は、ほぼ定時で帰れるような状況になっています。
すごい!
江副さんが加わった効果が、職員の働き方にも出てるんですね!
江副さんが来る前は、ある意味、素人の方が1人で広報紙を作成してたわけですよね?
急に異動で『広報紙を作りなさい』って、それは難しいよなぁ。
得意なことは得意な人がやった方がいいですもんね。
グラフィックデザイナーとしての肩書きを使って殻を破る
ってことは、江副さんは広報紙制作の仕事をメインでやりながら、空いた時間で興味があることに手を付けてる感じですか?
ですね。
長島に来て最初の3ヶ月間は、正直、土日の過ごし方が分からなかったんです。
土日の過ごし方?
なんと言いますか、、正直、暇だなぁと…笑
笑笑
福岡ではずっと激務だったわけですもんね!笑
広報紙のデザインだけをする協力隊でいいのだろうかと。
『協力隊』の肩書きに加えて、元々の『グラフィックデザイナー』の肩書きを使って、自分自身が興味のあることを深掘りしていったら面白いんじゃないかと思い始めまして。
なるほど!!
そんな時、長島町の初代地域おこし協力隊の土井隆さんという方から色々なアドバイスをいただいたことで、殻を破っていこうと思いました。
まずは自分から、長島町内の方に『デザインに関することで何か手伝わせてもらえませんか?』と、お声かけをさせていただいたんです。
うんうん。
そのコミュニケーションをきっかけに仕事につながることもありましたし、ボランティアとしても色々なデザインに関わらせていただきましたね。
役場と協力隊の関係性
少し話は変わりますが、鹿児島県内各地で活躍されてる地域おこし協力隊の方々と話をすると、役場との関係性で悩んでる方が多いなっていう印象があって。
『なかなか協力隊の活動に興味を持ってもらえない』って悩んでる協力隊の方をたくさん見てきたんですけど、長島町の場合はいかがですか?
答えにくいかもしれませんが…。笑
あくまで僕の目線で話をすると、長島町役場の人たちは良くしてくれてると思います。
江副さんの活動に対して、理解を示そうと歩み寄ってきてくれてます?
僕の考え方としては、役場の人に歩み寄ってきてほしいというよりは、協力隊側が歩み寄っていかないといけないんじゃないかなっていう感覚なんです。
なるほど。
長島町の協力隊って現在5名いるんですが、それぞれ与えられてるミッションが違うし、活動方法も異なる中、役場の方との接点って、意外と無かったりするんですよ。
うんうん。
役場側としては、『地域おこし協力隊が何をしてくれるのか、どんなことをするのか』ということに興味はあるんだけど、なかなか役場側から積極的に歩み寄りいくい現状があって。
積極的に役場側からアプローチがあるわけじゃないってこと?
全く無いわけではないんですよ。
ある程度は役場側からのアプローチもあるんですけど、それ以上に僕ら協力隊側から『今こんなことにチャレンジしてます!』って伝えないといけないなって感じてまして。
なるほど。
例えば、どんな感じで役場職員とコミュニケーション取ってますか?
僕の場合だと、例えば、色々な課のお仕事に関わらせてもらえる機会があった時、自分の得意な部分を職員の方に伝えることで、少しずつ関係性を構築するようにしてます。
普段からのコミュニケーションを大事にされてるわけですね。
おそらく役場の方々も、協力隊が得意な内容によっては『頼りたい』って思ってる部分があるんじゃないかなぁって感じているんです。
ただ、思い切って『頼りたいです!』と声をかけた時に、協力隊の人によっては断られることもあったりして。
なるほど。
お互いにコミュニケーションが上手く取れてなくて、断絶してしまったり。
そうなってしまうことは、すごくもったいないなぁって思うんですよね。
たしかに。
それって、役場と協力隊の関係性っていうこと以上に、人と人の関係性の部分も大きいですよね。
そうですね。
とはいえ、やっぱり協力隊って地域の外から入ってきてる存在なので、ギブ&テイクの割合でいうと、圧倒的にギブを増やさないと、自分たちのことを理解してもらえない部分はあると思います。
なるほどなぁ。
ただ、役場職員の立場として思うのは、そもそも協力隊の方って、色んな覚悟を持って地域に移住してきてくれてるわけじゃない?
