【中編】若い頃、地位をつかみ取りに行った理由【竹ノ下武宏|鹿児島市役所船舶局】

公務員図鑑

最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』

今回のゲストは、鹿児島市役所で船舶運航課長として働く竹ノ下武宏【Takenoshita Takehiro】さんです。

この記事は6分で読めます^^

中編では若手時代のチャレンジや、戦略的に地位をつかみに行った理由について、お話を伺いました。

竹ノ下さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。

<聞き手=押川蓮斗(さくらじま地域おこし協力隊)、山下彰太(株式会社ecommit広報ブランディングマネージャー)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>

公務員としての顔

インターネットがくると思った平成13年

森満
森満

火の島太鼓の活動以外にも、印象深い経験やエピソードがあれば教えてください。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうだなぁ。

桜島が鹿児島市と合併する前の平成13年頃、『これからはインターネットの時代だ!』って思った時期があって。笑

森満
森満

ほうほう!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

当時はまだISDNっていう回線が入るか入らないかみたいな状況だったんだけど、『インターネットは世の中を変える』って、本気で思ったのよ。

森満
森満

そう思ったきっかけがありました?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

ソフトバンクの孫正義さん、いるじゃない?

当時、孫さんの本を読んでたら、ワクワクしてさ。

『これからはインターネットがすごいことになるぞ』って思ったよね。

押川さん
押川さん

なるほど。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

で、火の島太鼓をしてない役場職員に声をかけてさ。

『インターネットのためのサービスをつくっが!』って言って。

森満
森満

インターネットのためのサービス?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

当時、スマホもなかったから、インターネットを使うためにはパソコンが必要で。

でも住民の中には「どんなパソコンを買えばいいのか分からない。。」とか、「インターネットを使いたいんだけどどうやって契約すればいいのか分からない。。」っていう人がたくさんいたんだよ。

そんな人たちをサポートしたいと思って、NPO法人ITサービスバンク桜島っていう団体を立ち上げたわけ。

森満
森満

NPO法人立ち上げたんですか!?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

なぜNPO法人をつくったかって言うと、当時は桜島にNPO法人がなかったのよ。

だから、『第一号をつくりたい!』って思ってさ。笑

押川さん
押川さん

すごいバイタリティですね。笑

森満
森満

そのNPO法人ではどんな活動を?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

当時は15人ぐらいメンバーがいたんだけど、桜島フェリーターミナルの一室を借りて、パソコン相談室みたいなことをやってたよ。

職員同士で勉強会なんかもしながらね。

(旧)桜島フェリーターミナル この一室を借りてNPO法人の活動を行っていた 【出典:Wikipedia「桜島フェリー」
森満
森満

めっちゃ先進的。。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

昔のインターネットって、よく接続が止まったりしてたでしょ?

押川さん
押川さん

してたかも!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

「パソコンを買ったけど、インターネットがとまる」みたいな相談の電話がよくかかってきてさ。

電話がかかってきたら、その人の家に走って行って。笑

森満
森満

まさに住民サービスですよね。

住民の困りごとを解決してる。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

当時、僕は桜島町役場の企画課だったんだけど、『桜島でパソコンを絶対に流行らせよう!』と思っていて。

『町民がパソコンを買ったら1/2補助をする』っていう制度をつくったのよ。

押川さん
押川さん

え!?

タケヒロさんが!?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうそう。笑

町長に「絶対に町民のためになるから、桜島でインターネットを普及しましょう!」ってプレゼンしたら、理解してくれてさ。

森満
森満

そこでトップにプレゼンしちゃうバイタリティが、タケヒロさんのすごさですよね。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

補助金を配って終わりじゃなくて、補助した人からはメールアドレスをもらって、役場の情報をその人に伝える

役場がその人から情報をもらう。

そういうシステムにしたんだよ。

森満
森満

それって、平成13-14年の話ですよね?

