【前編】地域づくりの活動こそ勤務時間中にやらんといかん【竹ノ下武宏|鹿児島市役所船舶局】

公務員図鑑

最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』

今回のゲストは、鹿児島市役所で船舶運航課長として働く竹ノ下武宏【Takenoshita Takehiro】さんです。

この記事は6分で読めます^^

前編では、竹ノ下さんの業務時間に対する捉え方や、『火の島太鼓』で得た経験について、お話を伺いました。

竹ノ下さん(以下「タケヒロさん」)の姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。

<聞き手=押川蓮斗(さくらじま地域おこし協力隊)、山下彰太(株式会社ecommit広報ブランディングマネージャー)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>

竹ノ下さんのプロフィール

鹿児島県桜島町出身。1966年生まれ。

桜島を盛り上げるべく、桜島町役場(現在は鹿児島市役所)へ入庁。

企画課や住宅課など様々な職務を経験し、現在は船舶局で船舶運航課長として働く。

公務員として働く一方、NPO法人桜島ミュージアムの副理事長や鹿児島県太鼓連合の事務局等の顔を併せ持つ。

24時間365日、桜島の住民のために生きるんだと語る、アツい公務員。

公務員としての顔

名刺に顔のイラストを入れたい

森満
森満

よろしくお願いします!

急にお時間いただいて、ありがとうございます!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

いつでもウェルカムだよ。笑

というか、この名刺、いいねぇ!

森満
森満

かわいいですよね…‼

桜島在住の山下ゆりなさんにデザインしてもらった、自慢の名刺なんです!

森満の名刺。山下ゆりなさんにデザインしてもらった、自慢の名刺です。
山下さん
山下さん

この森満くんの名刺、僕の妻がデザインしたんですよ。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

いいねぇ!

こういう名刺、大事だよね。

仕事柄、いろんな業者さんと名刺交換するんだけど、名前と肩書きだけじゃ誰がどの名刺だか分からなくなるのよ。

押川さん
押川さん

たしかに。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

顔写真はちょっとあれだけど、顔のイラストを名刺に入れたいなぁって、ちょうど思っててさ。

鹿児島市の名刺もちゃんと持ってるんだけど、それ以外のところで名刺を使うことの方が多いもん。

森満
森満

というか、タケヒロさんの名刺、裏に色々書いてありますけど、桜島ミュージアムの副理事長なんですか…⁉

竹ノ下さんの名刺の裏側。
竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうなのよ。

何もしてないんだけどね。笑

押川さん
押川さん

桜島地域おこし協力隊の僕にとって、タケヒロさんは直属の上司なんです。。笑

船舶運航課の仕事

森満
森満

名刺にもありましたが、船舶局の船舶運航課長ということで。

そもそも船舶局ってどんな課がありましたっけ?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

総務課、営業課、船舶運航課、安全運航推進室があるよ。

森満
森満

なるほど。

船舶運航課って、主にどんなことをやってるんですか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

船や可動橋の維持管理だったり、施設整備造船とかだね。

森満
森満

ってことは、事務職だけじゃなくて、技師職も在籍してます?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

いるよ!

電気技師と機械技師が1人ずつ。

桜島と鹿児島市街地をつなぐ桜島フェリー【出典:桜島フェリーFacebook

前向きな提案はすべて「やろう!」って言う

森満
森満

なるほど。

そもそもなんですが、今日タケヒロさんがインタビューを受けてくださったことに対して、個人的にとても感激してて。

っていうのも、役所の管理職の方って、取材を申し込んでもなかなか受けていただけないんですよ。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

うんうん。

森満
森満

『そりゃそうだよな』って自分でも思うんです。

カゴシマベースっていうまだ全然認知されてないメディアで、自分の話が記事になるって、通常の公務員的考え方からすると、リスクしかないじゃないですか。

だから、こうやってインタビューさせてもらえてること自体が、本当にありがたく。。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

今回だけじゃなくて、基本的に若い職員の提案は、前向きなものであればすべて「やろう!」って言うようにしてるのよ。

だから今回も即決だったね。笑

minatocafeでインタビューを受けてくれるタケヒロさん(写真中央)
森満
森満

いやっ…ありがたい…‼

竹ノ下さん
竹ノ下さん

ポジティブな提案はいつでもウェルカム。

たとえば、このカゴシマベースだって、目の前の活動だけ見れば『取材』っていう括りだけど、その先にしっかり市民がいて、鹿児島市のためになってるわけじゃない?

『この取材の先には市民がいるわけで、市民のため、住民のためになってる』っていう、ただそれだけの話だよね。

森満
森満

!!

