移住という人生の大きな決断をして、鹿児島の最前線で活躍する地域おこし協力隊が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『地域おこし協力隊図鑑』
今回のゲストは、鹿児島市喜入のグリーンファームで地域おこし協力隊員として働く橋口亮さんです。
#2では、地域おこし協力隊としての『これまで』と『これから』について、お話を伺いました。
<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase取材者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
地域おこし協力隊としての顔
なぜ協力隊に?

橋口さんって、そもそもなぜ地域おこし協力隊になろうと思ったんですか?

そういう質問ってたくさんされすぎて、もはや何が正解だったのか分からないんですよね。笑

笑笑

今思いつく理由を教えてください。笑


うんうん。


東京で働いてた頃、そいつが全然売れてないんで、良く奢ってたんですよ。
彼からは「(企業で働いて家族もいて)お前がうらやましいよ」って言われてたんですけど、僕からするとそいつのことがうらやましくて。

うらやましい?

『俺は死ぬ時に、人生楽しかったなって思えるように生きるんだ。』
みたいなことを、一緒に飲んでる時に良く言ってたんですよ。
人の金でお酒飲んでるくせに。
借金もあるくせに。

なるほど。

「こいつ、お金持ってないくせに何言ってんだ?」って思ってたんだけど、それがちょっと響いちゃって。
「あれ?今の仕事も楽しいけど、自分って本当は自然に囲まれた中で家族と生活したいんじゃないのか?」って。

生きる上で大事にしたい軸に気づいちゃったわけですね。

自分の年齢を考えた時に、『40歳から60歳までの20年間で山&海の生活をキワめたら、その後はもう何でもできるじゃん!』っていう発想ですよね。

(…山と海の生活をキワめるってどういうことだ?)

これね、橋口さんがすごいなと思うのは、僕にもお笑い芸人的な友達がいて。
まさに「俺は絶対後悔しない!」みたいなことを言ってて、僕もそれを聞いて『めっちゃいいな…‼』って思った時期があったの。

うんうん。
妻のおかげで決心できた

ただ、なぜ橋口さんみたいに一歩踏み出せなかったのかっていうと、理由があって。
よく考えたの。
よーく考えてみたら、後悔はしないかもしれないけど、最終的に畳の上で死ねない可能性があるなって。

たしかに。笑


笑笑

それで、ちょっと立ち止まったわけ。

自分は、「畳の上で死ねないかもっていう所も含めて、楽しそう!」って思ったんですよね。
あと、妻が看護師だから、どこに住んでも仕事はあるし、なんとかなるなって。笑

奥様は職業柄、土地が変わっても働きやすい仕事をしてたってことですね。

妻のおかげというか、そこがあったから『何があっても死にはしないだろうな』っていう。

奥様に大感謝ですね。。
先が見えないところに進んでいきたい

まぁ、あとはぶっちゃけた話、自信もあったんですよ。
転職しても、『本気でやればなんとかなるでしょ』っていう。

根拠のない自信は、橋口さんの大きな長所ですよね。笑
他にも転職に踏み切れた理由がありますか?

そうですねぇ。。
他の理由で言うと、以前の職場で働きながら、なんとなく将来像が見えちゃったことかなぁ。

見えちゃったと言うと?

会社でこのまま働いたとして、何年後かに役職が上がって、郊外に家を建てて。
それが幸せだって周りのみんなは言ってたけど、僕としては「先が見え過ぎてて、なんかなぁ。。」って。

なるほどねぇ。

妻は「そうしたい」って言ってくれてたんですけど、僕としては『先の見えないところに向かって進んでいきたい!』っていう想いが強かったんですよね。

副業はカヌー

少し話は変わりますけど、橋口さんって鹿児島市とのの取り決め的に副業してもオッケーなんですか?

オッケーですよ!

橋口さん、カヌーもやってますよね?

やってますやってます。
カヌーの授業が小学校であるので、そのサポートというか。

小学校の授業でカヌーがあるんですか⁉
すげぇ!
知らなかったです‼

喜入一倉小学校では全校生徒が8人なので、学校のプールを使ってみんなで一緒にカヌーの授業をするんですよ。
いくらかお手伝い料をいただきながら、サポートをさせてもらってますね。

女子短大での講義

めっちゃ良いですね…‼
そういう副業が、他にもたくさんある感じですか?

いやー、昨年は鹿児島市役所のPLAY CITY! DAYSやシティプロモーション関係で少しお話をいただいたぐらいかな。
…あ!
あとは、大学の講義をさせていただきましたね。
鹿児島女子短期大学で3コマぐらい。


3コマ⁉
すごい!
そもそも、なぜ橋口さんに鹿児島女子短期大学から依頼が?

大学で『鹿児島学』っていう授業があって、そこで喜入がテーマになることが多いみたいで。
喜入をテーマに「喜入の都市計画とは」みたいな話しても、学生からすると堅苦しいし、よく分かんないじゃないですか?

僕が学生なら確実に寝ます。笑

なので、『エンターテイメント性を持って喜入の話をしてほしい』という依頼が、鹿児島市の市民協働課を通じて、グリーンファームにきたという流れですね。

橋口さんは『喜入のエンタメ枠』なんだね。笑

笑笑
やってみてどうでしたか?
学生は橋口さんの話に食いついてくれました?

みんな積極的に参加してくれて、楽しかったですよ!


今の学生たちって、何に興味を持ってるんですか?

うーん…やっぱりSNSかなぁ。
『グリーンファームはもっとインスタとかやらないと!』って、かなり言われましたね。。

笑笑

グリーンファームってインスタグラムやってましたっけ?

まだやってないので、これから運用の仕方も含めて勉強する感じですね!

