最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島市役所で事務職として働く上木寿人さんです。
後編では、2021年6月から2022年3月まで10か月間の育児休業を取得することについて、その真相に迫りました。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
パパとしての顔
人生の軸
上木さんって、出身はどちらでしたっけ?
僕は奄美出身ですよ。
その辺りも、僕の性格を形成する上で大きなポイントですよね。
すごい適当だから。島の人って。
いやいや!
語弊がやばいです。笑
島時間って言うじゃないですか?
友人と飲み会の待ち合わせしても、2時間遅れてきたりしますもん。
笑笑
なんていうか、労働意欲が低いんですよね。僕も含めて。
『仕事に人生を捧げる!』みたいな雰囲気の中で育ってないんですよ。笑
人生の軸を仕事に置いてないってことですよね。
そうそう。
とはいえ、そうも言ってられないから、仕事を楽しむ方向へ持っていくしかないっていう。笑
家族の話
なるほどなぁ。
少し話が変わりますけど、家族の話を伺いたくて。
お子さんがいらっしゃいましたよね?
おいくつですか?
小学1年生の男の子ですね。
朝の準備の時なんて「ほら、準備しないと!」って言っても、全く言うことを聞いてくれないんですよ。
なるほど。笑
家で何をして遊んでます?
うちの子は、本能のままに生きてて。
やりたいことをやり、食べたいものを食べ、寝るっていう。
笑笑
超絶朝型人間
育児は、どういう風に関わってますか?
夜の寝かしつけとかしてます?
寝かしつけねぇ。。
僕、20時半に寝るんですよ。
へ?
なので、そもそも寝かしつけができなくて。
僕が寝た後、子どもが寝るわけ。
それについては「本当に申し訳ない」って、家族にも伝えてます。
すごい。笑
20時半に寝たら、夜中目が覚めませんか?
朝、4時前に起きるんですよね。
…‼
超絶朝型人間ですね。。笑
朝4時前に起きて、何してるんですか?
多幸感
運動することが多いですね。
『楽しく働くぞ!』って決めたころ、夜型生活から朝型生活に180度シフトチェンジしたんですよ。
それはなぜでしょう?
朝って、基本的にポジティブじゃないですか?
悩みがあった場合、朝に決断をすると大体うまくいくんですよ。
朝って脳がからっぽで、すっきりした状態ですもんね。
そうそう。
そのポジティブな時間を少しでも長く取ると、一日の中でネガティブな時間が減るじゃないですか。
朝の活動時間を増やした方が、多幸感を感じれるので、僕は朝活動するようにしてますね。
早出勤務×定時退庁
なるほどなぁ。
とはいえ、20時半に寝るところから逆算すると、結構早く家に帰りつかないと色々終わらなさそうですけど、、
グリーンツーリズム推進課って、定時で帰れるんですか?
帰れます帰れます。笑
しかも早出勤務をしていて、7:30-16:15の勤務時間だから。
なるほど!
よく考えたら、その働き方ってすごく理にかなってるのかもですね!
17時前には家に居られるから、そこから子供と遊んだり、家事したりできるわけですもんね。
育児休業を取る話
2人目の子が産まれた
そうなんですよ。
あと、実は、今月子どもが産まれて。
え‼‼
2021年6月から2022年3月まで育児休業を取るんですよね。
なので、今、仕事は引継ぎ作業をしてるんです。
ほんとですか!
まだ産まれたばかりじゃないですか!
すごい!
おめでとうございます!!
ありがとうございます。笑
育休を10ヶ月間取る
というか育休を10ヶ月間取る男性職員、初めて見ました!笑
男性にしては長い方じゃないです?
たしかに。
森満君は、育休を半年間取ったんでしたっけ?
ですです!
たぶん半年間でも鹿児島市役所だと長い方で、長期で育休を取得する男性職員ってあんまり見かけないですよね。
妻のアドバイス
そうかも。
長くても3ヶ月とか半年とかですよね。
実を言うと、最初は、育休を取るつもりじゃなかったんですよ。
そうなんですか!?
