最前線で働く公務員が、日々何を思い、働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島市役所都市計画課で働く、後藤光佑さんです。
公務員として働く上で大切にしている思いや、仕事で取り組む団地活性化の話についてお話を伺いました。
後藤さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど、必死に働いてる公務員の姿を少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
後藤光佑さんのプロフィール
1984年生まれ。
鹿児島市本名町出身。
高校生までを鹿児島で過ごし、長崎大学を経て、鹿児島市役所へ土木技師として入庁。
高校生の頃からまちづくりに興味を持ち、公務員として都市計画にかかわりたいという思いを持っていた。
その思いを実現させ、今、都市計画課で活躍中。
職務以外にも、リノベーションスクールに自腹で参加したり、空き家を活用したコミュニティスペース『バカンス』で朝コーヒーを淹れていた時期もあったりと、動き回る。
最近では、鹿児島市の事業『Play City!Days』の桜島チームとして街の魅力を発信している。
Twitter:@goto_kosuke_tw
Facebook:https://www.facebook.com/goto.kosuke/
公務員としての顔
手さぐりで進める団地活性化の事業
よろしくお願いします!
早速ですが、職務についてお話を伺いたくて。
現在、鹿児島市の都市計画課で働いていますけど、どんな仕事を?
去年まではウォーターフロント開発について国や県と協議をしていて、今年は新しい都市マスタープランの策定に向けて、大学生とのワークショップとかを担当してるよ。
最近、団地活性化の事業にも関わり始めたと聞きましたけど、そもそもなぜ団地を活性化する必要があるんですけ?
いまいちピンときてないんですよね。。
いわゆるニュータウンなどの住宅団地って、高度経済成長期にたくさん開発されて、鹿児島市の人口の約1/4が住んでいるんだ。
子育て世代を中心に住み始めているから、世代の偏りが大きくて、その時若かった人たちが高齢化しているんだよね。
団地で育った子供たちは、大学進学や社会人になるとともに、団地以外の場所へ巣立っていきますもんね。
そうそう。
若い人たちが巣立って行ったあと、団地に残った方々の生活はどうなるの?
ここの部分を今のうちに考えないといけない。
それが団地活性化をやる意義かな。
なるほど。
いわゆる団地と呼ばれる場所って、生活環境はどうなんですか?
たくさんの人が移り住んだからこそ、生活インフラはかなり充実してると思うんだ。
近くにスーパー、病院、学校があり、バスも通ってる。
バスを使えば中心市街地まですぐ出てこれる。
田舎出身の僕からすると、利便性は高いと感じるし、団地にあるスーパー、病院、学校って、団地以外の人も使う、その周辺の拠点になっているんだよね。
なるほど。
ただ、「団地を活性化しましょう!」って言われても、住んでる人からすると「どうやって活性化するの?」ってなりそうですが、その辺いかがですか?
人口減少社会という、まだ誰も経験したことのない時代に出てきた課題だから、正直言うと僕らも手探りなんだよね。
ただ、鹿児島市の未来を考える上で大切なことだと思うから、地域の人たちと一緒に、できることを少しずつでもしていきたいと思ってるんだ。
誰も経験したことがない世界においては、手探りでやりながら軌道修正する方法が、もはや正解な気がします。
鹿児島市役所として何ができるか
行政の仕事って、カッチリした計画を作って、それ通りに実行していくみたいな、計画ありきのやつ多いじゃないですか?
そんな中で、手探りで進めているっていうお話がありましたけど、どんな感じで進めてるんですか?
鹿児島市として何ができるのかを考える時に、とにかく住民の方が何を必要としていて、何が課題なのか。
それがわからないと、何も始まらないのよね。
役所の想像力と現場のリアルが乖離することって、結構ありますし、乖離してたら致命傷ですもんね。
そうそう。
だから、たくさんある団地の中で、特徴の異なる3つの団地を選んで、平成30年度から住民の方々とワークショップをしてきたんだよね。
そのワークショップの中で出てきた課題や、住民の方が必要としてることを見せてもらいながら、同時並行で役所の内部でも『役所に何ができるのか』考えた。
やりながら考えるやつ!
