最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島市役所で働き、10ヶ月間の育児休業を取得していた上木寿人さんです。
第6話では、10ヶ月間の育休を振り返って今思うことについて、お話いただきました。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
育休は半年以上取ってほしいなぁ
男性育休の話になると、『どれぐらいの期間、育休を取るのか』っていう問題がよく出てくるじゃないですか?
出てくるね。
上木さんの場合は10ヶ月間っていう、かなり長い期間育休を取られたわけですけど、男性が取る育休の期間についてどう思います?
そうだなぁ…。
前回の記事の中で、『育休に入って最初の頃がすごく大変だった』っていう話をしたじゃない?
してましたね。
仕事中心の生活から家事&育児中心の生活にガラッと変わって、慣れるまでがすごく大変だったのよ。
それこそ、仕事よりもずっと大変で。
大変だと感じる毎日から抜け出すのに、2ヶ月ぐらいかかったかなぁ。
なるほど。
家事育児に追われる生活から、少しずつ手を抜くことを覚えて。
そうすると、他のことも色々と考えられる余裕が出てきたのよ。
だから、自分の体験談で答えると半年以上は取った方が良いんじゃないかなって思う。
めっちゃ説得力あります。
ただ、やっぱりお母さんと子どもがいての自分だから、期間についてはちゃんと話し合った方がいいかもね。
でも、お母さんと子どもからしたらさ、ちゃんと家事&育児をしてくれるお父さんなのであれば、ちょっとでも長く家に居てくれた方が助かるんじゃないかな。
そうですよね。
逆に、家事も育児もせず、『形だけ育休取りました!』みたいなパターンだったら、長く家に居られても迷惑ですしね。笑
家事&育児と仕事の大きな違い
たしかに。笑
我が家の場合は、4月から僕は仕事に復帰するんだけど、妻は育休をもう1年間継続するのよ。
だから『僕が家に居ない日常がやってくることに不安がある』って妻が言ってくれてて。
いやぁ…そんな風に奥さまから言ってもらえたら、完全に『勝ち』ですよね。。
それだけ戦力として認めてもらえてたっていう話じゃないですか。
そう思ってもらえてるんだとしたら、ありがたいよね。
でもさ、前に森満くんが言ってたけど、『仕事は一生懸命やったからって確実に成果出るとは限らないけど、家族のことって頑張れば頑張るだけ奥さんや子どもから返ってくる』って、ほんとにその通りだなって思ったよ。
やればやるほど自分の幸福度が上がるんだもん。
そりゃ楽しいよね。
ほんとにその通りですよね!
他に『育休取ってよかったなぁ』って感じたことありました?
あとは、将来、子どもに対して育休中の思い出をしゃべれるなぁと思ってさ。
小さい頃、めっちゃ面倒みたから、僕が寝たきりになったら優しくしてねって。笑
なるほど。笑
でも、子どもに葬式で泣いてもらえるお父さんでは居たいですよね。
「あのクソじじい、早くいなくなればいいのに!」って、言われたくないもんね。笑
そういう意味では、大変な時期を一緒に乗り越えたっていうことも、夫婦にとっては大きな財産になったかなぁ。
そこ、一番大きいかも。
将来、この1年間の思い出話が、夫婦でずっと共有できるわけですもんね。
というか、葬式で家族が悲しんでくれたら、勝ちですよね、人生。
自分の時間を大切につかうとは?
僕たちって死ぬまでの時間を生きてるわけだからさ、やっぱり今、この時間を一番大切にしないとなって思うよ。
上木さんにとって『時間を大切に使う』って、どういうことですか?
少なくとも、仕事に費やすことではないね。笑
やっぱり家族と過ごすことと、自分のやりたいことをすることじゃないかな。
そこにどれだけ時間を費やせるかで、自分にとっての幸せが決まるでしょ?
間違いないですね。。
もちろん、生きていくために、ちょっとはしんどいこともしないといけないとは思うのよ。
うんうん。
ただ、いくら『しんどいこと』とは言っても、楽しむ方法があるはずだと思ってて。
楽しいかどうかって、所詮、自分が決めることだからね。
なんか、達観してますよね、上木さん。
この1年間、自分と向き合う時間がたくさんあったからね。笑
色んなことを考え、色んな本を読んで、色んなことを夫婦で話したもん。
自分と向き合いすぎて、お酒も飲まなくなったんですよね?笑
そうそう。笑
お酒も飲まないと、夜の自由時間が増えるじゃない?
尚更、本を読むよね。笑
めっちゃ健康になってるじゃないですか。笑
いろんな意味で有意義な1年間だったってことですよね。
ほんとに。
取れる人はみんな、絶対に育休取った方が良い。
「お金が…」とかで育休を断念するのは、もうさ、なんていうの…人生全体で考えたら、そんなのちっぽけなことじゃん。
そうですね。
というか、支出を抑える育休中の生活が習慣化したら、仕事に復帰してから逆にお金溜まりますからね。
でもこれ、実際に育休取ってみないと、なかなか分からないよなぁとも思うんですよ。
そうよね。
僕自身も育休取る前は全然こんな風に思えてなかったから、躊躇する気持ちもめちゃくちゃ分かるのよ。
それでも、やっぱり取ってほしいなぁ。
ポジティブな人にはポジティブなことが起こる
ちょっと話は変わるんだけどね、この前「どうすれば組織でみんながポジティブに生きていけるか」みたいな話を、妻としてたのよ。
うんうん。
そしたら妻から『もうさ、そんなこと考えなくていんじゃない?自分が幸せだって思えてポジティブに生きていけたら、それで十分じゃん』って言われて。
『ほんとそうだなぁ』って思ったの。
他人のことは、自分の力だけでは変えられないですもんね。
一人ひとりがポジティブで幸せに生きていけたら、そういう個人が集まった組織は、絶対ポジティブなはずだもん。
そうなのよ。
僕が周りの人に出来ることと言えば、ポジティブな声かけぐらいなの。
なるほど。
だから、人から話しかけられたら『それいいね!』って言うようにしてて。
絶対にポジティブな言葉で返そうと思ってる。
だって、ポジティブな人にはポジティブなことが起こるからさ。
子どもが産まれて変わったこと
また少し話が変わりますが、子どもが産まれてから『自分変わったなぁ!』と思うことありますか?
