最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、枕崎市役所で働く永迫昌之さんです。
中編では、組織の外で活動をスタートさせる決断をしたきっかけについて、お話を伺いました。
永迫さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase取材者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
沈んでた自分を前に進めてくれたきっかけ

(前編のお話の中で)まちづくりについて誰とも話したくない時期があったとのことでしたが、その状況から何がきっかけでもう一度前に進むことになるんですか?

一番のきっかけは人との出会いですかね。

人との出会い?

枕崎の地域課題を解決するために市役所の幹部だけが話し合って決めるのではなく、若者やいろんな人の意見を取り入れやすいようにワークショップ形式で進める機会があったんですよ。

なるほど。

そのワークショップに参加する中でいろんな人と出会って。
様々な考えを持った人と話をする中ですごく刺激をもらえましたし、その中のご縁で霧島市役所の方に『霧島のリノベーションスクールに参加してみなよ!』という言葉をかけてもらったんです。

リノベーションスクール!
霧島は特に今盛り上がってますもんね!

その場ですぐ申し込んで参加したんですよ。笑
たった2泊3日でしたけど、すごかったです。ほんとに。

ずっと頭の中がフル回転してる状態

特に何が良かったですか?

なんでしょう..ずっと脳みそに火花が散ってる感じでした。
リノベーションスクールって、地域の空き家が対象物件として各グループに与えられて、その空き家をどう使えばエリアの魅力向上や地域課題を解決する提案になるか考え尽くして、空き家のオーナーにプレゼンして事業化するっていうやつなんですよ。

僕も鹿児島市で開催した際、裏方として入らせてもらっていたので、良く分かります。
ユニットメンバーで寝る間も惜しんで「あーでもないこーでもない」と考え、中間報告でボロクソに言われてボロボロになりながらも、チームで一丸となって最後提案するんですよね。笑

そうです。笑
提案を考えるにあたって、分析や事業設計のスピード感だったり、思考の整理や考え方、みんなの想いなど、ものすごい濃い時間を過ごせたんです。

うんうん。

終わった後もずっと脳がフル回転してる感覚でした。
何より一番驚いたのが、霧島の人達の『まちづくり』に対する空気感ですね。

まちづくりに対する空気感?

行政の枠を超えて自分たちでやる

霧島の一部の人だけが盛り上がってるというよりは、そこに集う人達が行政も民間も関係なく『まちをなんとかしていこう!』って、一つの目標に向かって進んでる感覚を受けたんです。
これはすごいぞと。

枕崎と比べてそこが違うなって感じたわけですね。

そうですね。
ただ、そう思う一方、行政のいち事業としてこの盛り上がりを創り上げることって、かなり難しいよなとも思って。

行政主導でやろうとすると、難しい側面が大きいですよね。

そうなんですよ。
霧島市は数年前からしっかり予算も確保してセミナーや講演会からスタートし、段階的に事業を進めていますけど、それってすごいことだなぁと。

普通はソフト面で成果が不確実な事業って、なかなか予算が付きにくいですもんね。

ですね。
予算が付くか付かないかで仕掛け方が変わりますからね。
行政として予算が付かないことに悩むよりも、いっそのこと行政の枠を飛び越えて、もう自分たちでやっちゃおうかなって思ったんです。

自分で団体をつくって?

団体をつくって。笑
ありがたいことに、僕には「一緒にやりたい!」って言ってくれる仲間たちがいたので、みんなで任意団体としてスタートさせたんです。
小さなイベントの開催に携わるところからスタートして、法人設立してすぐに『まくコン』という街コンイベントにチャレンジしました。


任意団体としてスタートしたのはいつぐらいですか?

リノベーションスクール@霧島に参加したのが2022年10月。
任意団体の結成が2022年の12月。
一般社団法人枕ラボ!の立ち上げが2023年6月。

すさまじいスピード感ですね..!

どうかしてましたね。笑
組織の中でやれること&やれないこと

「役所の中でもっと自分たちが動きやすいようにするにはどうアプローチすればいいだろう?」みたいな話を、よく森満くんと二人でするんですよ。
でも永迫さんは役所の枠組みの中でどう動くかじゃなくて、そこから飛び出したところで動き始めてるわけですよね?

そうそう!
それって、すごくパワーが必要なことなので、シンプルにすごいと思います!
ほんとにすごい!

ありがとうございます。笑
でも、公務員としてどう動けばベストなのかっていうのは、すごく考えたポイントですね。
法人化した最大の理由は、自分たちの行政という立場を活かしながら、枕崎市に住む人間として、まちのために大々的に動いていきたいっていう部分だったんです。

任意団体よりも法人化の方がメリットがあったわけですね?