そうそう。笑
ただ、妊娠が分かる前の時点から、妻が「育休取った方がいいよ!」って言ってくれてて。
なので、「今度子どもが産まれたら取ろう!」って言う話をしてたんです。
確かに、数年前上木さんと話した時に、「子どもが出来たら育休取りたい!」っておっしゃってましたもんね。
そうそう。
本当はコロナ禍じゃなかったら、育休中に家族で台湾に住むつもりだったんです。笑
台湾⁉
「台湾に2ヶ月ぐらい住もう!」って夫婦で話したんです。
コロナ禍で行けなくなっちゃいましたけど。
なぜ台湾だったんですか?
妻が台湾のことを好きだから。
素敵なエピソード。笑
人事がバタつく前に打診をした
ちなみに、「育休を取りたいんですけど。。」っていう人事や上司への打診は、どのタイミングでしました?
1月ぐらいにしましたね。
2月以降の人事がバタつく前に、打診をしておこうと思って。
なるほど。
人事が調整を始める前に打診をすることで、異動とか人員配置に配慮してくれるんじゃないかと思って。笑
かしこい!笑
逆に、森満君はどのタイミングで言ったの?
僕は育休を取りたいと思いながらも、金銭面の不安が要因でなかなか踏ん切りがつかず、言い出せなくて。
結局打診したのは、育休を取る2ヶ月前でしたね。
育休を取ると、給料が0になりますもんね。
その代わり、育児休業給付金がもらえるんですけど、給料の67%しか給付されない。
そうなんですよ。
我が家の場合は、三人目の子だったこと+妻が専業主婦だったことで、実質的に僕の給与が全収入源なので、67%はきついなぁと。。
まぁでも、「子どもたちと一緒に生活をするっていう時間は今しか得られないよな」っていう考えになり、育休を半年取ったわけですが。
現実は、生活がかなりキツかったですね。。笑
我が家の場合は夫婦で市役所職員で、2人とも育休に入るので、育児休業給付金も2人分もらえるから、少し状況はマシかもしれないですね。
「育休を取ってくれてありがとう」と言われる職場環境
僕も育休を取ってみてわかったんですけど、男性が育休を取るハードルが二つあると思っていて。
1つ目が金銭面。
2つ目が職場環境。
うんうん。
僕の例ばかりで申し訳ないんですが、4月から半年間育休に入りますってなった時、職場環境としては純粋に1人職員が減るわけですよ。
周りの職員が良い人ばかりだったので、「育休取るな!」みたいな話はされなかったですけど、僕自身はどこか『申し訳なさ』を感じながら育休を取った状況で。
その辺りは、上木さんの場合いかがでしたか?
僕の場合は、6月から育休を取るわけですが、4月からグリーンツーリズム推進課に1人増える形で職員が配属されてて。
1人増える⁉
そうそう。
僕が6月から居なくなるから、そこを補填する意味合いで。
でも4月-5月は、まだ僕も仕事してるから、グリーンツーリズム推進課としては、今までより1人多い状況で4-5月を過ごせるわけですよ。
それ、ベストな状況ですね…‼
そうそう。
だから、周りの職員からも、「逆に育休を取ってくれてありがとう!」みたいな。
「おかげで4月-5月の忙しい時期をスムーズに乗り切れたよ!」って言われてます。笑
最高だなぁ。
でも、『積極的な男性の育児参加を!』って言うのであれば、この形が健全ですよね。
森満君が「申し訳ない」と思いながら育休を取る状況って、かなり意味不明じゃない?
そうなんですよ。。
『周りに気をつかう人ほど育休取ろうと思わないかもな』って感じましたもん。
おかしいよね。
どう考えてもおかしい。
昨年の僕はそういう状況だったんですけど、今年育休を取る上木さんがこういう状況だということは、今から育休を検討してる職員にとって、めちゃくちゃ希望だと思います。
少しずつ変わってきてるのかもしれませんね。
グリーンツーリズムの仕事が好き
ただ、育休を取ること自体には何の弊害も無いんだけど、なんかちょっと寂しくなってきて。。
寂しい?
仕事を離れること自体が寂しいと言いますか。。
完全に引継ぎも終わったので、僕宛の電話も仕事中かかってこないし。
仕事は嫌いじゃない、というかむしろ大好きなので。。
自由にしていいよって言われると、なんかこう。。
職場環境が素敵すぎますね。笑
今日も打合せが3本あったんですけど、僕はひたすら話を聞いてるだけで。。
『自由すぎてつらい』って、初めて聞きましたよ。笑
夫婦そろって4月に復帰する理由
夫婦そろって育休を取るわけですが、育休から復帰するタイミングはどう考えてますか?
