【後編】さつま町が見据える未来のカタチ【下麦大志|さつま町役場】

さつま町

最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』

今回のゲストは、さつま町で事務職として働く下麦大志さんです。

この記事は7分で読めます^^

後編では、さつま町がこれからどんな未来に向かって進もうとしているのかについて、お話を伺いました。

下麦さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。

<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase取材者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>

さつま町役場の未来

新規採用職員について

森満
森満

さつま町役場って、新規採用職員は入ってきますか?

下麦さん
下麦さん

少ないけど、入ってきてますよ。

5~6人ぐらいかな。

 森満
森満

コロナ禍の影響受けて、採用人数が少なくなったりしてます?

 下麦さん
下麦さん

いやっ、そうでもないですよ。

コロナ禍の影響って言うよりは、定数管理をしてる印象ですね。

退職者の人数に合わせて、採用の人数が増減する感じ。

 森満
森満

なるほど。

最近、周りの公務員の友人を見てて感じるんですけど、優秀な若い職員の子たちって、辞めていきません?

 下麦さん
下麦さん

たしかに!

昨年、入庁して数年の子たちが「民間企業に行きます!」って辞めていきましたね。

 森満
森満

ですよね!

それって、すごく面白いなぁと思ってて。

スパッと辞めていく感じが、今っぽいなぁというか。

 下麦さん
下麦さん

たしかに。

 森満
森満

まぁ、『役所よりも自分に合った良い環境があれば、そりゃそっちに行くやろうな』って、個人的には思っちゃうんですよね。

能力高い子ほど役所にしがみつく必要が無いから、スパッと辞めれるんですよ。

だからこそ、役所も働き方とか業務内容とか、もっと魅力的に楽しく働けて良いんじゃないかなって。

首長と職員の距離感

 森満
森満

それから今日、どうしても聞きたかったことのひとつに、『首長と職員の距離感』っていうのがあってですね。

 下麦さん
下麦さん

首長との距離感?

 森満
森満

そうそう。

鹿児島市って規模が中途半端に大きいので、どうしても市長と我々平社員の距離感が遠いんですよ。

 下麦さん
下麦さん

なるほど。

うちの場合は、小さな町の役場なので、、

町長のスケジュールで空いてる時間があれば、直接お話させていただくこともありますね。

上木
上木

直接話せるんですか⁉

 下麦さん
下麦さん

例えば、何か用事があって、町長が庁内を歩いてらっしゃれば、お声かけして少しお話させていただいたり。

さつま町役場。この庁内を町長が普通に歩いてる光景が、もはやうらやましいです。
上木
上木

すごい!

鹿児島市の場合は、基本的に直接つかまえるのはNGなんです。。

 下麦さん
下麦さん

まぁ、私のやり方も、本当はダメなんだと思います。笑

上木
上木

いやっ!

私の地元(徳之島)でも、直接町長に会いに行ったり、話をするのってOKな空気感ですよ。笑

やっぱり鹿児島市の場合は市長との距離感が遠すぎて、想いを市長まで届けたいと思っても、たどり着くまでに20人ぐらい居ますもん。

なるほど。

上木
上木

市長にたどり着くまでの間で淘汰されたり、アイデアの形が変わったり。

僕ら下っ端の職員と市長、お互いにコミュニケーションが取りにくいシステムになってるんですよね。

規模として、そうなるのはしょーがないのも分かるんですけど。。

森満
森満

例えば、『カゴシマベースで市長に定期的にインタビューする企画を提案したい』として、正規ルートで下から上げていったら市長まで届かないのは目に見えてるので、『そもそも市長にどう届けるか』っていう部分が課題だなぁと感じてます。

 下麦さん
下麦さん

間を飛ばすのか、市長までの間にいる20人の中にフックになるような人を見つけるのか。

鹿児島市役所とか鹿児島県庁とかって、ぼくらの役場とは世界が違うから、難しそうですよね。。

首長の考えを聴く機会

森満
森満

なんか、もったいないなって思うんですよ。

『やっぱり市役所ってがんじがらめで、やりたいこと全然できないじゃん』って、辞めていく若い子たちを僕は見てるので。

本当は出来るかもしれないし、市長もやりたいと思ってるのかもしれないのに。

 下麦さん
下麦さん

(うんうん)

 森満
森満

日置市長が永山さんになってから、毎週金曜日に『1週間を振り返るブログ』が更新されるじゃないですか?