めちゃくちゃ進んでますよね…‼

(現在)今の桜島フェリーターミナル。きれいになったわ。【出典:Wikipedia「桜島フェリー」

空気と人の心は読めないといけない

森満
森満

少し話が変わるかもなんですけど、役所で働いてると『失敗=こわいもの』っていう感覚が強くなるなぁって感じていて。

僕も含めてなんですけど、『やれたらいいけど、だれかやってくれないかなぁ』で終わることが多いじゃないですか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

うんうん。

森満
森満

ただ、タケヒロさんの場合は、やりたいことに対してどんどんチャレンジしていて。

町長にプレゼンして事業化したり、自分で団体を立ち上げたり。

どんどんチャレンジしていくその感じって、昔からなんですか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

うーん、そうだね。

なんていうか、自分の中の『これは絶対に間違いない!』っていう感覚を信じてるんだよね。

森満
森満

ほうほう。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

だからこそ、世の中の空気は読めないとダメ。

空気と人の心は読めないといけないって、いつも考えるようにしてるよ。

楽しかったPTA会長の経験

押川さん
押川さん

他にも、業務外の活動で印象深い思い出がありますか?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

他でいうと、子どもが中学、高校生の時にPTA会長をしたことかなぁ。

押川さん
押川さん

おお!

なぜPTA会長に?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

僕も打診された時に、「なぜ僕なんですか?」って教頭先生に聴いてみたんだよね。

僕意外にもPTA会長にふさわしい人はたくさんいたからさ。

押川さん
押川さん

うんうん。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そしたら、「よく学校に来てくれてるので!そんな竹ノ下さんに是非やってほしい!」って言われてさ。

役所って土日休みだから、自由に動きやすいでしょ?

だから、週末はいつも子どもの部活を見るために、学校に行ってたのよ。笑

押川さん
押川さん

学校にいつも居る献身的な人だって思われてたんですね。笑

若い時は役職がほしかった

竹ノ下さん
竹ノ下さん

PTA会長をやるぐらいの年齢になると、自分がやりたいと思うような情報や誘いが、周りから自分のところに入ってくるようになってきて。

一番最初に火の島太鼓のリーダーをしてた時は、自分からリーダーのポジションをつかみ取りに行ってたんだよね。

森満
森満

それはなぜでしょう?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

自分のやりたいことをペーペーの職員である僕が意見したところで、『何を若いもんが言ってるんだ』って言われるじゃない?

森満
森満

今まさに言われてます。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

笑笑

でも、若手職員と全く同じことを立場ある人が話せば、年上の人であっても耳を傾けてくれるわけじゃん。

だから、若い頃はとにかく役職がほしかった

ほしかったから、自分でつかみ取りに行ったよね。

押川さん
押川さん

戦略的に役職をつかみ取ったわけですね…‼

竹ノ下さん
竹ノ下さん

それもある意味、自己満足なんだけどね。

まぁ、リーダーポストをつかみ取るって、自分のやりたいことをやるための近道であることには違いないよ。

押川さん
押川さん

下から突き上げる正攻法だけでは、動かないことがたくさんありますもん。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうそう。

でもだんだんと経験を積み重ねるうちに、自分から欲してないのに、周りの人から「やってくれんけ?」って頼まれることが増えてきて。

押川さん
押川さん

はぁー!

竹ノ下さん
竹ノ下さん

今までの自分の経験が、そうさせてくれてるんだと思うけどね。

人から頼られることは、嫌いじゃないからさ。

この取材みたいに、前向きなものであれば「よかど!」って言って、とりあえず受けてみるようにしてるよ。笑

押川さん
押川さん

最高です。。

このインタビュー中に急遽始まった山下さんの企画提案にも、しっかり耳を傾けるタケヒロさん。終始「よかねぇ!やれるんじゃない!?」と共感してくれてました。笑

一個人としての顔

地の縁と志の縁

竹ノ下さん
竹ノ下さん

なんで前向きな提案を受け入れるようにしてるかって、今からの時代はさ、『志の縁』が大事だと思ってるからなんだよ。

森満
森満

『志の縁』?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

昔は『地の縁』が大事で、そこに住んでる人がその土地、その地域を守るっていうことが当然だった。

行動範囲も、今ほど広範囲ではなかった。

森満
森満

うんうん。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

でも、これだけ人が減って社会も大きく変わった今、昔と同じように『地の縁』だけに頼ってたらダメで。

これだけインターネットでどこにいても繋がれるからこそ、どこの土地に居ようとも、同じような想いを持った人と仲間になれるじゃない?

