最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島市役所で働き、10ヶ月間の育児休業を取得していた上木寿人さんです。
第5話では、10ヶ月間の育休を終えた今の気持ちについて、振り返っていただきました。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
10ヶ月間の育休を振り返って

10ヶ月間の育休を振り返ってみて、どうでしたか?

幸せだったよ。
すごく幸せだった。

今回のインタビューは、『幸せだったよ』っていう記事にします。笑

笑笑
幸せだったというか、今まで以上に幸せになったよね。

育休を取る前と今を比較して、気持ちの中での変化があります?

もうさ、何て言うの、、全然違うよね。
全く違う。

というと?
具体的にどの辺が変わりました?

自分がこれからどう生きていきたいのか。
そういうことを、よく考えるようになったね。

ほぉ…深いですね。。
『育休取ったから子どもと仲良くなりました!』っていうよりは、子どもを通して自分自身を見つめ直したということですかね?

そうそう!
子どもも含めて、家族のことや自分の人生について、よく考えるようになったよね。
どうやって幸せに生きていきたいか。
そこだよね。

なるほどなぁ。

夫婦の関係性への影響は?

夫婦の関係性は、育休を取る前と今とで変わりました?

めちゃくちゃ変わったよね。

でも上木家って、育休取る前から夫婦仲良かったじゃないですか?
それでも変わりました?

もともと仲良かったけど、やっぱりコミュニケーションを取る時間が仕事に行ってた時より長くなるのよ。
そうすると、今まで話をしてなかったことも夫婦で話すようになるし、かつ、自分自身のことを考える時間が増えるのよね。

なるほど!
ちなみに、夫婦でどんなことを話するようになりましたか?

『これからどうやって生きていこうか』だったり、『時間って有限だよね』みたいなことかな。
もちろん、子どものことについても話すんだよ。
『来週こんな行事があって』とか、『今日の宿題は』とか。

子どもの行事の共有は、夫婦の会話の最優先事項ですよね。笑

そうそう。笑
でも、それだけじゃなくて『今から僕ら家族はどんな感じで生きていきたいか』みたいな部分を夫婦で話すようになったよね。

それ、めちゃくちゃ良いですね…‼
そこの価値観をすり合わせられてる夫婦、なかなかいないと思うなぁ。。

めちゃくちゃ良かったよ。
自分自身がどう生きていきたいかって、自分の幸せに直結するところだからさ。
『パートナーが何を幸せと感じるか』っていう部分を分かり合えてるって、これから家族として生きていく上で、かなり大きいよね。

たしかに。
いやー…ちょっと、最初から良い話すぎましたわ。笑

逆に、今まで何も考えないで生きてきてたからね。
毎日お酒飲んで「楽しければいいや!」みたいな。笑
組織の外に出ることで世界が広がった

あとはさ、育休を機にカゴシマベースに合流させてもらって、すごく楽しかったのよ。
色々な場所に行って色々な人にインタビューしてさ、市役所以外の接点が増えた。
それが僕にとっては大きな財産だったなぁ。

嬉しいお言葉…‼

これから生きていく上での選択肢が増えたもん。
『自分が普段見てる世界がすべてじゃないよな』って思えたしね。

間違いないっす。
色んな人と話をすることで、『人生、なんとでもなるじゃん』感が醸成されますよね。
『苦しい仕事にしがみつく必要無いな』って思えるというか。

そうそう。
どうしても同じ組織に長く居ると、そこの色に当然染まっちゃうんだけど、育休を取ると組織を強制的に離れられるわけでしょ。
普段見えてない世界が外には広がってるという、当たり前のことに気づいたよね。
それも大きな気づきだったなぁ。

特に役所の中で当たり前だと思って受け入れてたことって、外の世界を知ると、役所の中でしか通用しないルールだったということに気づきますよね。

分かる。
そのルールを当たり前だと思って、今まで仕事してきたっていう恐ろしさも感じるよね。笑
でも薄々気づいてたんだよ。
見て見ぬふりをしてきただけど、今回の育休で完全にその想いが確信に変わったね。

仕事をしてた時間を家族のために使うということ

ちょっと話変わるんですけど、以前、上木さんが『奥さんのアドバイスは100%正しいよ』って言ってたじゃないですか。
最近、『その通りだよな』って感じることが多いんですよね。笑

そうよ。
大した人間なわけがないんだもん、自分なんて。
奥さんの言ってることを聴いてた方が絶対に上手くいくし、ぶっちゃけ『そうやって言ってた方がかっこいい』みたいな所もあるじゃん。笑

たしかに。笑
『理解ある優しい夫』感が出ますよね。笑

そうそう。笑
周りの評価アップっていう点でいうと育休も同じで。
仕事をせずに家族とずっと一緒に居られた上に、周りからは『良いことしてるね!』って言われるって、最高じゃん。
それで楽しく生きられるんだから、絶対みんな取った方がいいよ。

たしかに。
育休って良いことしかないですよね…‼

良いことしかない。
申請書出して仕事休んで、その時間を家族との時間に充てればいいんだもん。
こんな簡単なこと、他に無いよ。
育休取って人生変わった

実際に育休を10ヶ月取り終えて、他の人におすすめしようと思います?