SNSじゃないんだけど、グリーンファームが出してる季刊誌の中に、橋口さんの担当してる『行けば分かるさ!』っていうコーナーがあって。
これが意外と面白いのよね。
あーいう感じで、SNSやるなら橋口色を全面に出してほしい。笑

本当ですか⁉
あれ、そろそろネタが無いんですよ。
キャンプのことばっかり書いてるなと思いながら。笑

複雑なパパとしての想い

そういう紙媒体の情報誌って、鹿児島では色々な人の目に触れる機会が多いと思うんですけど、息子さんたちも見てたりします?

幼稚園生の頃は、「僕のお父さんだぁ!!」って言ってくれてたんですけど、小学生になってから全然言ってくれないんですよね。。
息子の中で『恥ずかしい』っていう存在になりつつあるんですかね。。

いや!笑
そんなことないですよ!(きっと)

でも、僕はこのグイグイ攻めるスタイルがかっこいいと思ってるので、このままのスタイルで生きていきますよ!
「お父さんはかっこいいんだよ!恥ずかしくないんだよ!」って、息子たちに教育していこうかなと思ってます。

笑笑
地域おこし協力隊の二年目を振り返る

園長になったことが大きなトピックすぎて忘れてましたけど、協力隊としては3年目ですよね?

3年目ですよ。
2021年の12月で任期を終える予定です。

昨年(協力隊2年目)はどんな一年でしたか?

コロナでかなり活動が制限されて、結構苦しかったですね。
研修もほとんど行けなかったですし。

そうですよね。。
草刈りツーリズム

協力隊としての活動は、もっぱら『草刈り』ばっかりでした。

草刈り!
かなり精力的に活動されてますよね。
草刈りツーリズムでしたっけ?
草刈りツーリズムとは
草刈りツーリズムとは、草刈り作業と着地型観光をかけ合わせた活動で、草刈りという地域共通の課題解決をきっかけにした交流会等を行う取り組み。
そこで生まれた新しいつながりによって、自分では解決できない地域課題を協力・連携して解決することを目指します。
参照:草刈りツーリズムchより

そうですそうです!
チームを組んで、みんなで動画を作ってYoutubeにアップしてますね。


動画のクオリティもかなり高いし、ガチで取り組んでるなぁという印象なんですけど、この動画の編集って橋口さんがしてるわけじゃないんですよね?

してないしてない。笑
自分は監督の思うがままに動かされてるだけの人間です。

演者ってことね。笑


この草刈りの活動から得られたものがありますか?

ありがたいことに、この活動からつながった人も結構いるんですよ。
だから、僕にとっては草刈りをすることで地域の課題解決にもなるし、色んな人と出会うことができる。
大切な活動です。

なるほどなぁ。


話がきれいすぎるんで、本当の理由を教えてもらってもいいですか?

…草刈り後のビールが最高で。
正直、この『ビールのためにやってる!』みたいなところもありますよね。

正直すぎる。笑
協力隊の受け入れ側に対して思うこと

協力隊3年目ということで、市側とも色々とやり取りをしてきたと思います。
協力隊員の立場から、協力隊を受け入れる自治体(鹿児島市役所)側に、思うことというか、伝えたいことがあります?

『ここっておかしくないか?』みたいなやつ。

うーん、そうですねぇ。。
最初、僕ら家族の住む家として用意してくれていた家が、きれいなマンションだったっていう部分かなぁ。

というと?
一見、きれいなマンションの方が住みやすそうですけど。

地域の方々との距離感がね、少し遠くなってしまうんですよ。
例えば、猟友会長が家を訪ねて来てくれた時、きれいなマンションの玄関先で「ちょっと家に上がっていってください!」って話をしても、「いやいや!服が汚れてるから!」って断られたり。

なるほど…‼

小さなことかもしれないけど、そういう部分で地域にグッと入り込むのが遅れたかなっていう印象がありますね。
妻としても、田舎の生活っていうよりは、隔離された場所で生活してるみたいな。

なるほど。
横浜で生活してた頃と、家だけで見ると生活環境があまり変わらないわけですね。

そうそう。
今は築100年超えの空き家を借りて引っ越したので、近所のおじちゃんと玄関先で1時間ぐらい話をしたり、家の前を通りかかったおばあちゃんが庭で遊ぶ息子に「かわいいねぇ!何年生よ?」って話しかけてくれたり。


『THE田舎の生活』だね。

ですねぇ。
この生活が、協力隊1年目から出来ていたらなぁと思います。
でも、逆に言うと受入側(グリーンツーリズム推進課)に改善してほしいところって、これぐらいしか思いつかないんです。
みんな良くしてくれて、コミュニケーションも頻繁に取れてるし。

グリーンツーリズム推進課は、みんな社交的で、和気あいあいとした空気感で仕事してたからね。

予算厳しいかもって言いながら、研修に行く費用を捻出してくれたり。
その辺はありがたかったなぁ。
まとめー中編ー
俺は死ぬときに人生楽しかったなって思えるように生きるんだ。
友人のこの言葉☝にハッとして、今まさに自分の人生を大切に歩んでる橋口さん。
この決断をした橋口さんがすごいのはもちろんなんだけど、この橋口さんの決断に伴走し続けてくれてる奥様が一番すごいなぁと感じていて。
もはや、橋口さんがすごいんじゃなくて橋口さんの奥様がすごいんだと感じるのは、僕だけじゃないはず!
ということで、中編では地域おこし協力隊としての『これまで』と『これから』について、お話を伺いました。
後編では、移住による生活環境の変化や、グリーンファームで挙げた結婚式について、お話を伺います。

ではまた次回、お会いしましょう!
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