公式LINEを登録してるから、プッシュ通知でLINEが毎週届くんですけど、あれ、すごく良いなと思ってて。

 下麦さん
下麦さん

僕も見てます。笑

確かにあぁいう形で、市長がやったこととか、これから何をしていくか、どんな想いで市長として過ごしているかを、ブログで毎週更新するって、ありそうでなかったですよね。

出典:永山由高市長のnoteより
森満
森満

そうなんですよ!

 下麦さん
下麦さん

もちろん、メインは日置市民に対して書いてることなんでしょうけど、こうやってさつま町役場や鹿児島市役所の職員も見てるわけですもんね。

毎週金曜日になると、「今日も通知がくるよな」って思ってしまってる自分がいて。笑

 森満
森満

たしかに。笑

下麦さん
下麦さん

そして、そのブログを読みながら、日置市長や日置市役所の動きと、自分たちの行動や業務比較するわけじゃないですか。

「あぁ、日置市役所は昼休みにランチミーティングやってんのか、、うちでもできないかなぁ。」みたいな。

上木
上木

首長の考えを聴く機会って、その下で働いてる職員であっても意外と無いんですよね。

下麦さん
下麦さん

僕ら職員がその状態なら、市民町民はもっと無いはずだし。

そういう機会って、大切にしていかないといけないなって思いますね。

薩摩のさつま

 森満
森満

ごめんなさい、話は少し変わるんですけど、さつま町のおすすめスポットってどこですか?

今日、予定よりも早く着いちゃって、どっか行こうと思ったんですけど、どこ行くか迷っちゃって。笑

さつま町は今、何を推してます?

 下麦さん
下麦さん

その『推す』ものって、当然人によって違うと思うんですよ。

ひとつに絞れた方が分かりやすいのかもしれないですけど、もちろん違って良くて。

 森満
森満

うんうん。

 下麦さん
下麦さん

大事なのは、自分が推すものを、きちんと胸張っておススメできるようになることじゃないかなって。

そんな中で、さつま町としては地域ブランドを一つにまとめて、『薩摩のさつまブランド』っていうのをやろうと、動き出してるんです。

 森満
森満

薩摩のさつまブランド?

 下麦さん
下麦さん

すごく熱い酒屋さんの先輩が、数年前から、

さつま町に色々なキャッチフレーズがあるけど、『薩摩のさつま』に勝るキャッチフレーズは無い!このキャッチフレーズに統一して、この町をアピールしたい。」

とおっしゃってて。。

 森満
森満

キャッチフレーズとか、ロゴとか、ゆるキャラとか、たくさんありすぎて、わけわかんなくなってますもんね。

 下麦さん
下麦さん

そうなんですよね。

この想いに共感した町内の農業、商業、役場、JAの若手有志が集まって、毎週のように喧々諤々の議論を続けたんですよ。

そしたら、その想いが届いて、薩摩のさつまを地域ブランドとして作り上げていく事業がスタートできることになって。

これからセミナーを通して色んな方を巻き込みながら、町を挙げて使っていこうって話をしてます。

地域ブランド実践型セミナーのチラシ

パワーを分散させない

森満
森満

なぜ、地域ブランドをひとつにまとめようとしてるんですか?

 下麦さん
下麦さん

キャッチコピーにしてもゆるキャラにしても、世の中には溢れるほどたくさんあるじゃないですか?

関わってる部署や人が違うから、そうなるのはしょーがないんですけど、それだとパワーが分散するよなって感じていて。

 森満
森満

間違いないです。

 下麦さん
下麦さん

そこをさつま町はまとめていこうと。

まとめることで、のぼりや道端の看板を統一できるわけですよ。

もちろん、時間とお金がかかると思うんです。

でも、そうすることで、さつま町のイメージが今よりは定着してくるかもなって思っていて。

 森満
森満

おもしろい!