おすすめどころかもう、、何て言えばいいかなぁ、、
『育休取って人生変わった』って、僕は本当に思っていて。
大人になってから人生が変わるようなことって、雷に打たれるか、死にかけるかぐらいしかないじゃない?

『一回死んだようなものだから、これからは自分のために生きよう!』みたいな?

そうそう。笑
もともと、僕は他人のために生きるような人間じゃないんだけどね。笑
でも、『自分を大切にする』っていう感覚は正解だったという想いが確信に変わった。

なるほどなぁ。

若い頃はさ、『人のために生きないと!みんなに迷惑をかけないように一生懸命仕事しないと!』って、思ってた時期もあるんだよ。

一般的には、そっち側の人が多いんじゃないかなぁと思います。

その考え方が間違いだったとは言わないけど、もっと自分のために生きるのも正解だなって思えたよね。

小学生の頃から『真面目に宿題をする。周りの人に迷惑をかけない。』みたいな価値観で生きてきてると、どうしても自分のことを後回しにしちゃいますよね。
でもよく考えたら、自分や家族の時間を犠牲にして休日も仕事をするって、ちょっと意味分かんないもんなぁ。

ほんと、そうだよね。
金銭面の苦しさは無かった?

ちょっと踏み込んだ質問してもいいですか?
育休を取ろうと思う人が一番気になるポイントって、金銭面だと思うんですよ。
育休開始から180日目までは給与の67%、181日目から1歳の誕生日までは給与の50%が育児休業給付金として支給されると思うんですけど、生活は辛くなかったですか?

これね、色んな人に聴かれるんだけど、僕の場合は全く問題なかった。

ほぉ!!

なんで問題ないのかって、もともと自分がお金を使いすぎてたよなって気づいたんだよね。

というと?

仕事してる時って、お昼にお弁当を買うでしょ。
あとは、コンビニに寄ったり、付き合いでお酒を飲みに行ったり。

たしかに。


育休中って、そういうのが一切なくなるわけじゃん?
僕の場合、ご飯はほとんど家で食べてたから、大きく支出が減ったのよ。
しかも健康になる。

なるほど!
健康になることで病院代や薬代も減るから、さらに支出が減る!!

そうそう。
健康になった上で支出が減るって、最高よね。
だんだんと身体も痩せ始めて、調子も良くなって、良いことしかない。笑

育休の給付金は、そもそも給与の67%って言われてるけど、所得税が免除されたりするから、手取りでいうと8割弱ぐらいの金額なんですよね。
鹿児島市の場合は、ざっくり言うと手取りが25万円の人は180日目までが19万円で、181日目から1歳の誕生日までが14万円。
そもそもの支出が減らせることを考えたら、思ってるよりはカツカツでは無いのかもしれないですね。

まぁメリットデメリット、どっちもあるから、そこは天秤だよね。
個人的にはメリットの方が大きいと感じてるから、お勧めしたいけどなぁ。

【第5話】10ヶ月間の育休まとめ①
これからの人生、どう生きていきたいのか
育休を取って一番良かったこととして、『夫婦でこれからの人生について深く話し合えたこと』だと語ってくれた上木さん。
たしかに仕事や家事育児に追われていると、夫婦でゆっくり話をする時間って、なかなか持てないもので。

夫婦なんだから、何も言わなくても僕のことを分かってくれてるはず。

こんなに一緒にいるのに、なんで分かってくれないの⁉
僕もこういう風に思うことばかりだったんですけど、思ってるだけでは相手には何も伝わらないっていう、当たり前のことを忘れてしまいがちで。
夫婦の関係性を深めるために育休を取りたいっていうことも、育休を取る大きな理由になるよなって、そう感じさせてくれるインタビューでした。
ということで今回は、10か月間の育休を終えた今の気持ちについて、振り返っていただきました。
第6話では、育休中に変わった上木さんの価値観について、じっくりお話を伺います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
また次回、お会いしましょう!!
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