最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島市長として働く下鶴隆央【Takao Shimozuru】さんです。
前編では、なぜ市長になったのか、市長として働くことのリアルについて、お話を伺いました。
下鶴市長の普段あまり見ることのできない本当の想いや必死に働いてる姿をとおして、少しでも公務員の存在を身近に感じてもらえると嬉しいです。
下鶴隆央さんのプロフィール
鹿児島県鹿児島市出身。1980年生まれ。
高校までを鹿児島で過ごし、東京大学を経て、ITコンサル会社へ入社。
その後、鹿児島県議会議員を経て、2020年より鹿児島市長へ。
2022年初めのあいさつで、「市民の皆様のために挑戦した結果の責任はすべて私が負います。」と述べ、若手職員の心を掴む。
なぜ鹿児島市長になったのか
何でも聴いてもらってオッケー
今日はお忙しい中、お時間取っていただいて本当にありがとうございます!
よろしくお願いします!
こちらこそ、よろしくお願いします!
よろしくお願いします!
実は今、僕たち二人で『カゴシマベース』っていうWEBメディアを運営していまして。
公務員という職種に着目したメディアなんですが、鹿児島県内各地の素敵な公務員にインタビューに行って、パーソナルな部分を深掘った記事を更新してるんです。
うんうん。
なるほど。
世間的には『公務員=つまらない人』みたいなイメージで括られてしまいがちですけど、一人ひとりに注目すると、魅力的な人がたくさんいるよなって思っていて。
おもしろい取り組みをしたり、日々もがきながら闘ってる素敵な公務員が、県内にはたくさんいるので、そういう人たちをとにかく称賛したいんです。笑
今回は、公務員っていう括りの中の『市長職』というカテゴリーで、下鶴市長のパーソナルな部分のお話を伺えたらなって思っています。
どうぞどうぞ。
僕も、大枠で見ると公務員の一人であることに間違いないので。笑
よかったです!笑
で、今回のインタビューなんですけど、かしこまった綺麗な答えというよりは、かなり本音に近い部分の話が聴きたいなと思っておりまして。
本音の部分をさらけ出してもらうことで、その人間味も含めて面白いなって思ってもらいたいんです。
そこがカゴシマベースの真骨頂だと思っているので。
はいはい!
何でも聴いてください!
何でもお答えしますので!
ありがとうございます!!笑
鹿児島市長になりたいと思ったきっかけ
早速ですが、市長になるという決断をされた想いの部分について、お伺いしたく。
2020年は鹿児島県議(3期目)として活動をされていたわけで、その県議という職を辞めて、市長選挙にチャレンジしたわけですよね?
すごい覚悟だなと思っちゃうんですけど、鹿児島市長になりたいと思ったきっかけがあったのですか?
まず、私は県議時代にずっと、地域公民館ごとに報告会をして回ってたんですよ。
県政の報告30分、質疑応答30分という形で。
ええ。
そういう場で質疑応答の時間に上がってくる質問って、8~9割が鹿児島市に関することだったんですね。
なるほど。
それだけ、市政と市民は密接した関係にあるんだなぁって、県議の時に感じていて。
だからこそ、毎年7月ぐらいに鹿児島市役所の本庁と谷山支所の色々な課にアポをとって、鹿児島市がどんな取り組みをしているのか、ヒアリングをさせてもらっていたんです。
県議なのに、鹿児島市役所の課へヒアリングを?
それはなぜでしょう?
『県議だから鹿児島市役所のことは知らない』って、カッコ悪すぎるじゃないですか?
言い訳にならないし、知っておきたいなって。
なるほど…!
議員と首長のスピード感
もう一つの理由としては、議員と首長のスピード感の違いですかね。
スピード感?
議員として議会で多数派をとって政策を実現していくっていうのも、もちろん真っ当なアプローチなんです。
ただ、どうしても時間がかかるんですよ。
そうですよね。
スピード感の部分は、市役所の内部にいるからこそ、すごく理解できます。
当選回数を重ねることで、少しずつ早くなったりもするんですけど、それにしてもなかなか時間がかかる。
そんな中で、コロナがきて。
うんうん。
世の中の仕組みを大きく変えないといけないタイミングで、ただ指をくわえてみているだけなのはカッコ悪すぎるよなって思ったんです。
じゃあ『私がやるぞ!』と。
その行動力と決断力は、素晴らしいですね…‼
選挙に出ると決めた
自分の中で市長選挙に出るっていう決意が固まった後は、家族に相談されたんですか?
まぁ、事後報告ですね。
事後報告…笑
笑笑
なぜかというと、相談っていうのは、相手の反応によって変わり得るから相談って呼ぶわけですよ。
なるほど。
たとえ反対されても選挙に出るって決めてるわけなので、相談すること自体が失礼じゃない?笑
なるほどなぁ。
ただ、今考えると、当時は下の子が生後半年だったので、妻がよくオッケーを出してくれたなぁって思いますね。
生後半年で選挙って、壮絶ですね…
そこに関しては、事後報告をした時、奥さまはどんな反応でした?
「分かった。」と言ってくれました。
「あなたの好きにやりなさい。」ぐらいの感じで。笑
最高の奥さまですね…‼
思い描く未来
TIME IS MONEY
市長に就任されて1年が経ったわけですが、就任前に抱いてた鹿児島市のイメージと、1年やってみての今の感覚に違いはありますか?