オフィシャルに動きたい&費用がかかる事業もどんどんやっていきたいって考えた時に、法人として動いた方がやりやすいなってことに気づいたんですよ。

上司の理解に感謝

なるほどなぁ。
行政あるあるかもしれないんですけど、そういう仕事以外の活動を表立ってやろうとした時に、組織内部の人から色々言われたりしなかったです?
「余計なことせずに、もっと仕事に集中しろよ」的な。

もしかしたら色々言われるかなぁって思ってたんですが、全く逆の反応をいただいてまして。

好意的なんですか!?

時期が少し遡るんですけど、一般社団法人を立ち上げる少し前に、南九州市の方々と個人的な繋がりがあって学びたいこともたくさんあったので、頴娃おこそ会に入りたいなって思った時期があったんです。
頴娃おこそ会とは
NPO法人 頴娃おこそ会は、頴娃地域のNPOです。
決して強制はしない、良い意味で緩いネットワークが生んだ、強い結束力があります。
「跡継ぎのいるまち」を目指し、任意団体、頴娃おこそ会を設立。2年後の2007年にNPO法人に改組。地域の事業主があつまり、有志で活動を進めています。芋の栽培から携わっている焼酎プロジェクトや、たつのおとしごの鐘の建立から、番所鼻公園の整備が動き出したり、石垣商店街のまち歩きやマップづくりから、石垣の空き家再生活動につながったりと、小さな芽を大きくしてきています。
参照:EIGO (https://ei-go.jp/ei-okoso-about/)

うんうん。

当時の課長に「頴娃おこそ会に個人的に入ろうと思ってるんですけど」っていう話をしたら「永迫くんがそこで得た知見を枕崎のために還元してくれるなら御の字だよ」って言ってもらえて。

好意的な印象だったんですね!

そうなんです!
しかも「市役所職員として頴娃おこそ会で研修するような制度がつくれないかなぁ」って、課長からおっしゃっていただいたんです。

課長すごい!

ホントに!
僕は元々この方から、行政の地方創生への向き合い方を学びました。
新しいことや困難なことにバンバン切り込んでいく、ホントに尊敬している方なんです!

永迫さんにとって大切な出会いだったんですね!

大切な出会いでした。
結局、研修で派遣される制度はまだ実現していないんですけど、現在、個人として『頴娃おこそ会』に入れてもらってます。

すごいなぁ。。
そもそもなぜ頴娃おこそ会に入ろうと思ったんですか?

地域間の壁を取っ払いたい

地域間の壁を無くしていきたいなぁっていう想いがずっとあったんですよ。

地域間の壁?

南九州市だとか枕崎市だとか、そういうものをどんどん取っ払って『みんなで一緒にやっていこうよ!』っていう想いが自分の中で強くあるんです。

なるほど。

今後は自治体間も横断して、いろんなことに挑戦していきたいなぁと思ってます。
まずは枕崎市役所が行政として取り組みにくいソフトの部分に対して、枕ラボ!としてどんどんアプローチしていきたい。

人の3倍頑張る

それだけ仕事以外の活動に本腰入れて取り組まれてると、通常の仕事との両立が難しくないですか?

僕が目指す所としては、行政職員としてもまちづくりの活動でも、どちらも『永迫が言うんだったら間違いない』って言ってもらえるぐらいになりたいなって思っているんです。

うんうん。

だからめちゃくちゃプレッシャー感じてます。笑
人の2倍、3倍頑張らないとなって思ってます。

なんか、すごいパワーですよね。
話聞いてるだけで、びしびし伝わってきますもん。

ほんとに。
その熱量がもはや羨ましいというか、眩しいですよ。
まとめー第2話ー
自分たちでやっちゃった方がいい
今回のハイライトは絶対にここ↑ですね。
周りと違う動きをするって、かなり勇気のいることだと思うんです。
組織にいる期間が長くなればなるほど、組織の理屈も分かるが故に身動きが取りづらくなる。
そんな中でも、市役所としてできること&できないことの整理を俯瞰的に判断し、組織に不満を言うわけじゃなく、できないことは自分たちでやっちゃおう!って行動している永迫さんは、素直に尊敬できる。
行動するスピード感や熱量の凄みを感じた、今回のインタビューでした。
ということで今回は、組織の外で活動をスタートさせる決断をしたきっかけについて、お話を伺いました。
次回は枕ラボ!で今後チャレンジしたいことや、家族のお話を中心に伺います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!
また次回お会いしましょう!!
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