これだけモノやコトが乱立してる中で『まとめていく』っていう方向性は、それこそありそうでなかったというか。

 下麦さん
下麦さん

そうなんですよね。

関東圏の人に「さつま町ってどこにあるか分かりますか?」って聞くと、「ここ!って指はさせないけど、鹿児島のことを言ってることは分かる」って、よく言われるんです。

 森満
森満

なるほど。

 下麦さん
下麦さん

もともと薩摩藩だったこともあるし、一言で鹿児島だって分かる『さつま町』という名称自体が、ひとつの武器なんじゃないかって思うんですよね。

上木
上木

面白いなぁ。

地域ブランドをまとめる意味

 下麦さん
下麦さん

さつま町に住んでる人が、さつま町のものを胸張って推せるようになることが大事だなと思ってます。

そこから、例えば『信頼できる先輩や友達が美味しいって言ってた○○を買ってみようかな』みたいな連鎖が起きていけば、さつま町内の経済が循環していくんじゃないかって。

森満
森満

経済まわさないと、暮らしが豊かにならないですもんね。

 下麦さん
下麦さん

そうなんですよ。

事業者さんたちがしっかり食べていけることが一番大事なので。

地域ブランドをまとめていくことで、少しでもその後押しになれば、さつま町はもっと面白くなるって、そう思います。

 上木
上木

最高です。

もしお前が異動したらどうすんの?

 森満
森満

先ほど、民間事業者と役場職員が混ざって議論してる、みたいな話がありました。

そういう場に巻き込む役場職員って、下麦さんが「こいつおもしろいな!」っていう職員を引っ張ってくるんですか?

 下麦さん
下麦さん

そこの部分については、先日、周りの事業者さんから言われたんですよ。

 森満
森満

どんなことを?

 下麦さん
下麦さん

「お前がもし異動したらどうなんの?」って。

 森満
森満

…たしかに。

現状では、下麦さんの替えってきかないですもんね。

 下麦さん
下麦さん

しかも、私がよくやり取りしてる事業者さんじゃなくて、その事業者さんが地域ブランド実践型セミナーに参加を促してくれた先の事業者さん達からも言われたみたいなんですよ。

『せっかくこういう機会があるんだったら、役場側の若い職員とか、事業者側の気になるやつを引っ張り込んで、一緒に勉強させようよ」って。

 森満
森満

なるほど!

 下麦さん
下麦さん

『一緒に学ぶこと自体が、この町のこれから10年間の基礎になるから』って、逆に俺が言われたんだよ」って、コアメンバーの事業者さんがおっしゃってたんです。

上木
上木

民間の事業者さんの方からそうやって言ってもらえるって、嬉しいですよね。

若い役場職員と事業者さんが仲良くなることの大切さ

 下麦さん
下麦さん

ほんとに。

僕たちコアメンバーは、地域ブランドの講座をどう動かして行こうか、そこの部分でいっぱいいっぱいになってたんですよね。

でも、もう次の段階に来てて。

ここから輪を少しずつ大きくしていかないといけない

上木
上木

うんうん。

 下麦さん
下麦さん

で、役場の若手メンバーについては、事業者さん達から役場の興味あるメンバーに声をかけて、誘ってもらった方が良いよなって思ってるんです。

上木
上木

それはなぜでしょう?

 下麦さん
下麦さん

僕が声をかけてもいいんですけど、事業者さんから誘ってもらった方が、純粋に嬉しいじゃないですか。

気にかけてくれてるんだなって、誘われた側も思うし。

上木
上木

たしかになぁ。

同じ役場職員の下麦さんから誘われるより、事業者さんから誘われた方が、しっかりやらないとなって感じますしね。

 下麦さん
下麦さん

そうなんですよね。

正直言うと、自分が声をかけるのは簡単なんですよ。

以前やった講座(さつま町未来研究室)では、自分が気になる役場職員に声をかけたっていうのもあるので、今度は違う角度からやりたいなって。

さつま町未来研究室のひとコマ。民間と行政のフラットな距離感が、さつま町の魅力だと思うなぁ。
森満
森満

面白い!