あるある!
どういう部分が変わりました?
例えば、子どもと僕が2人でおぼれかけてたとしてさ。
『1人しかこのボートに乗れません』っていう状況になったら、間違いなく子どもを乗せるよなって。
なるほど!
もともと、自分より他人を優先するような人間じゃないのよ、僕。笑
でも子どもが産まれてからさ、なんのきれいごとでもなく、迷わずにそうするもんね。
いつからそうなったんだろうって聞かれても、分からないんだけどさ。
分かります。
僕も自分大好き人間なので、他人を優先することなんてほとんど無いんですけど、同じ状況になったら絶対に子どもを助けますもんね。
多分さ、動物的な本能なんだと思うのよ。
DNAの中に組み込まれてるんじゃないかなぁ。笑
おもしろいですよね。
普通に生きてたら体験できなかった感情が、子どものおかげで経験出来てるわけなので。
ほんとに。
不思議な感覚よね。
子どもが産まれるまで自分より他人を優先するっていう感覚、一切なかったからさ。笑
笑笑
親になることで自分の両親にも優しくなれた
恋愛とか他人への親切って、無意識に見返りを求めてるけど、子どもへの愛って、完全に見返りを求めないじゃん?
そこがすごいなと思ってて。
うんうん。
無条件にこんなにも愛せるものがあるのかって。
それが驚きだね。
その感覚が自分の中に芽生えてから、自分の親に対して優しく接することが出来るようになりましたもんね。
こんな感じで、自分も親に育ててもらってたんだろうなぁって。
本当にそうよ。
親が僕を育ててくれた時も、僕が今子どもに抱いてるような感じで愛情を注いでくれてたんだろうなって思うよね。
育児の95%は辛い
今まで、子育てについて割ときれいな話ばかりしてきましたけど、正直、リアルな部分は辛いことの方が多くないですか?
辛い。
育児の95%は辛いよね。
そうですよね!笑
子どもと毎日のようにケンカもするし、イライラするもんなぁ。
そこの部分ってさ、みんなオモテでは言わないじゃない?
でも、正直、子育てなんて辛いことばっかりだよね。笑
ほんとそう。
でも、この感覚って、毎日長い時間一緒に居るからこそ、分かることだと思うのよ。
たしかに!
働いてる時って、子どもが寝てるうちに仕事に行き、寝る前の穏やかな時間に帰ってくるから、子ども達の良い部分、可愛い部分しか見えてなくて。
僕が半年間育休を取った時は、子どもとずっと一緒にいて、「こいつら、日中こんなにうるさいのか…」って初めて体感して、頭おかしくなりそうでしたもん。笑
育休取って一番良かったこと
わかる。
たまに、子どもに対して『妻を返してほしい』って思う時あるもんね。笑
ゆっくり夫婦でお酒を飲みたい時とかあるじゃない?
わかる!
返してくれないんだけどね、子どもは。笑
ただ、1年近く育休を取ってると、普段ずっと一緒にいるから、夫婦でしゃべりたいことはしゃべれてるのよ。
そこの部分が、育休取って一番良かったところだなぁ。
なるほどなぁ。
今が幸せだって思う生き方
最近読んだ本でさ、『将来幸せになるために、我慢して辛いことや苦しいことをする生き方よりも、今幸せだって思う生き方をした方が将来の幸せに繋がる』って書いてあって。
これ、本当にその通りだなぁって思ったの。
うんうん。
我慢とかしすぎちゃダメなのよ。
先のために我慢ばかりしてても、今幸せじゃないのに将来幸せになれるわけがないんだもん。
刺さる言葉、いただきました。。
我慢を続ける毎日には、ポジティブな要素がないじゃない?
だからこそ今を大事に、楽しく笑顔で生きていきたいよね。
最近は、ネガティブが映画とか音楽とか、絶対見たり聴いたりしないようにしてる。笑
笑笑
色々聞いてきましたけど、結果的に育休取って良かったっていう話でしたね。
そう!
良いことしかない!
ありがとうございました!
これからも、家族の幸せだけを考えて生きていきましょう!
そうだね!笑
ありがとうございました!!
まとめー10ヶ月間の育休振り返り②ー
『僕が家に居ない日常がやってくることに不安がある』って妻が言ってくれた
これ、育休を取った男性にとって、最大の誉め言葉なんじゃないかなと思いました。
『男性の育休取得率を上げよう!』って、数字や言葉だけが一人歩きしてる感がありますけど、『そもそも何のために育休を取るのか』、そこの部分にもう一度立ち返る必要がありそう。
自分の人生や今までの夫婦関係を振り返る機会として、育児休業を利用するっていう使い方もアリなんじゃないかなぁと、そんなことを感じました。
家族や身近な人のことを幸せに出来ない人が、他人や地域を幸せに出来るはずがないですからね。
ということで第6話では、10ヶ月間の育休を振り返って今思うことについて、お話いただきました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ではまた次回、お会いしましょう!
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