最前線で働く公務員が、日々何を思い、働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島県庁くらし共生協働課の課長、上原順郎さんです。
公務員として働くうえで大切にしていることや、財政課時代の働き方などについてお話を伺いました。
上原さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど、必死に働いてる公務員の姿を少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
上原順郎さんのプロフィール
1965年生まれ。
南さつま市出身。
高校生までを鹿児島で過ごし、大学で上京。
東京に行ったことで鹿児島愛が開花し、鹿児島のために死ぬ覚悟で鹿児島県庁へ就職。
地域振興局、財政課、共生協働センターなどを経て、現在、くらし共生協働課長として勤務。
特技はRAP。
公務員としての顔
やりたいことと求められることのギャップ
よろしくお願いします!
早速ですが、ちょっと悩みがありまして…
よろしくお願いします。
どうしたの?
僕は今32歳で、役所で働き始めて9年目なのですが、自分の中で得意なこと、苦手なことが明確になってきたんです。
そんな中で、やりたい仕事がなかなか職務としてできないことにモヤモヤを感じていまして。。
僕みたいな公務員や組織で働く人、結構いるんじゃないかなと思うのですが、上原さんはどうやって乗り越えてきたんですか?
だよね。わかるわかる。笑
僕も、今までの公務員人生を振り返った時に、仕事としてやりたいことと求めらてることがいつも違うなぁって思ってて。
やりたいことを公務員の仕事としてやれたことがないです。。
特に事務職として県庁や市役所に入ると、自分の希望する部署と全然違う分野に配属されることばかり。
僕も、今まで14箇所の課に配属されたけど、ほとんど希望通りに行ったことがないよ。笑
そんなもんですよね。。
そんな中で、どうやってモチベーションを保って、どういう仕事のやり方をするか。
そこを自分の中でどう整理をつけるかが、めちゃくちゃ大事になってくるよね。
ここだけは譲れないっていう気持ち
もっと具体的に、上原さんの場合はどうやってモチベーション保ってるんですか?
僕は30年近く県庁にいるけど、やりたいことが仕事としてできない、そのギャップにぶつかってばかりなんだよ。
ギャップにぶつかりっぱなしの人生だけど、俺は絶対ここだけは譲れないっていう気持ちをいかに持ち続けられるか。
これに尽きるかなぁ。
鹿児島のために命をかける覚悟で県庁に入った
上原さんの中で、ここだけは譲れないポイントって何ですか?
鹿児島が好きだっていう気持ちかな。
鹿児島のために命をかける覚悟で鹿児島県庁に入ったんだよ。
(そこまでの覚悟は自分にはなかったなぁ…)
目の前の仕事だけにフォーカスすると、「なんでこんな仕事せんといかんのけ」って思う仕事もたくさんある。
いくら自分がやりたくない仕事であったとしても、その仕事をする上で得られた色々な経験値が、いつかきっと自分がやりたい仕事をするための糧になる。
そう信じて仕事をすることで、モチベーションを保つようにしてるかな。
なるほど。
目の前の仕事だけを見てしまいがちですよね。。
そうよね。
僕も、いつもそう思えてるわけじゃないよ。
悩んだり、身体を壊したりもしたし。
そうなんですね。。
でも、最後に自分を奮い立たせるのは、その思いだよ。
つまらなくみえる作業であっても、県庁であれば県民の生活に結びついてる。
その作業のひとつひとつが、県民の健康と福祉を支える仕事になってるんだと、思わないといけない。
胸に響きます。
県庁や市役所で働くということは、すべての作業が県民や市民の生活を支えることに絶対なっているからね。
そう感じながら仕事をしなくちゃいけない。
財政課時代の話
話は変わりますが、以前に財政課でも働いていたことがあると伺いました。
財政課の仕事って、県の根幹にかかわる部署だということは分かるのですが、いまいち働く職員の姿がイメージできなくて。
財政課時代に仕事をする上で大切にしていた考え方ってありましたか?
