【前編】リノベーションオブザイヤーの仕掛人が鹿児島市役所職員になっていた【泊和哉|鹿児島市魚類市場】

公務員図鑑

最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』

今回のゲストは、鹿児島市役所の魚類市場で働く泊和哉さんです。

この記事は6分で読めます^^

前編では、日本ガス時代の働き方や、鹿児島市役所に転職した経緯について、お話を伺いました。

泊さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど、必死に働いてる公務員の姿を少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。

<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>

泊さんのプロフィール

1983年生まれ。

鹿児島市出身。

鹿児島大学大学院 理工学研究科建築学専攻を経て、日本ガスへ総合職として入社。

建築をやりたい!と社長に直訴し、賃貸マンションの断熱リノベーション事業に着手。

リノべっが(株式会社大城)と組んだ賃貸マンションの断熱リノベ事業は、2019年のリノベーションオブザイヤー(日本一)に輝く。

断熱リノベ事業が終わった段階で、次の新しいことにチャレンジをしたいと考え、民間企業等職務経験者採用枠で鹿児島市役所へ入庁。

まさかの魚類市場へ配属されるも、日々奮闘中。

都市経営プロフェッショナルスクール卒業生(1期)。

公務員としての顔

魚類市場での働き方

森満
森満

よろしくお願いします!

全然インタビュー関係ないんですけど、魚類市場で昼ごはん食べるのが夢だったので、すごくうれしい!笑

魚類市場の敷地内にある『新港食堂』
泊さん
泊さん

よろしくお願いします!

魚類市場にある食堂って『市場食堂』が有名だけど、隣接してる『新港食堂』『柿の実』も美味しくて。

どちらもおすすめです。笑

アジフライ定食が抜群。アジフライの厚さが尋常じゃない。
森満
森満

最高の情報をありがとうございます。笑

魚類市場で働くことを想像した時に、とにかく朝が早いっていうイメージなんですけど、実際どんな感じですか?

泊さん
泊さん

あー、でも毎日早いわけじゃなくて。

週に1~2回、朝5時から勤務することがあるけど、あとは本庁と同じで8:30から17:15までの勤務だよ。

森満
森満

それは意外!

朝3時ぐらいからの勤務なのかと思ってました。

泊さん
泊さん

年に数回、スーパー早出って呼ばれる勤務もあって。

朝の1:30から勤務開始っていうこともあるけどね。

森満
森満

朝の1:30って、それ完全に夜ですよね。笑

そもそも魚類市場で市役所職員として働いてるイメージが沸かないんですけど、どんな仕事をされてるんですか?

泊さん
泊さん

魚類市場という施設の不動産管理会社だと思ってもらえればいいかも。

森満
森満

不動産管理会社?

泊さん
泊さん

建物の不具合があったら業者に頼んで修繕したり、電気がつかないって言われたら電球変えたり、長靴履いて排水溝のつまりをとったり。

森満
森満

なるほど!

建物の維持管理的な役割ですね。

鹿児島市城南町にある魚類市場

コロナ関係の調整も仕事

泊さん
泊さん

そうそう。

何でも屋です。笑

ハード的な仕事だけじゃなくて、市場での取引や衛生管理に関する指導・監督もするし、市場の活性化イベントの企画や鹿児島の魚をアジア圏へ輸出するプロジェクトなどソフト的な仕事もあるよ。

加えて、コロナ関係の調整もあるしね。

森満
森満

想像以上に幅広い業務内容ですね!

魚類市場でのコロナ対策は、かなり神経使いそう。。

魚類市場内には一般の人も利用できる食堂があります
泊さん
泊さん

市場が止まると魚の流通が止まってしまうから、市場内のコロナ対策には僕ら職員も業者さんも、神経をとがらせてる。

みんなプライドを持って働いてるからね。

森満
森満

かっこいい。

ちなみに、普段は事務室みたいな場所で働いてるんですか?

泊さん
泊さん

そうそう。

魚類市場の建物内にある事務室に10人ぐらいの市役所職員がいて、オフィスワークしてる。

全員が事務職で。

森満
森満

あれ!?

泊さんって専門職じゃないんですか?

泊さん
泊さん

民間枠の同期は、全員が事務職なのよ。笑

もともとは鹿児島大学の建築学科卒なんだけどね。

森満
森満

鹿児島大学の建築学科卒なんですか!?

直属の先輩じゃないですか。。

し、、失礼しました。笑

泊さん
泊さん

言ってなかったっけ?笑

日本ガス時代のハナシ

タスクフォースという制度

森満
森満

ということは、日本ガス時代建築職だったんですか?

泊さん
泊さん

日本ガス時代も建築職ではなくて、総合職採用だったよ。

でも入社してある程度仕事に慣れた時に、社長が交代して。

そこから住宅リフォームや、建築に関する業務をさせてもらった。

森満
森満

なるほど。

社長が代わったことで、何か変化がありました?