同じタイミングで、来年の4月に復帰しようと思ってます。
僕自身、結構前の段階から4月に復帰するということは決めてたんですよ。
なぜ4月に復帰することが確定だったんですか?
僕が育休を取ると、その代わりに他の職員が来るわけじゃないですか。
その上で、中途半端な時期に僕が復帰すると、僕自身のやりたいことがやれる部署に行ける可能性が低いでしょ?
たしかに。
人事担当の目線で見ると、復帰する人がどの部署に行きたいかよりも、人が足りてない部署や、もとの部署に配属させるかも。。
ですよね。笑
コロナ禍での出産事情
2021年の5月に出産されたということで、思いっきりコロナ禍だったわけですけど、出産の立ち合いとか出来なかったんじゃないですか?
我が家の場合は助産院で産んだから、全然立ち合いとか出来ましたよ。
上の子の時も、同じ助産院にお世話になったんですけど。
そうなんですね!
産まれる時の状況は、どんな感じでした?
出産段階になって、19時頃に助産院に車で送って行ったんですけど、「まだ産まれないから」って言われたので一旦帰ったんです。
そしたら21時頃に「そろそろです!」って電話が来て。
(うんうん)
上の子を連れて、慌てて助産院へ向かったんです。
で、着いたら、もうお生まれになってました。
お生まれに。笑
でも、産まれた後、僕らが着くまで待ってくれてて。
へその緒は上の子が切ったんですよ。
すごい!
助産院って、その辺柔軟に対応してくれるから、ありがたいですよね。
助産院で産むということ
上のお子さんにしても、へその緒を自分で切るって、なかなか貴重な体験だったでしょうね。
そもそも上の子の時から助産院で出産されてたとのことですが、なぜ助産院で産むという選択だったんですか?
『病院の分娩台で産むイメージが湧かない』という妻の希望で。
助産院は、四畳半ぐらいの部屋の布団の上で出産するんですよ。
助産院での出産ってどんな感じで進むんですか?
病院ではないので医療行為は出来ないんですが、助産師が付きっきりで母子の力を支えるって感じです。
上の子の時は、立ち会ったんですけどどうしたらいいか分からず、とにかく妻の背中をさすってて。
アタフタしちゃいますよね。。
ただ、背中をさすること自体も助産師さんがしてくれるんですよ。
途中で「パパはちょっと休憩してて」って言われて。
だから、4畳半の隅っこの方で休憩してました。
なるほど。笑
しずかーに待ってたんですよ。
端っこの方で。
そしたら、「集中できないから、部屋の外に出て」って言われて。
追い出されてるじゃないですか。笑
「土壇場で呼ぶから」って。
だから、土壇場になるまで、隣の部屋で寝てましたね。
1人目の時はそんな感じだったかなぁ。
いや、でもすごく分かります。
僕も、アタフタしかしてなくて。
そこでめちゃくちゃ痛感したんです。
男って無力だなって。
わかる。
産んでもらった時点で、妻にめちゃくちゃ借りがあるなぁって思ってて。
産んでもらった日から、どうやってその借りを返して行こうかって、考えてます。
だから、日々、妻への点数稼ぎをしてますね。笑
本当にそうですよね。。
妻への点数を稼ぐ
1人目の子が産まれた時から、家事とか育児って積極的にしてました?
うん。最初はね。
最初は?
人間ってほら、忘れる生き物じゃないですか。
最初は「よし!やろう!」と思って、張り切って洗濯物干してみたりするんですけど、日が経つごとにやらなくなってしまうんですよね。。
で、妻に怒られそうになったら、またやるっていう。
正直すぎる。笑
怒られそうだなって感じたらやって、これぐらいで良いかと思ったら辞めて。
また怒られそうになったらゴマ擦って、、みたいな。
この繰り返しです。
いやでも、なんか素敵な関係性ですね。
そのナチュラルな感じが。
笑笑
逆に聞きたいんですけど、森満君は育休を半年間取る中で、どんな風に毎日を過ごしてたんですか?