『カゴシマベースの活動は仕事じゃないだろ』って大多数から言われてるので、この活動を『住民のためになる』って言ってくれる課長が、鹿児島市役所の中にいるという事実に感激してます。。

住民の困りごと=自分の仕事

押川さん
押川さん

僕はいつも、タケヒロさんに時間をもらってる立場なんです。

「聴いてほしいことがあるので時間もらえますか?」って言ったら、「よかど!」っていつも言ってくれるので、『本当にありがたいなぁ』と思っていて。

タケヒロさんのそういう部分って、役所の中では敬遠されそうなイメージですけど、、笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

笑笑

若いころは、全く敬遠されることが無かったよね。

というのも、僕はもともと桜島町役場の職員なんだけど、町役場の働き方って、隣の職場の仕事だろうがそんなの関係なく、自分がやらんといかんわけ。

押川さん
押川さん

なるほど。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

自分が税務課だったとしても、「うちの畑のあれが困ってるのよ…」って電話がかかってきたら、走って行かないといけない。

それが隣の課の仕事であってもね。笑

それこそ、『地域づくり』なんて、積極的にどんどん関わっていかないといけないような空気感だったのよ。入庁した当初から。

押川さん
押川さん

はー!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

町長とか上層部の人こそ、地域づくりに力を入れてる人が多かったから、やるのが当たり前

勤務時間だろうが、地域のためだったら何でもあり。

そういう環境で僕はずっと仕事をしてきた。

押川さん
押川さん

『地域での活動が嫌だ』って思う職員は、桜島町役場には居なかったんですか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

いたよ。若い職員でもね。笑

押川さん
押川さん

ですよね。。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

ただ、地域づくりをやる側が主流だったんだよね。

だから、僕としてはやりやすかった。

押川さん
押川さん

なるほど!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

でも鹿児島市と合併して、やっぱり町役場時代とは雰囲気が変わったところがあるのよね。

森満くんが今日休みを取ってここに来てるみたいに、地域づくりをするために休みを取らないといけなくなってきた。

押川さん
押川さん

うんうん。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

休みをとって活動をするのもいいんだけど、かといって、他にもプライベートな都合で休みたい時があるわけだよね?

しかも職場によっては、休みが取れないわけじゃないけど、雰囲気的に取りにくい所もあったりするじゃない?

森満
森満

職場によっては、ありますよね。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そういう部署だと『休みが取れない&動きにくい』みたいなことはあるよね。

やってることは公共に利益をもたらしてることなのに、それが公務時間外でやらないといけない状況になってしまっている。

それってさ、すごくもったいないよね。

業務に支障がない範囲であれば、少し寛容になっても良いんじゃないかなぁと思うよ。

森満
森満

いや…もう最高です。。

そんな風に考えてくれる課長が組織の中にいるだけで、僕にとっては希望です。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

もちろん、業務内容によりけりだとは思うけどね。

あと、僕が今のびのび動けてるのは、課長というポストも少なからず関係してると思う。

桜島フェリーに乗ってぼーっとする15分間は、癒しの時間です。【出典:桜島フェリーFacebook

世の中からもらったものは世の中に返す

竹ノ下さん
竹ノ下さん

うちの息子もさ、もう働き始めてるから、よく話をするんだけど。

自分の給料は、自分だけで使ってたらダメだぞって。

森満
森満

???

竹ノ下さん
竹ノ下さん

とにかく世の中からもらってる給料は、世の中に返さんといかんのよね。

特に僕らみたいな公務員は、給料を住民からいただいてるわけじゃない?

森満
森満

なるほど。

竹ノ下さん<br>
竹ノ下さん

もちろん、一番大事なのは家族よ。

それは当然。

その上で、僕は公務員として働き始めて、幸運なことにも公務員の仕事の中にやり甲斐を見つけられた部分があるからさ。

森満
森満

うんうん。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

だから僕は、365日24時間、桜島の島民のための職員だと思ってる。

住民に困りごとがあった時は、勤務時間外であっても、そりゃあ駆けつけるよ。

だって、365日、24時間、ずっと勤務時間だから。

押川さん
押川さん

タケヒロさんの中では、オンとかオフっていう捉え方じゃないわけですね。

森満
森満

その感覚はすごく共感できます。

僕も、このカゴシマベースの活動って、全部勤務時間外にやってるけど、鹿児島市のためだと思ってやってるし、子育てにしても、地域づくりだと思ってるところがあるので。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうそう。

だから、こういうインタビューも含めて、やりたいことがあるんだったら、昼間の時間にやってもいいんじゃ?って思ってるのよ。

その代わり、ちゃんとやるべき業務は、業務時間外にでもきっちりやればいいじゃんって。

だってさ、起きてる時間は人間みんな一緒なわけでしょ?

押川さん
押川さん

そうなんですよ…‼

地域でまちづくりの活動をする中では、圧倒的にタケヒロさんみたいな考え方が必要だよなって、鹿児島に来て特に感じます。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そういう『地域住民のために!』っていう想いを持った職員がたくさんいる職場は、やっぱり強いよね。

地域での顔

原点は火の島太鼓の活動

森満
森満

今のタケヒロさんの価値観を形作っている原点は、何なのでしょうか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

僕の原点は、やっぱり火の島太鼓の活動だなぁ。

森満
森満

火の島太鼓?

