最前線で働く公務員が、日々何を思い、どう働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島県庁くらし共生協働課の課長、上原順郎さんです。
後編では、年長者と若者の関係性についての話や、家族愛についてお話を伺います。
上原さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど、必死に働いてる公務員の姿を少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
一個人としての人物像
鹿児島愛の源は親の教育だった

今までお話を伺った中で、上原さんの鹿児島愛の強さをめちゃくちゃ感じているのですが、なぜそこまで鹿児島に対して思いを持つようになったんでしょう?

たしかにね。
なんでなのかずっと考えてたんだけど、最後辿り着いたのは《親の教育》だったな。

親の教育というと?

うちの親父は、小さいころの自分に『鹿児島はすごいんだぞ』ってずっと言い続けてたんだよね。
「鹿児島は日本を創ったとこやったっでよ」って。

なかなかの英才教育ですね。笑

そうだね。笑
でも、よく考えると、田舎の嫌さで地元に戻ってこない人も多いじゃない?
「あーやっとこれで解放された。自由になれる。」って言ってさ。

たしかに。
僕の周りでも、結構な割合で県外に出ていきました。
戻りたくなる場所とは

なぜその人たちは帰って来たくないのかを考えると、身近な人、例えば親や友人、地域のおじさん達が、「ここは何もないもんな…」っていつも愚痴しか言わなかったら、そんな場所に帰りたいとは思わないじゃない?

小さい頃から言われ続けると、『ここは何もないつまらない場所なんだ』って刷り込まれていきますもんね。

自分みたいに、親が「鹿児島ってすげーんだぞ」って言ってたり、地域の中に良くしてくれるおじちゃんが居たり、地域の行事で褒められたり、育った場所で楽しい思い出が積み重なると、そりゃ帰りたくなるよなって。

たしかに。
まさにその体験を、上原さん自身がしてきたわけですね。
帰りたい場所であり続けること

コロナ以降、生活様式も価値観も変わりつつあるんだけど、日々の愛情をもった教育が実はめちゃくちゃ大事なんだなって、つくづく感じるよ。
親も地域も、どれだけ愛情をもって子供たちに接することができるか。
それが大事なんじゃないかな。

なるほど。心にしみます。。

いつ帰ってくるか分からないし、帰って来ずに、地元を思い続けるのかもしれない。
だけど、いずれにしても、『帰りたい』と思える土地じゃないと帰ってこない。
住みたいと思う街じゃないと、住もうとは思わない。

間違いないですね。
「移住したら補助金が出て、家賃もめちゃくちゃ安くなりますよ!!」ってどれだけ言われても、そこに住んでる人たちが楽しくなさそうに暮らしてたら、絶対住みたくないですもんね。
楽しそうに暮らすことの重要性

人は『正しさ』では動かないよね。
理屈ももちろん大事だけど、最後に人が動くのは心で、心にどう働きかけるか。
そして、働きかけられた方も、受け入れる心を持ち合わせていることが大事だと思う。

感じ取れるかどうかですね。

愛を返すためには、愛を受けてないと返し方が分からないから。
愛を受けた経験があることで、人に愛を与えることができるんじゃないかなぁ。
そこをどう醸成するかだと思うよ。

めちゃくちゃ刺さりました…
上原さんみたいに、「鹿児島はすごいんだぞ!」って父ちゃんから言わるのもそうだけど、単純に父ちゃんと母ちゃんが仲良く楽しそうに暮らしてるみたいな、幸せな日常を子供たちに見せ続けることも大事なんですよね!
親の様子を子供たちは敏感に感じ取ってる。
楽しそうに暮らしていれば、その様子を子供たちは見てて、その積み重ね自体が鹿児島への思いにつながってきそう!

まさにそうだよね。
年長者と若者の関係性
良い感性を持ってる人に年長者が理解を示せるか

地域での話が少し出ましたが、地域でのコミュニティや地域づくりみたいなものが盛んになる中で、若者と年長者がうまく融合して進んでる地域と、そうではない地域とあるような印象を受けています。
上原さんは様々な地域を見てきてると思いますが、どう考えてますか?

偉そうなことはあんまり言えないんだけどね。
いろいろ見させてもらう中で、うまくいってる地域は、地域の年長者たちが若手の人たちに理解を示してる傾向があると思うなぁ。

なるほど。

良い感性をもって良い働きをしてる人に対し、地域の『強い人』や年長者が、どれだけ理解を示せるか。
自由に動けるような環境を整えられるか。
そこに尽きるんじゃないかなぁ。
若い人が生き生きと動くために

能力もやる気もある人が、組織や地域でハネていかないのは、周囲に理解者がいないことも要因だったりしますもんね。

もちろんその人の人柄も大事だけど、理解者が地域の中にいるかどうかは、めっちゃ大事だよね。

めちゃくちゃ大事です!
99人から何してんのって言われても、信頼できる1人の年長者が理解してくれて味方になってくれるだけで、踏ん張れたりするんですよ。。

地域も職場も一緒だと思う。
理解できないことに対して、なんでそんなことするのよ!って怒るのは簡単。
そこをグッと飲み込んで泳がせる度量が、年長者にあるかどうか。
そこが大切だと思うよ。
果たして自分ができているのか、かなり疑問だけど。。

