「対話と挑戦の文化をつくる」がキャッチフレーズの、鹿児島にあるまちづくり団体テンラボ。
そんなテンラボが鹿児島県くらし共生協働課と組んで、2012年から行っている講座があります。
その名も「本気の地域づくりプロデューサー養成講座」
毎年、鹿児島県内の各地で活躍する人材を輩出するこの講座の受講生たちに、定期的にインタビューをして、受講生が年々変化していく様子を応援しようという本企画。
今回のゲストは、鹿児島県立出水工業高等学校で家庭科教諭として働く山下優香さんです。
前編では、先生としてどんな人生を歩んできたのかについてお話を伺います。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
山下優香さんのプロフィール
鹿児島県奄美大島出身。
高校生までを鹿児島で過ごし、長崎大学へ。
大学卒業後、期限付き教諭として奄美高等学校、大島北高等学校で勤務。
教員採用試験合格後、鹿児島県高校教諭として鹿屋農業高等学校で4年間の勤務を経て、現在は出水工業高等学校で活躍中。
どうやったら生徒の夢がかなうか、生徒と一緒に考えることが好きという自身の性質に気づき、2019年にキャリアコンサルタントの資格を取得。
夢はかなう!と、生徒である高校生たちに伝え続ける。
一方で、学校を学びの場として提供する「高尾野わくわくアカデミー」のメンバーとしても活動中。
プライベートでの学びを生徒たちに還元するために、2020年度「本気の地域づくりプロデューサー養成講座」への参加を決める。
高校の先生になるまで
小学校の先生になるつもりだった
よろしくお願いします!
私、変なことたくさん言っちゃうかもしれないけど、大丈夫ですか!?
よろしくお願いします!
ちゃんと公開前にチェックをお願いするから、大丈夫ですよ。笑
今は高校の先生をしてるんですよね?
よかった。笑
出水工業高校で、家庭科を教えています!
なぜ家庭科の先生に?
高校卒業後、長崎大学の教育学部に行ったんですけど、最初は小学校の先生になるつもりだったんです。
小学校の先生を目指す過程で、家庭科の授業も選択していて。
いざ、小学校の教員採用試験を受けたんですけど、試験に落ちたんですよ。
学校の先生の採用倍率、めちゃくちゃ高いですもんね。。
私たちの時で13倍ぐらいだったかな。
試験に落ちた後、どうしようかなーって考えながら、地元が奄美大島なので、島に帰って期限付きの教員でもしようかなと思ったんです。
色々な学校で期限付き教員ができるようにと、卒業後半年間大学に残って、特別支援学校教諭の免許まで取って。
すごい!
運命の接点
特別支援の免許を取得した後、奄美高校で期限付き教諭として働き始めるんです。
あれ?
小学校の先生を希望してませんでしたっけ?
教育実習で、小学校も中学校も特別支援学校も経験してて。
あ!
まだ高校だけ経験してないじゃん!と思ってですね。笑
かなりカジュアルな理由ですね。笑
その選択が私と高校との出会いで、運命のはじまりでしたね。
奄美高校で働き始める
高校の先生としてのキャリアを、奄美高校からスタートさせるんですよね?
そうです!
当時、私が受け持ってたのは家政科で、女の子ばかりなのにめちゃくちゃ荒れてる学級だったんですよ。
おお。。
大変だったけど、辛いとかではなくて。
色々な先生たちと話をするのも楽しかったし、ソフト部の顧問をしてたんですけど、それもめちゃくちゃ楽しかった。
当時は、先生と生徒の間でミスマッチが起こってるなと感じていました。
ミスマッチ?
小学校の先生みたいな高校教師
例えば学問でいうと、10点満点だとしたら、先生たちは9-10点を目指して指導してるんだけど、生徒たちはそもそも3点のところにいるみたいな。
前提条件が違うから、ずっとかみ合ってない感じ。
お互いに求めてることが違うから、かみ合わないわけですね。
その時に、小学校の先生みたいな高校の先生がいたらいいんじゃないか!?って思ったんです。
というと?
生徒に合わせて、一人ひとりの個性を伸ばすみたいな。
小学校の先生って、『夢なんかかなわないよ』って絶対言わないんですよ。
なるほど!
その視点、めっちゃ面白いです!
ただ、周りの先生たちと山下さんは、生徒に対する関わり方が違ってくるわけですよね?
先生たちから何か言われなかったですか?
「あなたは島にいるから、その考え方で通用するんだよ」って言われましたね。
きついなぁ。。
ただ、私としてはこの考え方や思いって、島とか本土とか関係なくどこに行っても通用するんじゃないかなって思って。
奄美高校の後、大島北高校で期限付き教諭をしている時に、鹿児島県高校教諭の採用試験に合格したんです。
そこで「鹿児島県本土の高校に行かせてください」ってお願いして、鹿屋農業高校で勤務することになりました。
高校教師としての働き方
家庭科で何を教えるか
考え方が島以外でも通用するか試すために、鹿児島県本土の高校を希望したわけですね。
鹿屋農業高校での勤務を経て、今は出水工業高校で働いてるんですよね?
そうです。
最初は出水高校と出水工業高校の兼務だったんです。
家庭科って授業数が少ないから。
失礼な話ですけど、自分が高校生のころを振り返ると、家庭科をがっつり勉強した記憶ないですね。。
普通科の高校は家庭科のコマ数が少ないからね。笑
その頃、家庭科で教えることって、衣食住だけじゃなくて、生き方とか自分で選択する方法だよなって思ったんですよ。
そのマインドはめちゃくちゃ面白いですね!
