最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、南九州市で市議会議員として奮闘する、日置友幸さんです。
今回は、26歳で選挙に出馬した時の話や、家族に対する思いを伺いました。
日置さんの姿をとおして、普段接する機会が少ない議員という職業を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
政治家になるということ
学校主事として働く
25歳で東京の会社を辞め、南九州市へ戻るわけですけど、戻ってきてまず何から始めたんですか?
2015年2月に南九州市へ戻り、2015年4月から7月まで、川辺小学校で学校主事として働きました。
学校主事!?
選挙のための準備とかじゃなくて?
そうなんです。
しかも、働き始めてから気づくんですけど、学校主事って公務員なので、選挙活動できないんですよ。。笑
おお。。
なぜ学校主事に?
僕の中で『教育』を重要なテーマに掲げていて。
ずっと教育に関する仕事をしたかったんですけど、議員になったら教育現場で働くことってできないなと思ったんですよ。
たしかに。
とはいえ、教員免許を持ってるわけでもない。
どうすればいいかなぁと考えた結果、「学校主事としてなら教育現場で働けるぞ!」と思って、受けてみることにしたんです。
それで学校主事として働き始めるわけですね。
子どもたちと触れ合う時間はありました?
ありました!
子どもたちと遊んだり、不登校の子が懐いてくれて、主事室に登校する子が出てきてくれたり。
年が近いお兄ちゃんみたいな感じで思ってくれてたのかも。
実際に教育現場で働いてみて、何を感じましたか?
今思うと、リアルな学校現場を見れたことは、すごくプラスでした。
学校の先生たちがなぜ夜遅くまで働いてるのか、おぼろげながらも、見ることができたので。
なるほど。
選挙に出るってなった時、当時の小学生たちから反響はありました?
町中に選挙ポスターが貼られるじゃないですか。
ポスターを見つけた子どもたちが「あ!日置先生だ!」って、大人たちにも言ってくれてたみたいで。
一緒に遊んでくれてた兄ちゃんが、町中にポスターで貼られてたら、「知ってる人だ!」ってなりますもんね。
学校主事として働く期間は選挙活動ができなかったけど、この経験が結果的に活きてくるわけですね。
そうなんです。
こうなることを、まったく計算できてなかったですけどね。。笑
靴を汚すということ
学校主事を辞めて、選挙までの5ヶ月間、どんな活動をしたんですか?
選挙活動の具体的なイメージが全然湧かなくて。。
一言で表すと、『靴を汚す』ってことですね。
靴を汚す?
とにかく一軒一軒訪ねて、「実はこういう者なんです」って言って回るんです。
当時はSNSも使えてなかったので。
あとはビラを配ったり、辻立ちをしたり。
地道な活動を積み重ねたわけですね。
当時掲げてた公約の柱は何だったんですか?
三つの柱を掲げていて。
①子育て支援
②ICT環境の整備
③移住定住の促進
この公約を掲げてました。
子育て支援やICT環境整備は、今もゴリゴリやってますもんね。
そうですね。
議員になることは目的を達成するための手段なんですけど、選挙活動をしてると、どうしても選挙に当選することが目的化してしまうんですよ。
僕の場合は選挙に出るために、全て捨ててましたし。
謎の自信を持って戦った選挙
東京での仕事を辞めて出馬してるわけですもんね。。
26歳ですごい決断ですよね。。
もし落選したら…って考えました?
いや、全く考えてなくて、何とかなるだろうと思ってましたね。
若いからこその謎の自信と言いますか。。
政治の勉強もしてきた!南九州市を良くしたいっていう熱量もある!
落ちるわけがない!!
って思ってました。笑
僕も未だに謎の自信は持ち続けてるので、すごく共感します!
自己肯定感は高い方がいいから、めっちゃ良いと思います。笑
選挙結果はどうでした?
ぴったり真ん中の順位で、当選させていただきました。
ブログで発信を続ける理由
ありがとうございます!
結構突っ込んだことも書いてて、議会からも注目を浴びてました。笑
突っ込んで書いてくれているからこそ、本気さが伝わってきて!
しかも専門用語を少なく、かみ砕いて書いてくれてるから、すごく読みやすかったです!
ブログはどんな思いで書いてるんですか?
僕は、徹底的に政治の透明性を高めることで、この街が良くなると信じているんですよ。
だから、誰でも市政の情報にアクセスできる環境を作りたく、ブログを書いています。
なるほどなぁ。
今後はどのプラットフォームでブログを書いていく予定です?
今はnoteが書きやすいので、noteの方に記事を上げていこうと思っています。
パパとしての顔
幸せの絶頂
ここからはパパとしての顔に迫っていきたくて。
というか、今回のインタビューはここからが本番です。笑
ありがとうございます。笑
子どもが産まれてから、気持ちの変化はありました?
毎日、幸せを実感してます。
結婚が幸せの絶頂だと思ってたけど、子どもが産まれた時に「もう一つ幸せの絶頂があった」って思いましたもん。
出産は立ち会いました?
立ち会いました!
当時、どんな感情を抱いたか覚えてますか?
一人目の子の出産の時、息子が泣かなかったんです。
結果的に無事だったんですけど、とにかく心配と安堵でした。
なるほど。
もう少し掘り下げて質問をさせてください。
パパとしての自覚って、いつ芽生えましたか?