たしかに、財政部局はどこの自治体でも根幹にかかわる部署だよね。
鹿児島県庁の各部局が事業をするためには、財政課と交渉して予算を確保しないと、そもそも事業ができない。
だから、担当部局の職員と財政課の職員とで事業について喧々諤々に議論するんだけど、一番はその事業をすることで、どんな成果が上がるのか。
これを大切にしていたかな。
どこの自治体も財政状況が下火な中で、結果が求められるわけですよね。
それは当時だけじゃなく、今も大事にされてる考え方なんじゃないかな。
予算を要求する時に、今でも聞かれるもんね。
担当課が何を求め、どのような将来を描いているか見極めろ
具体的な結果を求めるのも理解できるんです。
その一方で、例えばくらし共生協働課の事業でも人材育成の事業があると思うんですけど、人を育てることって、抽象的でなかなか成果が数字として見えにくいじゃないですか。
わかりやすい結果を求められる中で、結果が目に見えにくい部分ってどう交渉してるのかなって。
財政課との交渉にフォーカスすると、具体性と抽象化を織り交ぜながら、どちらの部分も説明するしかないのよね。
抽象化の部分をどこまで理解してくれるかは、はっきり言って財政課の職員によるところが大きい。
そこを分かってくれるかどうかって、僕らの未来にとってめちゃくちゃ大事なポイントですよね。
僕が昔財政課にいた時、当時の先輩から言われたことですごく覚えていることがあってね。
「上原、おまえは部局の立場に立って査定しないと、県は回らないことだけは覚えとけよ。いくら上司から査定しろって言われても、ちゃんと説明ができるぐらい勉強もしないといけないぞ。」
「部局が本当に何を求めていて、どこを目指していて、いま何を必要としているのか見極めろ」
それは…本質だけどスパルタですね。笑
僕らが若い頃は、寝ずに働け!みたいな時代だったからね。笑
財政も担当者ごとに担当の部局があるのよ。
自分は財政にいるけど、担当が農政や土木、福祉の場合は、その分野の勉強をしないと、そもそも査定するときに説明ができないじゃない?
予算をつけるにしろ、査定するにしろ、なぜそういう判断をしたのかしっかり説明しないといけないからっていう教えだったのかなぁと思う。
それだけ真剣に取り組んでるってことですよね。
予算を要求する側と査定する側はそれぞれの立場があって、予算が議決されるまで、攻防がずっとある。
なるほど。
それぞれ立場はあるんだけど、最後、議会から予算が承認されたら、要求する側も査定する側も一緒になって飲みに行ってた。
「大変だったよなー」って言いあいながらさ。
それだけお互いに真剣勝負だってことですよね。
熱い気持ちを持ってる公務員の方が真っ当
先日、来年鹿児島県庁に入る中俣さんに取材をしたんですが、すごく熱い思いを持っていて。
鹿児島が大好きで、もっと鹿児島を盛り上げたいから公務員になったという話を聞いた時に、最高だなと思った半面、県庁に入ってからのギャップに悩むんじゃないかなと感じたんですが、その辺いかがですか?
たしかに、熱い気持ちを持ってれば持ってるほど、周りの職員とのギャップに悩むと思う。
ですよね。
行政組織の中で、鹿児島を盛り上げたいんだ!!って言ったら、何熱くなっちゃってんの?って思われそうな空気感ありますよね。
でも、僕は熱い気持ちを持ってる職員の方が真っ当だと思ってる。
なにくそと思いながらも、自分の方が真っ当だという、その意識は常に持っておいてほしい。
そう思うよ。
ただ、心折れそうになるんですよね。
僕も何度も折れてますもん…
自分の中の熱い気持ちを大切にした上で、その気持ちを支えてくれる人、悩みを相談できる人が周りにどれだけいるかだなと思うよ。
その人間関係をつくれるかどうかは、結局自分次第なんだけどね。
自分次第というと?
自分と同じような価値観を持った人と知り合えるかどうかって、理屈じゃないなと思っていて。
周りとのギャップに苦しみながら、悩みを持ちながら生活することで、同じような熱量を持つ人と出会うきっかけが生まれる。
人の出会いを出会いとして受け止められるかどうかは、その人の努力次第なんだよね。
まとめー前編ー
熱い気持ちを持つ公務員の方が真っ当
こう、力強く言い切る上原さん。
こんな風に言い切ってくれる課長がいるっていうだけで、心が折れかけてる公務員からすると、めちゃくちゃ勇気もらえます。
前編では、公務員として働く上での心構え的な、公務員の本質に迫る内容をお届けしました。
次回の中編では、上原さんが仕事で泣いた話や、今から公務員になる人へ伝えたいこと等をお届けしますので、お楽しみに!
では、また次回!
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