だからこそ、役場側がもっと歩み寄る姿勢を持たないといけないよね。
マジでそう!
受け入れる側の熱量とか想いが、めっちゃ大事だと思ってるんですよ。
伝えるためのデザイン力
江副さんのお話を聴く限りだと、役場との関係性は上手くいってそうな印象なんですけど、役場職員とのコミュニケーションから派生した活動とかってありますか?
例えば昨年で言うと、コロナワクチン接種の1回目があった時、長島町役場が予約対応で手いっぱいになったことがあったんですよ。
他の自治体でも問題になってたと思うんですけど。
ありましたね!
受付窓口や行政の体制からして、本来はインターネットでの予約が助かるところなのですが…。
高齢者の方々にとっては、インターネットがうまく扱えず、電話での予約をせざるを得ないことで、役場の電話回線がつながらない状況になっていました。
うんうん。
1回目のワクチン接種がそういう状況だったので、2回目のワクチン接種に向けて、役場の担当職員の方々も悩まれていたんです。
特に『どうやって町民に予約方法を周知するか』という部分に関して。
なるほど。。
なにか自分でも手伝えることはないかと考えた時、今こそ『デザイン』でチカラになれるんじゃないかって、そう思ったんです。
『周知するための案内文書やDM、そういう部分でなんでも関わらせてもらえませんか?』と、担当職員の方々に頼みこみました。
ほぉ!
役場としては、予約をインターネットでしてほしい。
でも、それを伝える『お知らせ』が、7~9枚の長い文書になってて。
しかも画像も荒くて。
あーめっちゃ分かります。。
僕らがやってしまいがちなやつですね。。苦笑
その『お知らせ』を見て、『これは文章として読みやすく、画像もきれいなものにした方が町民へ絶対に分かりやすく届くから、自分に伝える情報の整理をさせてもらえませんか⁉』ってお話させてもらって。
最終的にA4の表裏、紙1枚に情報を集約し、見やすく分かりやすいデザインを提案させてもらいました。
すばらしい。
そういうことって、僕らには出来ないからね。
めちゃくちゃ喜んだと思うなぁ。
喜んでいただけましたね。
結果的に二回目のワクチン接種では、インターネット予約が9割を超えて。
役場がパンクすることもありませんでした。
そういうことがあると、江副さんの信頼度が役場の中で爆上がりしますよね。笑
いえいえ。
お役に立てただけで十分です。
多分、最初に役場が作ってた『お知らせ』が7~9枚になってたのは、予約手順を一言一句間違わずに載せてたからじゃないですか?
そうですね。
『全部間違わないように描かないと分からないんじゃないか?』って思ってしまいがちと言いますか。。
これって結構、役場あるあるだと思います。苦笑
デザインとして綺麗に見せる方法だったり、コピーライターとしての仕事は、私が今までやってきた特技なので。
自分の得意分野で、ちょっとでもみなさんのお役に立てないかなって、その時は思ったんですよね。
《第2話》まとめー協力隊としての働き方編ー
第1話、第2話と記事を書きながら、江副さんは『自分』を主軸に物事を考えられる人なんだろうなぁって感じて。
自分に何ができるのか。
自分の得意なことで何か役に立てないだろうか。
自分から積極的に、自分自身を知ってもらう努力をする。
相手の責任にしてしまいそうな場面でも、自分自身に焦点を当てて、物事が前に進むための一歩を踏み出す。
背筋が伸びまくりました…‼
ということで第2話では、地域おこし協力隊に着任した後の暮らしや働き方について、お話を伺いました。
第3話では、コピーライターとしての仕事の仕方や、デザインを生業とする上での想いについて、お話を伺います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ではまた次回、お会いしましょう!
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