僕の懺悔をすると、子どもがしゃべれる用になるまで、全然親としての自覚が芽生えなくて。。
あー、でも、今振り返ると、僕も他人事だったのかもしれない。
議員活動と子育てのバランス
他人事だったなぁって感じる理由があります?
議員として活動をしていると、ありがたいことに、夜の会合に呼ばれることが多いんです。
皆、昼間は働いてるから、集まれるのは夜しかなくて。
議員さんって、色んな所から声かかるんだろうなぁっていうイメージが強いです。
子どもがおなかの中にいる間、僕はお酒を飲まないって決めてたんですよ。
夜の会合に参加するのも、本当に最小限にしてて。
(偉い。僕はめっちゃ出歩いてました。妻よごめん。)
制限していた分、子どもが産まれたら、たくさん誘ってもらえるようになったんです。
「もう産まれたから来れるでしょ!」って。
なるほど。
僕自身も、「行っていいでしょ?」っていう感覚だった。
妻が大変な状況を理解せずに、「呑んでいい?行っても良いよね?」って言っちゃってて。
結果的に、夜ほとんど家に居ない生活が続いて、夫婦仲が険悪になった時期がありました。。
(うんうん。わかるわかる。)
子育てに誠実に向き合っていなかった
呼んでもらえるって、すごくありがたいことなんですけどね。
パパの自覚、あるつもりだったけど、今思うと全然なかった。
途中で、「このままじゃまずいな」って思いました?
思った思った!
なんで思ったかって、僕の寝かしつけでは息子が寝ないんですよ。
僕が寝かしつけようとしても寝ないから、妻としても「もう私がやるよ!」ってなる。
わかります。。
これはいかんなって。
一番優先順位が高い家族という部分に対して、誠実に向き合っていないということに、子どもが産まれた数ヶ月後に気づくんです。
子どもが僕の抱っこでは寝ないという事実に、すごく反省しました。
そこでしっかり反省するところが、日置さんの素敵な部分だと思います。
逆に二人目の子は、僕の抱っこじゃないと寝ないんですよ。
二人目の子が産まれた時は、「僕の抱っこで寝ないなんてことが無いようにするぞ!」と思って、必死でした。
なるほどなぁ。
今の一連の話って、なんのために生きるのかっていう、かなり本質的な話だと思ってます。
時代が気づかせてくれる価値観
そうそう。
抱っこで子供が寝てくれる幸せに気づけてるのって、「女性も男性も子育てに参加するのが良いよね」っていう時代に生きてるということだと思うんです。
???
例えば、これが50年前だったら、「男が赤子の寝かしつけなんてするもんじゃない!」って言われてるはずで。
過去の人がその価値観を変えてくれたからこそ、僕は自分の抱っこで子供が寝てくれる喜びを感じることができています。
政治の側に立つと、マクロな視点で考える癖がついて、そう感じることがありますね。
めちゃくちゃ面白い視点!
子育てひとつとっても、今って完全に過渡期だから、いろんな人のいろんな思いが渦巻いて、面白いですよね。
女性が政治家になりづらいという不条理
そうそう。
併せて思ったことがあって。
僕は男だから、「奥さんが子ども見てくれてるでしょ?だから会合おいでよ!」って言われるけど、これが女性だったとしたら。
きっと、「夜は子供の世話しなくていいのか?」って言われると思うんです。
なるほど。。
「旦那さんに子供の面倒は任せて、夜出ておいでよ!」とは言われないだろうなって。
ここに宴会政治の限界を感じましたね。
子育て中の女性が政治家になりにくい環境だなって。
たしかに。
そう考えると、宴会政治って色々とフラットではないですよね。
夜出歩ける人だけが、政治の中枢に接触できるっていう環境って、客観的にみると不健全だよなぁ。
コロナ禍以降は、会食とかほとんど無くなったんじゃ?
一切なくなりましたね。
特に最近は、稀に誘ってもらっても断ってます。
コロナ禍になって大変なことが多いけど、気づきもありました。
気づき?
夜、家に居るってことは、家族の仲が深まるんだなっていう。
ごく当たり前のことを気づかせてもらいましたね。
圧倒的に家で過ごす時間が増えましたもんね。
加えて、夜の会食が無くなるって、政治的にはクリーンなことなんだろうなと。
『夜お酒を飲みに行ける人=決定権者とか議員と近い関係になれる』っていう環境を、コロナ禍であることが許さないわけじゃないですか。
なるほどー!
おもしろい考察!
この状況が続けば、政治的にはフラットになるだろうなって。
夜、お酒を飲みながら政治が動くような文化は変えて行かないといけないなって、政治の側にいるからこそ思いますね。
まとめー中編ー
日置さんの家族に対する愛を、僕がひたすら浴び続けたインタビューでした。
子どもに対する声かけや、夫婦の会話を聴けば、家での様子や家族の関係性って、おおよそ想像できるじゃないですか。
仲良い家族なんだろうなぁっていう、幸せオーラ満開な様子が、見ていて心地よかった。
リアルに子育てをしてて、悩みや楽しさを共有できる人が提案する子育て施策だと、説得力が違うじゃないですか。
日置さんには、その説得力がある。
どんな街を思い描いて、どんな未来をつくっていくのか、すごく興味があります。
ということで、中編では26歳で選挙に出馬した時の話や、家族に対する思いについて、お話を伺いました。
後編では、行政職員との関係性や今後の展望について、お話を伺います。
また次回、お会いしましょう!
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