なるほど。
今現場で動いてる人の感性が大事

とはいえ、若い人たちが言うことに対して、100%自分の中にストンと落ちてこないこともたくさんあるのよ。
言ってしまうとジェネレーションギャップ。

(全然そんな風に見えない…)

自分たちが若い頃に染み付いた考え方と、今現在必要とされる考え方は違うからさ。

たしかに。。
24時間働けませんもん。笑

笑笑
だけど、年長者は、次世代を担う人たちの感覚や意見を大切にする心構えを持ってた方がいいかなと思う。
たとえ自分の感覚と違ったことを言われたとしてもね。
年長者が謙虚でいるということ

森満くんもそうだと思うけど、今の若い子には理解できない年長者がたくさん居るだろうと思う。

たくさん居ますね。

それは年長者側からしてもそうなんだよ。
なんであいつはこうなんだろうって。

たしかに…

それはしょーがないのよ。
そもそも時代が違うわけだから。
その時に、年長者は、自分の考え方や価値観を伝えるだけじゃなくて、自分から歩み寄らないと上手くいかないと思ってる。

ありがたい。なかなか若手側からは、歩み寄れない年頃なんですよ。。

僕も若い頃、「なんでなんですか!!」みたいなこと、上司に言ってたよ。笑

やっぱり!笑

もちろん、年長者の考えや意見に耳を傾けることも大切。
お互いに歩み寄らないと。
最近、歳をとればとるほど謙虚でいたいと思ってる。
難しいけど。笑

その考え方で僕も生きていきます。

偉そうなことばっか言ってるけど、普段の自分は全然出来てないからね。
出来てないからこそ、一人で振り返った時に『謙虚でいよう』みたいな部分は意識するようにしてる。
せめて意識だけでもしとかないとっていうね。笑
おまけー夫婦愛のカタチについてー
人生の縦軸を考える

最後に少し踏み込んで、夫婦の関係性について伺いたいのですが!
それだけ仕事だったり地域だったりにグワッと熱量を注ぎ込むと、家族との関係性って崩れません?

仕事がめちゃくちゃ忙しかった時は、子供に会う時間もなく働いてたけど、それでも家族に対する愛情は人生の根幹だよね。
結局最後は家族だよ。
子供に対する愛情、夫婦間の愛情はもちろん、親に対する愛情も忘れないようにしたいなぁ。

親に対する愛情というと?

自分の人生の縦軸を考えた時に、やっぱり親の存在は外せないよね。
親が居たからこの世に生を受け、親が学費を出してくれたから学校にも行けた。

たしかに。
夫婦や子供に対する愛情は意識するけど、親に対する愛情は忘れてしまいがちかもしれません。
変容する夫婦愛のカタチ

夫婦の関係性でいうと、愛のカタチっていろんなフェーズで変わるのよ。

???

結婚してすぐの二人だけの時。
子どもが産まれた時。
子どもが巣立った時。
親を介護する時。
その時々で、愛のカタチがあるんだよね。

わかったような、わからないような…
困難に立ち向かう戦友になる

子どもが産まれると、子どもが家族の中心になるじゃない?

僕は今まさにそのフェーズです。

子育てすると、時に一人では乗り越えられない苦しみに襲われることがある。
この苦しみを、夫婦二人で力を合わせて乗り越えていく。
すると、もはや男女間の愛を超えた、戦友になる。

なるほど!

子育てが終わると、親の面倒をみるフェーズになる。

たしかに。
今、僕の両親がそのフェーズです。

自分の親が入院した時に、妻が看病をしてくれるわけよ。
自分の親を看病してくれる妻を見て、また子育ての時とは違った愛情が芽生えてくる。

なるほど。
最後にめちゃくちゃ深い話をありがとうございます。
(ぶっちゃけ、本当のところどう思ってるのか、奥様に聴いてみたい感情をグッと飲み込んで)今日はありがとうございました!

ありがとうございました!
まとめー後編ー
良い感性をもって良い働きをしてる人に対し、地域の『強い人』や年長者が、どれだけ理解を示せるか。
自由に動けるような環境を整えられるかどうか。
そこに尽きるんじゃないかなぁ。
課長とい役職についてる上原さん側から発せられる言葉だからこそ、深みがある。
上手くいってる地域や活き活きと働いてる人の近くには、必ず理解者がいるし、支えてくれる人がいる。
言い換えると、どれだけ能力が高くて意欲があっても、周囲の環境次第で伸び悩んでしまう。
年長者でなくても、謙虚でいることは忘れちゃいけないなと、自分自身を見つめなおす機会となりました。
ということで、前編中編後編の三部作でお届けしましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
また次回!
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