鹿児島市としての関わり方を模索してたわけですね。
都市計画課だけで考えるんじゃなく、他の部署、例えば産業局や健康福祉局とも話をしながら、鹿児島市としてできることを探っていったんだよ。
部署を横断して、全庁的に何ができるか、模索したわけですね。
すべての団地に当てはまる一律な計画なんて無い
ただ、ワークショップを進める中で、団地ごとに特徴が全然違うことがわかったんだよね。
3つの団地でさえ全然違うのであれば、鹿児島市内にある全ての団地に当てはまる一律な計画なんて作れないし、一律なサポートもできない。
計画をつくる場合って、平均点を探して、一律にあてはめようとしがちですもんね。
そうそう。
結局わかったことは、地域のことは地域の人が一番分かってるし、地域としての魅力づくりは地域の人たちにしかできないってこと。
地域の中で頑張ろうとする人たちのサポートができないか、そう考えたんだよ。
最高です。
役所の最大の役割って、根回しとかサポートみたいな伴走の部分だと思ってるので、頑張ってる人や地域を応援する立ち位置に帰着したのは、素晴らしいと思います。
そうだね。
今、各地域の仲間探しをしているところなんだけど、令和3年度から「なにかやってみたい!」っていう想いのある人がいる団地で、《自分たちのまちの将来を考えるワークショップ》を開催したいと思ってるんだよね。
なるほど!
地域の将来については、コミュニティ協議会やまちづくり協議会の方々も考えていて、取り組んでいるんだけれど、どこの協議会も「メンバーの中に若い人がいない」ってことで悩んでいて。
そうかも。
僕も、住んでいる地域のコミュニティ協議会の活動に関わったことないです。。
そうだよね。
だから、できれば20~40代ぐらいの若い世代を中心にワークショップを開催しながら、「小さなこと&できることからやってみよう!」っていう『まち想い』の仲間を各団地に増やしていきたいなって思ってる。
めちゃくちゃ良い!
まさに市民協働。
そのワークショップに参加してくれた人たちが、後々コミュニティ協議会とかと連携できたら最高だよね。
最高ですね。。
団地活性化の計画は、令和2年度末に完成でしたっけ?
そうだよ。
あ!
今までの話は、僕じゃなくて、他の担当の人が頑張ってやってきた話で。
僕自身は、2ヶ月前から担当の一人になったばっかりだから、全部他の担当者の頑張りの成果なのよ。笑
なるほど。笑
今までのワークショップで見えてきた成果って、すごく大きいですよね。
ただ、一人ひとりが、どう生きていくかみたいな根源的な欲求と向き合う必要があるなぁと感じてて。
たしかに。
地域で何をしたいかって、突き詰めて考えると『どう生きたいか』みたいな話だもんね。
そうそう!
だからこそ、本気でやるなら、全庁的に部署横断して伴走する必要がありそう。
団地活性化だけで1つのチームを作った方がいいですよね。
土木技師だけど人と関わる仕事が好き
お話を聴いてて、今の働き方って《THE土木技師》みたいな働き方とは違った働き方に見えます。
率直に、どう感じてますか?
楽しいよ。
人と関わることが好きだからね。
でも、難しいのは、団地活性化の事業にしても、担当者次第で変わる感じにしたくないなぁと思ってて。
というと?
自分は人と関わることが好きだから、どんどん地域に入り込んでいくことを苦に思わないけど、今後僕がずっと都市計画課にいるわけではない。
次に僕と全然違う性質の人がきたら、担当者も地域住民も辛いじゃない?