で、もっと生徒たちと関わりたいし、工業高校って職と直結してる学校だから、なおさら学級の担任をしたいと思ったんです。
大学に行く子たちは、大学で将来について考える時間があるけど、就職する子たちは高校を卒業するまでに、自分がどう生きたいのか、選択できるようにならないといけないですもんね。
やりたいことと葛藤
そうなの!
でも、当時は学校から「女性で家庭科の山下さんには担任をさせられない」って言われて。
女性であること+家庭科(工業以外)であることがダメだったみたい。
おお。。
時代が50年前で止まってる感じですね。。
当時ね!
あくまで当時の話ですよ!笑
ただ、もっと学校を盛り上げたいし、なんとかならないかなってずっと考えてて。
なかなか思うようにいかなくて、先生を辞めたくなった時期もあったんです。
組織内で戦ってると、辞めたくなる時期ありますよね。。
そんな時に妹の結婚式があって。
妹の旦那のお母さんに、相談してみたんです。
そのお母さんは臨床心理士をされてる方で、「臨床心理を学んで、そっちの面から子供達をサポートしたら?」って言われて。
なるほど。
ただ、私としてはカウンセリングも好きだけど、コーチングも好きなんですよ。
生徒の話を「そうだねそうだね」って聞くだけじゃなくて、「じゃあどうしたらいいかな?どうすれば夢ってかなうかな?」って一緒に考えるのが好きで。
今までの話を聞いてる限り、そんな感じですよね。
キャリアコンサルタント×高校教員
その時に自分の中で、キャリアコンサルタントなんじゃないか?って思って。
そこから、キャリアコンサルタントの勉強を始めるんです。
キャリアコンサルタント!
聞いたことあります!
以前、ALT【外国語指導助手】で一緒だった方から、アメリカのキャリア教育について聞いたことがあって。
アメリカの高校生は、キャリアコンサルタントの所に行って進路相談するんだって。
キャリアや進路相談のプロであるキャリアコンサルタントが、学校ごとに配置されていて。
なるほど!!
日本の場合は、進路相談って学級担任がすることが多いけど、教科についてはプロでも、キャリアについてはプロじゃないですからね。
たしかに。。
日本の場合、先生一人に色々なことを背負わせすぎてしまっている気がしますね。
学校の先生も、万能なわけじゃないから。
その話を聞くと、キャリアコンサルタントと高校教員って、相性が良さそうな気がしてきました!
良いと思います!
キャリアコンサルタントの資格を取るためには、学校で勉強する必要があってですね。
30万円を父親から借りて、学校に通って、なんとか合格して!
キャリアコンサルタントに合格したことで、学級担任をさせてもらえるようになったんです!
働きながら資格取ってまで学級担任するって、すごい努力と熱量ですよね。。
勉強する期間、めちゃくちゃ大変だったんじゃないですか?
当時、部活の顧問もしてたので、土日も部活があったり、大会に行かないと行けなかったりして。。
ただ、そこはありがたいことに、先生方と優秀な生徒たちがサポートをしてくれたんですよ!
たくさんのサポートをもらえて、めちゃくちゃ感謝してます。
生徒の内面からやりたいことを引き出す
ずっとやりたかった学級担任になってみて、どうでした?
学級担任は念願だったし、やっぱりやってみて楽しかったですね。
鹿屋農業高校にいた時も、学級担任をさせてもらってたんですけど、キャリアコンサルタントの資格を取ったことで、明らかに自分の考え方が変わったなと感じていて。
どの辺が変わったなと感じますか?
答えは生徒自身の内側にあるってことが分かったと言いますか。
キャリアコンサルタントの考え方として、その人がどうなりたいかをその人自身の内側から引き出すっていうのが大きいんですね。
その部分を理解した上で生徒と接することができていることが、以前と変わったなと感じる所です。
そうやって生徒と向き合ってくれる先生が、僕の高校生の頃居たかなぁ。。
生徒一人ひとりとじっくり向き合うわけですよね?
それって先生側がめちゃくちゃ体力使いません?
体力使うけど、好きなんですよね。
ただ、生徒からは嫌われますよ。笑
嫌われるんですか!?
だって答え教えないからね。笑
「こうしなさい!」って言わずに、「え、なんでそう思うの?」って私は言うから。
なるほど。笑
「ゆうか、マジうっせーわ」って言われます。笑
でも、いざとなったら生徒たちは私を助けてくれるし、みんな良い子たちばっかりなんですよ。
生徒たちが支えてくれるから、未だに教師として頑張れてる。
まとめー前編ー
働き方改革が叫ばれる中で、特に多忙だと言われる教育現場。
生徒との向き合い方や、キャリアコンサルタントを取得して学級担任になる話を聞くと、雑務に追われながらも本質をしっかりつかんで働いている山下さんの様子が浮き彫りになります。
こんな先生に自分の子を預けたいなぁと思わせてくれるインタビューでした。
ということで、前編では、先生としてのキャリアをどう歩んできたのかについて、お話を伺いました。
中編では、より具体的な高校教諭としての話や、組織内でもがいている様子を中心にお届けします。
では、また次回お会いしましょう!
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