森満
森満

たしかに。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

地域づくりの活動にしてもさ、そこの土地に身体が存在してなくても、志が同じ人同士で活動した方が絶対に良いわけ。

逆に、『志の縁』を大切にしなければ、地域なんて活性化しないと思ってる。

押川さん
押川さん

なるほど…‼

竹ノ下さん
竹ノ下さん

志の同じ人同士が組んで、楽しそうに活動をしていれば、それが魅力となって自然と色んな人が繋がる時代になってるでしょ。

逆に、そこをどうやって地域に引き込むか。

それがこれからの課題だなって思ってるよ。

見てる時間軸の長さ

森満
森満

タケヒロさんと話をしてると、見えてる時間軸が長いんだなって感じます。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

時間軸?

森満
森満

役所で新しい事業をやろうとすると、どうしても最短での成果を求められるじゃないですか。

『この新規事業をやることで、次の年にどんな成果があるの?』みたいな。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうだね。

森満
森満

でも、すぐすぐ効果が出ないこともたくさんあると思っていて。

例えば、ご近所同士での会話が増えるとか、住民の笑顔の量が増えるとか。

来年再来年っていう時間軸だけじゃなくて、もっと長いスパンでじわじわ浸透していくこともたくさんあるんじゃないかなって。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

たしかに。

森満
森満

人材育成にしても、すぐに結果にはつながらないけど、きっと10年後、この経験をした子が地域にたくさんのものを還元してくれるみたいな。

長い時間軸で考える』っていう部分をタケヒロさんはナチュラルに実現してるから、共感する話ばかりなんだなって感じました。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

ありがとう。笑

やったことがあるかどうか

押川さん
押川さん

ちょっと悩みというか、相談なんですけど。

僕は地域おこし協力隊という立場で地域に入って活動をしてて。

役所を含めて色んな組織の人と対話をする中で、『きっぱり断られる言い方』をされることがちょこちょこあるんです。

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そうなんだね。

押川さん
押川さん

その人にも立場があるから、断ること自体は全然いいんですけど。

同じ『断る』という結果にしても、①『ダメです。』とだけ言われるのと、②『こういう理由で今回はダメなんだけど、内容は良いと思うので、応援してます!』って言われるのとでは、違うじゃないですか?

森満
森満

全然違うね。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そこで押川君に共感できないのって、やっぱりその人自身が地域で活動をしたことが無いからじゃないかなぁ。

押川さん
押川さん

というと?

竹ノ下さん
竹ノ下さん

地域づくりというか、鹿児島づくりを自分で経験したことがない人からすると、押川くんが言ってることがそもそも理解できないんだと思うよ。

押川さん
押川さん

なるほどなぁ。

共感してほしいとまでは言わないから、ちょっと寄り添ってくれるだけで、こっちの受け取り方が違うんだけどって、いつも思ってます。笑

竹ノ下さん
竹ノ下さん

そりゃ、地域で活動したことがなければ、地域住民が今どんなことに困ってるのか、分からないと思うよ。

というか、ここは東京都の港区じゃなくて、しょせん鹿児島なんだからさ。

『堅いことばかり言わずに語ればいいじゃん』って、僕なんかは思っちゃうけどね。笑

まとめー中編ー

自分の中の『これは絶対に間違いない!』っていう感覚を信じてる

これ☝って、思っててもなかなか行動に移せなくないですか?

やっぱり、『誰のために働くのか、どこを向いて仕事をするのか』っていう、タケヒロさんの軸がぶれないから、自身の感覚を信じることが出来てるんだと思う。

漫然と業務をやり過ごしがちな自分としては、背筋の伸びる瞬間でした。笑

ということで中編では、若手時代のチャレンジや、戦略的に地位をつかみに行った理由について、お話を伺いました。

後編では、課長職の働き方や、一番うれしいと感じる瞬間について、お話を伺いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ではまた次回、お会いしましょう!

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