担当者「なんでこんな仕事じゃないことまでやらないといけないの?」
住民「前の担当の人は土日のイベントに来てくれたのに!」
みたいなさ。
たしかに、それはみんな不幸ですよね。
人に頼りすぎず仕組みで解決する
だから、仕組みで解決しないといけない。
職員が頑張るのは最初だけでよくて、お金をかけすぎずに、かつ職員に頼りすぎずに、地域の人たちが継続していける仕組みを模索したい。
役所の担当者は変わるけど、地域住民はずっとそこで生きていくわけですもんね。
仕組みをつくるのって、めっちゃ大変なんだけどね。
自分が音頭をとって、地域に入っていく方が全然楽しいし、ラクだよ。
でも仕組みづくりをやらなくちゃいけない。
後任の職員と地域の人が苦しまない仕組みを模索していこうと思ってる。
最高です。
実践を通してどんどん学ぶ
都市計画課ではやりたいことが出来てますか?
そうだね。
ただ、上手に出来ないことも多いから、全て勉強だと思ってる。
例えばワークショップひとつとっても、今まで参加することはあっても主催することはなかったわけで。
確かに、普通に生活してたら、ワークショップって参加するものですもんね。
わからないことだらけだよ。
仕切ることも引き出すことも、まだまだ自分は下手くそだからさ。
これまでに参加してきたワークショップでのやり方を真似しながら、自分なりに工夫してはいるんだけど、なかなか難しいね。笑
素直に下手くそだって言えるところが、後藤さんの大きな強みだと思います。
そんなことないよ。笑
例えば、《住んでいる地域で何をしたら良いか考えてください!》って投げかけるよりも、《10年後、住んでいる地域がどんな風に新聞記事で取り上げられたら嬉しいですか?》って聞いてみる方が、参加する人は楽しめると思うんだよね。
おもしろい!
実践を通して、勉強しながら、成長してる途中なの。
だから、今の仕事は楽しいけど、全然得意じゃないし、下手くそなんだよね。
やりたいことはプライベートで思いっきりやる
今取り組んでいる仕事の話をたくさん聞いてきましたが、今後行きたい部署ってあります?
うーん。。
建設局だったら、どこでもいいかな。笑
おお。。
建設局から出たい僕には無い発想。笑
自分は土木技師だから、いずれ管理職になったら、建設局全体を見ないといけないじゃない?
なるほど。
建設局って、都市計画もあれば、道路、河川、住宅、建築みたいに幅広いから、全体がやってることがわからないといけないなぁと思っていて。
たしかに!
そのためには、色々な部署に行って、色々な仕事を経験してた方がいいなぁというか。
まぁ、これからは、建設局以外の他の部署のことも、分かっておかないといけない時代になってきたけどね。
その視点はめちゃくちゃ面白いというか、良い意味で行政マンらしい視点だなぁと感じました。
仕事にやりがいを求め続けるよりは、仕事以外のプライベートでやりたいことは思いっきりやればいいかなって。
それ、少しわかります。
今は幸運にも、仕事として団地とか地域コミュニティっていうテーマで、住民の方々とつながる機会を持てた。
たとえ団地活性化の仕事から離れたとしても、ここで出会った方々とプライベートで一緒にまちづくりに関わっていければ、それでいいのかなって思ってるよ。
まとめー前編ー
後任の職員と地域の人が苦しまない仕組みを模索していこうと思ってる
この言葉に、組織人としての能力の高さが垣間見えます。
やりたいことをやりたいようにやる!っていう勢いだけじゃなく、異動があるという組織の仕組みを考慮し、誰も不幸にならない方法を模索する。
やりたいことはプライベートで思いっきり楽しむ。
行政マンとしての冷静さと、パーソナリティとしてのポジティブさを兼ね備えてるところが、後藤さんの魅力だなぁと、話を聞いていて感じました。
前編では、公務員として働く上で大切にしている思いや、仕事で取り組む団地活性化の話をお届けしました。
中編では、役所内で事業の立ち上げにかかわった話や、公務員としてどんな仕事にかかわってきたのか等についてお届けしますので、お楽しみに!
では、また次回!
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