うーん。
思ってたよりも、財政面が大変な状況だなっていう印象です。
はぁーなるほど。
もちろん、ずっと県議として活動してたので、県の財政、市の財政、それなりに目は通していて、分かってるつもりでいたんですよ。
ただ、やっぱり実際に市長になってみると、思ってた以上に財政面は厳しいところがあるなっていう印象ですね。
なるほどなぁ。
あと、市の職員って、皆さんすごく真面目で優秀だと思うんですけど、私からすると『真面目すぎるよね』って思うんです。
少し分かります。笑
最近よく言ってるんですけど、『もっとラクをする方法を考えよう!』って思うんですよ。
ラクをする方法?
ラクをするって全然悪いことではないよねと思っていて。
長時間ガリガリ同じやり方でやることが美徳ではなくて、どうしたら同じ作業が短時間で出来ますかと。
そこをもっと皆さんに考えてほしいですね。
なるほど。
私が昔、ITの企業で働いていたからこそ、時間の部分について強く感じるのかもしれません。
ITの世界って、自分の時間を売る世界なんですよ。
時間を売る?
例えば、入社5年目の人を1人×1ヶ月派遣すると○○万円ですみたいな。
はー!なるほど!
逆にお客さんからすると、それだけの対価を払っているわけだから、当然払った金額以上の成果を期待しますよね?
たしかに!
なので、期待に応えないといけない。
無駄にする時間は1秒もないんです。
だから、タイムイズマネーの感覚が、自分の中に沁みついてるのかもしれませんね。
そこまでの時間に対しての感覚って、市役所でずっと働いてるとなかなか持ちづらいカルチャーかもしれません。
そうですよね。
これは職員に対しても市民の皆様に対しても同じで、一人ひとりの時間をもっと大切にしましょうって思うんですよ。
究極的には、『来なくても済む市役所』を目指したいなって思ってます。
最高ですね。。
だって、役所に行き来する時間って、何も生み出さないじゃない?
だったら、その時間を使って子どもと遊んだ方が良いし、好きなことに時間を費やした方が良い。
時間を大切にするっていう感覚をもっと研ぎ澄ましていきたいんです。
いや、もう、ほんとにその通りです…‼
これって職員に対しても言えることで。
今までやってた定型的な業務が効率化できれば、もっと市民のために頭を使うことが出来る。
市民に寄り添う時間へ充てることが出来る。
このカルチャーを鹿児島市役所内にもっと浸透させていきたいですね。
市長ってどんな一日を過ごしてる?
ごめんなさい、話は変わる&すごく初歩的な質問で恐縮なんですけど、市長ってどんな一日を過ごされているのかなってずっと気になっていて。。笑
あぁ!
なるほど!笑
市長の動きを見てると、土日もイベントに出席されてたりするじゃないですか?
『休みあるのかな?家族と過ごせてるのかな?』って、勝手に心配しておりまして。笑
土日のどっちかは、公務が入る感じですね。
なので、週に1日は完全に休息日が取れています。
コロナ禍なので、今までと比べたら公務も少ない方だと思うのですが。
そもそもなんですけど、市長の仕事ってどんな種類があるんですか?
大きく二つに大別できます。
①来客&行事対応
②意思決定
なるほど!
市長の仕事って大体10-15分刻みで別の仕事がやってくるんです。
なので、頭をぱぱっと切り替えられないといけない。
(改めて聴くと、めっちゃ大変そうだよな…)
だからもう、クセになっちゃったんですけど、ぱっと見で概要を掴んで、なおかつ意思決定する時は『これってリスクは何なのか』っていう部分を考えるようにしてます。
はー!リスクから逆算するんですね!
当然、リスクがきついものであれば、深く考えないといけないでしょ?
だた、例えばイベントの立ち位置の話なら、『失敗しても人が死ぬことはない』じゃない?笑
たしかに。笑
市長職は自分が望んでやってる仕事
市長の仕事って、すごくプレッシャーのかかる大変な仕事だろうなぁって思ってしまうんですが、率直に「今日仕事行きたくないなぁ…」って思う日はないんですか?
僕はしょっちゅうあります。笑
それは全くないですね。笑
ないんですね…‼
一回もないです。
この仕事は、私自身が望んでやってる仕事なので。
市長にもお昼休みはある!
ごめんなさい、さらにしょーもない質問なんですけど、、
市長って、お昼休みはあるんですか?
ありますよ。笑
1時間もらっていて。
ご飯を食べたり、インプットする時間に充てたり。
ちなみに、お昼ご飯は弁当を?
ですね。
外で食べたいなぁと思いながら、なかなか行けてないのが実情です。
コロナが明けたタイミングで色々なお店に行きたいっていう気持ちが強いですね。
まとめー前編ー
タイムイズマネーの感覚を市役所に浸透させたい
業務効率化=経費削減っていう側面で語られることが多いように思います。
ただ、市長が掲げる効率化の先には、市民や職員の時間を大切にしたい、貴重な人生の時間を有意義なことに使ってほしいという想いがあって、そこに感動しちゃいました。
僕らカゴシマベース編集部も子育て真っただ中で、『この通勤時間がなければ洗濯物も食洗機も掃除機もかけれたし、子どもを幼稚園に送り迎えできたのに…』って思う毎日なだけに、かなりグッときたなぁ。
是非、来なくても良い市役所を実現させたいですね。
市民も職員も、より豊かな時間の使い方をできるようにするために。
ということで前編は、なぜ市長になったのか、市長として働くことのリアルについて、お話を伺いました。
後編では、家族についてのお話や、どんな職員と一緒に働きたいかという踏み込んだ部分について、じっくりお話を伺いますので、お楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ではまた次回、お会いしましょう!
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