 下麦さん
下麦さん

そうすることで、また色々と繋がっていきますしね。

若い役場職員が事業者さんと仲良くなって、お店で買い物してくれたり、町のお店でお金を使ってくれることが、一番大事だなと思ってるんです。

上木
上木

今の良いキーワードだったねぇ。。

 森満
森満

確かに!

完全に今日のインタビューが締まりましたね。笑

 下麦さん
下麦さん

笑笑

おまけー失敗事例の方が再現性があるー

森満
森満

最後に、全然話が変わるんですけど、やっぱり『人』って面白いなぁって、このカゴシマベースを運営しながら感じてまして。

特に、地域おこし協力隊で着任してる方とか、定期的に活動内容や考え方の変遷をインタビューで残していきたいなぁって思うんですよね。

 下麦さん
下麦さん

確かに、地域おこし協力隊って、着任した時は新聞に載ると思うんですけど、そっから先どんな活動をしてるのかって、なかなか伝わりにくいですもんね。

上木
上木

そうなんですよね。

自治体の広報誌とか、マスコミに露出する時って、きれいな部分しか出てこないじゃないですか?

 下麦さん
下麦さん

たしかに。

上木
上木

成功した部分も大事なんだけど、それ以外の失敗したことも含めて、うちのメディアは出していきたいんですよね。

森満
森満

『いやー全然上手くいかなかったなぁ、あの事業。』みたいなのを、どんどんさらけ出していくっていうブランディングです。笑

 下麦さん
下麦さん

なるほど。笑

森満
森満

『そもそも普段活動してる中で、そんなに上手くいくことばかりなわけがないじゃん』って思うんですよね。

下麦さん
下麦さん

たしかに。

それ全体がその人のパーソナリティで、その人の魅力ですもんね。

森満
森満

何度も失敗しながら、チャレンジを繰り返す姿に面白さ人間らしさがあるし、それを見た方がひとりでも「この人のチカラになりたいな」って思ってくれたら、そんな嬉しいことは無いですよ。

 下麦さん
下麦さん

世に出てる情報って、成功事例ばかりですもんね。

そっちの方が見る人が多いからだと思うんですけど。

今回の地域ブランディング講座の準備しながら、ブランディングの本とか読んでても、きれいな成功事例しか出てこないんですよ。

森満
森満

そうかも。笑

 下麦さん
下麦さん

参考にならん!

どっかに失敗事例ないのか!?

って思ってましたもん。笑

かと言って、他の自治体に「失敗事例ありますか?」って聴きづらいし。笑

上木
上木

それは聴けないですね。笑

 下麦さん
下麦さん

だから、鹿児島県内の『人』に焦点を当てて、失敗もさらけ出すっていうコンセプトは、すごく面白いと思う。

地域おこし協力隊も、広い意味では公務員だし。

同じ公務員の立場の人が取材に来てくれると、共通認識があるから話もしやすいですしね。

森満
森満

本当にそうなんです。

地域おこし協力隊じゃないけど下麦さんの今後もめちゃくちゃ気になるので、また定期的にインタビューさせてください!笑

ということで、本日はありがとうございました!

 下麦さん
下麦さん

こちらこそ、ありがとうございました!

まとめー後編ー

若い役場職員が事業者さんと仲良くなって、お店で買い物してくれたり、町のお店でお金を使ってくれることが、一番大事だなと思ってる

これが、このインタビュー全体のハイライトでした。

これを言える公務員は、強いですよね。

地域ブランディングをひとつに絞るっていう考え方も、めちゃくちゃ興味深い。

さつま町は、これからどんどん面白くなる予感がしてます!

ということで、後編では、さつま町がこれからどんな未来に向かって進もうとしているのかについて、お話を伺いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

ではまた次回、お会いしましょう!

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