泊さん
泊さん

新しい社長に代わって、社内に『タスクフォース』っていう制度ができたんだよね。

毎週、タスクフォースに選ばれたチームのメンバーが、社長からの”宿題”や業務の進捗を直接報告するっていう。

森満
森満

大企業なのにその柔軟性は素晴らしいですね。

というか単純にうらやましい。。

泊さん
泊さん

1チーム20分ぐらいの持ち時間で、「今週はこんなことしました」、「今こんな課題があります」って社長に報告や相談する制度で。

新規事業の立ち上げや改革などで招集されてるんだけど、今思うと、若手育成の意味合いもあったんだと思う。

森満
森満

めちゃくちゃ先進的!

というか自治体でも進んでるところは、市長や知事と若手がランチミーティングしたり、課題を共有したりしてますもんね。

それ、鹿児島市役所でもやりたいなぁ。

泊さん
泊さん

やりたいよね!

ただ、タスクフォースでの活動って、所属の業務以外の仕事をやるわけだから、所属先の上司に理解があるかどうかが結構大事かもしれない。

森満
森満

なるほど。

それって、タスクフォースで活動することが組織全体のためになるって分かってくれる上司かどうかって話じゃないですか。

鹿児島市の場合だと、課の利益とか縄張りだけじゃなくて、「鹿児島市全体の利益になるからタスクフォースをやるんですよ」っていう話が通じるのかっていう。

泊さん
泊さん

そうだね。

実際にタスクフォースの中で活動してる職員は、部署横断でいろんな職員が集まって活動してたから、すごく楽しくて。

でも外から見ると、プロジェクトがカタチになるまでは、何をやっているのかが見えにくい部分はあったかも。

森満
森満

そこって、例えばカゴシマベースで企画段階から密着して記事として共有するみたいな方法も有りですよね。

そういう仕事したいなぁ。笑

ちなみに、タスクフォースに参加する職員って、入れ替わりがあるんですか?

泊さん
泊さん

ほとんど固定メンバーだったかな。

多い時はプロジェクトが15ぐらいあって、1人でいくつものプロジェクトに関わってる人もいたし。

森満
森満

プロジェクトごとに部署横断でチームが組まれるの、面白いですね!

泊さん
泊さん

日本ガスも割としっかり業務分担がなされる会社だったから、タスクフォースが部署の横串しになってたんだと思う。

社長の一本釣り

森満
森満

ちなみにタスクフォースのメンバーって、どうやって決まるんですか?

泊さん
泊さん

社長の一本釣りだったり、プロジェクトの進捗に応じてメンバーから招集をお願いしたり。

「今、あの人が必要なんです!」みたいなこともあった。笑

森満
森満

なるほど。笑

その方が話早いし、上手くいくイメージです。

市長に一本釣りしてもらえるように、結果出しましょう!!

(燃えてきた…‼)

泊さん
泊さん

笑笑

そのタスクフォースの場で、「社長!面白いことやりたいんです!」って直訴して、賃貸マンションの断熱リノベーション事業をやることになるんだよ。

結果にコミットする

森満
森満

それを社長に言えちゃう泊さんがすごいなぁと思います。

すぐに「やっていいよ!」っていう話になったんですか?

泊さん
泊さん

「収益性が確保できるような良い物件があるなら、やってみたら?」って社長に言ってもらえたんだけど、物件探しが大変で。

結構長い期間、物件を探し続けたかなぁ。

森満
森満

建物自体のポテンシャル、立地、金額、すべてが事業に影響しますもんね。

泊さん
泊さん

そうそう。

やるんだったら結果を出さないといけないからね。

事業をやるに値するポテンシャルの高い物件がなかなか見つからなくて。。

森満
森満

そうですよね。。

結果的に物件を決めて、リノベっが(株式会社大城)エネルギーまちづくり社と組んで、断熱リノベの実証実験までやることになるわけですよね?

断熱リノベプロジェクトの詳細はこちら☟
泊さん
泊さん

そうそう。

森満
森満

チャレンジすることを選択した日本ガス側も、新しい分野へのチャレンジだったわけですよね。

泊さん
泊さん

電力事業やガス事業が自由化されて、ガス会社としてもどんどん新しい分野にチャレンジするフェーズなんだと思うよ。

リノベーションオブザイヤーの話

森満
森満

いやー、でも結果的に泊さんが「リノベやりたいです!」って直訴した所から始まった断熱リノベ事業が、リノベーションオブザイヤーに輝くわけじゃないですか。

リノベーションオブザイヤーって、リノベーション業界の日本一ですからね。。

結果を聞いた時はどういう心境でしたか?

グランプリ受賞の様子。大城さん、めっちゃ良い笑顔。
泊さん
泊さん

正直、グランプリを取れるとは思ってなかったから、手震えたよね。笑

森満
森満

そりゃ震えますよね。。

日本ガスの人も喜んでたんじゃないですか?

泊さん
泊さん

そうだね。

そもそも授賞式の時、自分はすでに鹿児島市役所に転職してたから、受賞式に行くわけにもいかなくて。笑

森満
森満

それは面白い状況ですね。。笑

ちなみに、断熱リノベ事業で取り組んだことを、ざっくり教えていただけますか?