桜島の伝統芸能でもある桜島火の島太鼓
竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうそう。

桜島町役場に入ったばかりの頃、「若いやつはみんな太鼓のメンバーに入れ!」って言われてさ。

森満
森満

ほうほう。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

上司の命令だったから、当時は入るという選択肢しかなくて。

たまに練習行きたくなくてサボると、次の日には上司が各フロアを回って、「お前は昨日練習行ったとや?」って聞かれてさ。笑

森満
森満

逃げ場ないですね。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

僕も若かったからさ、当時は「太鼓なんて。。」って思うわけ。

サッカーとか野球したいなぁ。

遊びに行きたいなぁって。

森満
森満

でしょうね。笑

イヤイヤやってた太鼓を好きになった理由

竹ノ下さん
竹ノ下さん

でも面白いもので、最初はイヤイヤやってたんだけど、練習を続けてるうちに、だんだんとハマっていったのよね。

森満
森満

それはなぜでしょうか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

自己満足かな。

森満
森満

自己満足?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうそう。

太鼓が得意とか太鼓が一番好きっていうわけではなくて。

ただただ太鼓の活動が楽しかった。

他の人がやってないことを自分はやってるんだっていう気持ちで、自分自身が満たされていった感じかなぁ。

森満
森満

なるほど!!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

太鼓の練習って、週2回、19時から21時半までやるんだけど、若い頃って色々忙しいじゃない?

練習の時間までに仕事が終わってないことばかりだったんだけど、「仕事は練習が終わってからすればよかがね!」って言ってさ。

練習の直前まで仕事して、練習が終わってから職場に走って帰って仕事するみたいな感じだったのよ。笑

森満
森満

すご。。

働き方改革が叫ばれる今では、少し考えにくいですね。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

かなりハードワークだったんだけど、『人がやってないことを自分はやってる』っていう感覚で満たされていったよね。笑

当時と今は時代も社会情勢も違うから、この感覚が今も最適だとは思ってないけどね。

先頭に立って指揮することが楽しかった

森満
森満

先ほど『太鼓の活動が楽しかった』とおっしゃっていましたが、活動のどんな部分が楽しかったんでしょう?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

うーん、、みんなを動かすことが楽しかったんだと思う。

先生気質っていうのかな。笑

『次みんなでこれやろう!今度はこっちをやってよう!』って、先頭に立って指揮することが楽しかった。

森満
森満

もともとがそういう性格だった?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

いやっ、そんなに積極的なタイプではなかったんだけど。

活動を続けてるうちに、やってる以上は『こうしたいな!ああしたいな!』って、熱量が少しずつ上がってきたのよね。

森満
森満

なるほどなぁ。

太鼓に恩返しする

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そこから、20代は太鼓の活動で全国を走り回ったよ。

太鼓の世界で有名な人達に会いに行ったり、すごいイベントを見に行ったよね。

そもそも、うちの団体の師匠が林英哲さんっていう、すごいプレイヤーで。

森満
森満

すごい!

地方の太鼓団体なのに、そんな有名な方が教えてくれるものなんですか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

光栄なことでだったよ。

そもそも『太鼓で桜島を盛り上げよう』っていう想いが、桜島町全体にあったんだよね。

そこから30歳になった時に、鹿児島県の太鼓連合の会長をさせてもらって。

森満
森満

30歳で!?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

全国の太鼓連合の会の中でも、かなり若い方だったと思うよ。

森満
森満

そういう団体の会長って、60代が多いイメージです。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうそう。笑

でもその時の経験が、僕をかなり成長させてくれた。

僕の中では、太鼓に育ててもらったという想いが強いからさ。

太鼓には恩返ししないといけないなって思ってるよ。

プレイヤー時代の竹ノ下さん

まとめー前編ー

若い職員の提案は、前向きなものであればすべて「やろう!」って言うようにしてる

こう言ってくれる上司の存在は、チャレンジしようとする全ての若手の支えになります。

こんなことを言ってくれる課長が鹿児島市役所の中にいたことに、ただただ感動していて。

『熱い想いを持つ職員が多い地域ほど強い』ってタケヒロさんも言ってたけど、これもまさにそうだなと思うなぁ。

共感する言葉が連発してて、首ちぎれるかと思うぐらい頷きっぱなしでした。

ということで、前編では竹ノ下さんの業務時間に対する捉え方や、『火の島太鼓』で得た経験について、お話を伺いました。

中編では、若手時代のチャレンジや、戦略的に地位をつかみに行った理由について、お話を伺います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ではまた次回、お会いしましょう!

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