最初の1ヶ月間は、完全に家事育児の修行期間でしたね。
とにかく一日中台所に立ってた気がします。
なるほど。
朝ご飯作る→食べさせる→皿洗いながら昼ご飯考える。
昼ご飯作る→食べさせる→皿洗いながら夜ご飯考える→買い物に行く。
夜ご飯作る→食べさせる→皿洗う。。
一日中台所にいるわ!!ってなってましたね。
笑笑
これだけじゃなくて、洗濯物干したり、トイレとか風呂の掃除したり、子どもたちと遊んだり、、
最初は慣れてなかったから楽しかったんですけど、だんだん辛くなってきて。
「とにかく洗濯物を干す時間と食器を洗う時間がなんとかならないけ?」って思ったんです。
ふむふむ。
そんな時に、1人10万円のコロナ給付金があったので、僕と妻の20万円を突っ込んでドラム式乾燥洗濯機を買ったんですよ。
そしたら、家事がめちゃくちゃラクになって。
なるほどなぁ。
今まで、妻から何度か提案を受けたことがあった気がするんです。
「ドラム式乾燥洗濯機を買おうかなぁと思ってる」って。
「今の洗濯機が壊れてないから、いらないんじゃない?」って言っちゃってたんですよ、僕。
(うんうん)
いざ、自分が毎日家事育児をする当事者になった時に、妻の言ってた意味がようやく理解できたと言いますか。
「ほんとに申し訳なかった」と、謝りましたもん。
その後、食洗機も購入しましたね。
とにかく『家事の時間を効率化することがいかに重要か』を思い知った育休期間でした。
実は、我が家もコロナ給付金で、食洗機買ったんですよ。
そしたら、生活が劇的に変わって。
もう、食洗機無しの生活には戻れないです。笑
分かります!!
時短家電は、もはやパパのために買うべきだと思ってて。
たしかに!
ママから洗濯物と食器洗いの担当を引き継いだ上で、パパが自腹で食洗機とドラム式乾燥洗濯機を買えば、ママは家事がラクになり、パパもラクしながら家事に参加できるじゃないですか。
そうですよね!
それこそ、ドラム式乾燥洗濯機の購入を検討してて。
やっぱり買います。笑
買いましょう!笑
僕の育休の話に戻ると、時短家電を導入したことで、一日のスケジュールに少し余裕が生まれたんですよ。
その空いた時間で、子育て向けのWEBメディアを妻と二人で始めることになって、そこから派生して、今このKagoshimaBaseをやっているので、人生何があるか分からないですよね。
たしかに。
手で食器を洗って、手で洗濯物を干してた時は、記事を書く余裕なんて無かったですもん。
洗濯物を干す時間って、たかだか1日20分かもしれないですけど、毎日ですからね。
1ヶ月で600分(10時間)、1年で120時間(5日間)の余白が生まれると思うと、かなり良い投資だと思います。
そうだね。
空いた時間で何をしようかなぁっていうことを、今ずっと考えてるんですよ。
当然家事はしっかりやった上で、空く時間があるわけじゃない?
そうですね。
何か趣味とかあります?
ランニングとか筋トレかなぁ。
あ!家庭菜園どうですか?
子供と一緒に楽しめるし、収穫も楽しいし。
家庭菜園いいかも!
子どもは水とかずっとやるでしょ?
やります!
「もうそんなにやらないでいいよ!」っていうぐらい、水あげるの好きですよね。笑
じょぼじょじょぼじょぼってね。笑
「やりすぎやりすぎ!!」って毎回なってます。笑
あとは、一緒にカゴシマベースとして取材行きません?
梅雨明けから、鹿児島市以外の人にたくさん会いに行こうかなと思ってて。
行く行く!
色んな人に会って話聴いてみたいんですよね。
お!嬉しい!
ということで、今回は仕事の話からプライベートまで赤裸々にお話しいただき、ありがとうございました!
また3ヶ月後ぐらいに、家事育児にどっぷりつかった感想を聞かせてください!笑
こちらこそ、ありがとうございました!
まとめー後編ー
育児休業の話に特化した後編となりましたが、いかがでしたか?
こんなに育児や家事の話で盛り上がれる職員に初めて出会ったので、僕自身もすごく新鮮でした。
上木さんの一番素敵だなと感じるポイントは、ナチュラルさだなと思っていて。
育休を取ることに関しても、ごく自然に、当たり前のこととして考えていることが話の中から感じとれて、そこが最高だなと。
これから、育児や家事をする中で、上木さんの気持ちがどう変化していくのか、そこも注目ですね。
ということで、最後まで読んでいただきありがとうございました!
では、また次回お会いしましょう!
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