泊さん
泊さん

ざっくり言うと、築年数40年近くの賃貸マンションの空室を断熱+リノベーションして、部屋の温度変化や電力使用量を測定し、無断熱の部屋とも比較したんだよね。

断熱材を実際に施工するDIYワークショップも織り交ぜたプロジェクトになっていた
森満
森満

比較した理由は何だったんでしょう?

泊さん
泊さん

入居者にとって、快適性アップ&光熱費ダウンすれば、古い物件でも空室率を減らせることを証明したかった。

空室率を下げることは、物件オーナー・不動産管理会社・ガス会社にとってメリットだし、更には、エリアの活気にもつながるからね。

森満
森満

なるほど!

断熱リノベをガス会社がやる理由がずっと疑問だったんですけど、そういうことだったんですね!

泊さん
泊さん

そうそう。

一言で言うと、“三方よし”ならぬ、“四方よし”“五方よし”を狙った欲張りプロジェクトでした!

森満
森満

今振り返って、どこが一番評価されたポイントだったと感じてます?

泊さん
泊さん

断熱改修自体は、けして新しいものでも特別難しい技術でもないんだよ。
ただ、快適性より経済合理性が優先される賃貸物件では、その優先順位が今までとても低かった。

森満
森満

断熱って、目に見えて綺麗になるものでもないし、体感しないと良さがわからない部分ですもんね。

泊さん
泊さん

それを、断熱すればエネルギー使用量が減るにもかかわらず、エネルギー会社がやろうとしたこと
そして、そのプロセスを見える化したことが評価されたのかなって思ってます。

断熱有の部屋と断熱無の部屋を両方とも体験できるオープンハウス

行政と組んでおもしろいことを仕掛けたかった

森満
森満

日本ガスで成果を出したのにも関わらず、鹿児島市役所に転職したわけじゃないですか。

それってすごく勇気のいる決断のように感じてしまうんですけど、泊さんの中でどんな気持ちの動きがあって、市役所に転職するっていう決断に至ったんですか?

泊さん
泊さん

リノベの事業って、着工したら一年で事業自体は終了するっていうのが見えていたから、次は何をしようかなって考えたんだよね。

その時に、行政と組んで面白いことを仕掛けたいなって思っていて。

森満
森満

行政と組んでってことは、まだ行政に転職しようとは思ってないってことですよね。笑

泊さん
泊さん

そうだね。笑

社会課題を解決する上で『民間側は行政とどう組めばいいのか』みたいなことを学びたいなと思った時に、都市経営プロフェッショナルスクールの存在を知って。

森満
森満

市役所に転職する前提で、プロスクールに通ってたわけじゃないんですね?

公と民の異なる手法から、発見する力や地域を動かす方法を学び、都市経営の課題を解決する

とりあえず&好奇心

泊さん
泊さん

違う違う。

日本ガスの社員として、行政とどう組むかっていうことを学びに行ったんだよ。

そしたら、民間採用枠の試験が鹿児島市役所であるという情報を耳にして。

森満
森満

ほう。。

泊さん
泊さん

これは受けるしかない!」って思って、今公務員になりました。笑

森満
森満

ごめんなさい、ちょっと話について行けてないんですけど。。笑

そこで、公務員を受けてみるか!ってなった理由はなぜだったんでしょう?

泊さん
泊さん

学生時代、中央駅前の再整備とかビッグプロジェクトが動いてて、単純に、いつか都市計画とか地域再生に携わるのが夢だったんだよね。

森満
森満

へぇー!

泊さん
泊さん

もう一つは、都市経営プロスクールで、頑張ってる全国の公務員と出会ったことかな。

これからのまちに必要な公民連携の仕組みや環境をつくるってことに、勝手に価値というか魅力を感じたのよね。

森満
森満

泊さんが仲間で居てくれることは、最高に心強いです。泣

泊さん
泊さん

これからは、行政がぐいぐい引っ張ってく新規プロジェクトの時代ではないけど、むしろ公民連携という手法で今までとは違う面白いまちづくりができるなっ感じてて。
その素地を、もし自分も鹿児島でつくれるとしたら、これは幸せなことだと思ってる。

まとめー前編ー

日本ガス時代の社内タスクフォースの話が、とにかく面白かった。

若手育成という名目だったとしても、大企業の社長と若手社員が定期的&対面で話せる環境

しかも、そこで提案したことが実現され、リノベーションオブザイヤーに輝くという、この一連の流れこそが、タスクフォースの重要性を確信させてくれます。

羨ましい。。鹿児島市役所でもやりたい。。

というか、この記事をまとめながら、令和3年4月から鹿児島市役所でもタスクフォースをやることを決めました(ガチ)。

ということで、前編では日本ガス時代の働き方や、鹿児島市役所に転職した経緯についてお話を伺いました。

後編では、公務員と民間企業の違いや、公務員としてやりたいこと等のお話をお届けします。

では、また次回お会いしましょう!

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