毎年、鹿児島県内の各地で活躍する人材を輩出する「本気の地域づくりプロデューサー養成講座」。
この講座に関わる方に定期的にインタビューをして、年々変化していく様子を応援しようという本企画。
今回のゲストは、鹿児島市の桜島で地域おこし協力隊として奮闘する押川蓮斗さんです。
後編では、社会人時代の話や、桜島で仕掛けようとしていることについて、お話を伺います。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
民間企業で働いていた頃
まちづくりに関わる仕事がしたかった
地域おこし協力隊に着任する前は、民間企業で働いていたんですか?
ですね。
留学から戻り、大学院を卒業した後は、株式会社ADKホールディングスという会社で働いていました。
なぜその会社に就職を?
理由は大きく2つありまして。
1つ目の理由は、シティプロモーションとかコミュニケーション領域で、まちづくりに関わりたいと思ったこと。
会社のHP見たんですけど、かなり大きな企業ですよね。
まちづくりと関われるような会社だったんですか?
色々な部署がありましたね。
関われる部署もあれば、そうでない部署もある感じでした。
2つ目の理由は、本社が東京なので、経験値として色々得られるなっていう部分ですね。
なるほど。
日本の中心地である東京に、一回は行っておかないとなって。
それこそ留学していた時、「日本ってどんな場所なの?」って聞かれても、九州とか鹿児島のことは話せるけど、「日本全体の中心地について自分は全然知らないな」って感じたんですよ。
実際に東京に住んでみて、どうでしたか?
良かったですね。
僕の人生経験として、貴重な時間だったなって思います。
会社に一番感謝してるのは、ここまで成長させてもらえたという部分ですかね。
というと?
大学卒業したての頃って、自分自身がかなりポンコツだったよなぁって。笑
昔はあんなだったな、こんなだったなって、今振り返れるぐらいには成長させてもらえたと感じてます。
押川さんのFacebookの投稿をさかのぼって見させていただいたんですけど、ADKを辞める時の投稿に付いてるコメントが全部温かくて。
会社の人達からすごく愛されていたんだろうなって、その投稿を見て思いました。
ありがとうございます。
先輩方には、良い感じでイジってもらいながら、良くしていただきましたね。笑
結果的にADKでは、シティプロモーション的な仕事ができたんですか?
それが中々できなくて。
かなりもがいてました。
中にはシティプロモーション的な業務をされてる方もいらっしゃって、うらやましいなぁと思いながら見てましたね。。
なるほど。
そもそも僕の配属先が、自分で希望したんですけど、まちづくり的な業務ではなく、統計とか数値を扱う部署だったんです。
具体的に言うと、マーケティングデータとか市場調査データを使って、広告投資をいかに合理的にやるか提案するみたいな部署だったんですよ。
縁の下の力持ち的な部署だったわけですね。
なぜその配属を希望したんですか?
今まで学んできたこと以外の分野に触れることも、自己実現のために重要だと思ったんです。
ただ、その部署で働きながら、本来やりたいことへの思いが明確になってきた感じもあって。
なるほど。
ちなみに、部署の異動は?
ありましたね。
キャリアステップみたいな制度が用意されていて。
統計の部署には4年在籍したんですけど、企画系の部署に異動しました。
やりたいことがやれそうな部署に異動できたわけですね!
ただ、その頃は鹿児島への移住も検討しているタイミングで。
めちゃくちゃ迷いましたよ。
会社でやれることも探したいし、現場でまちづくりの分野にチャレンジもしたい。
それは迷うなぁ。。
鹿児島への移住を検討するようになった理由は何だったんですか?
桜島で地域おこし協力隊の募集があることを聞いて。
ただ、応募はしたものの、採用が決まるまで不確定要素も多いので、会社では人事とやりたいことの話も詰めながら、「自分はいったいどうなるんだろう。。」と思ってました。笑
なるほど。。
それに加え、妻にも相談しながらですね。
そこめっちゃ大事!
相談したら何て言ってました?
「海外に行きたい」と言ってました。笑
おお!笑
僕自身、ずっと海外へ赴任したいと思っていたんですよ。
留学もしていたし、海外への異動願いも出していて。
もしかしたら、海外への赴任もあるかもっていう話もあって。
すごい。
①ADKの企画部門
②鹿児島市の桜島
③ADKの海外赴任
三択だったわけですね。。
海外の支社長とも話をする機会があったんですが、
「あなたが本当にやりたいことを選択しなさい」
と言ってもらえたんです。
僕のことを本当に考えて言ってくれているからこそ、本気で考え抜かないとなぁと思って。
素晴らしい支社長。
改めて考えた時に、地域のことを本気でやりたいって思うと、やっぱり現場の方がいいのかもなぁって思ったんですよ。
自分自身とじっくり向き合った結果、その結論にたどり着いたわけですね。
そうですね。
やっぱり現場でゴリゴリやってみたいという気持ちが、僕の中で強かったので、地域おこし協力隊になるという選択をしました。
桜島での活動について
ボランティアとビジネスのバランス
すごいなぁ。
少し話は変わっちゃうかもしれないんですけど、東京とか大阪から桜島で働くことに、恐怖心みたいなものは無かったですか?
恐怖心っていうと?
「地域住民にちゃんと受け入れてもらえるのだろうか」っていう不安と言いますか。
何でも屋さんじゃないですけど、雑に扱われたり、市役所職員とか地域の人との関係性が上手くいかずに悩んでる協力隊の方を、僕自身が結構見てきたんですよね。。
その辺はいかがですか?
なるほど。
基本的には皆さん協力的だし、寄り添っていただけてますね。
「押川くんはどうしたいのけ?」って、気を使ってもらってる感じ。
へぇー!
それは面白いというか嬉しいですね!
桜島のキーパーソンと関わらせていただくことが多いから、そう感じるのかもしれないですね。
「東京からよく来てくれたね!」と言っていただけることが多くて、ありがたいです。
なるほど。
ただ、信頼関係の構築とビジネスのバランス感覚はすごく難しいなぁと感じています。
僕はポスター作ったり、チラシ作ったり、デザインが割とできるので、頼まれることはありがたいし、動けるんですけど。
動きすぎると、将来食べて行かないといけないので、あれだなって。
地域おこし協力隊って、最長で3年間の任期ですもんね。
それ以降は自力で食べていかないといけない。
今はまだ地域に入ったばかりなので、僕が頼まれたことをやることで信頼関係を創っていけたらと思ってるんですけど。
とはいえ、『ボランティア的な動き方だけでは成り立たないじゃないですか』っていう所は課題として持ってます。
信頼関係の構築とマネタイズのバランスですよね。
なので、「今はこの金額ですけど、このままだと続かないので今後はもう少しお金いただくかもですねー」って、伝えるようにしてます。笑
そこのバランス感覚を、今の段階で意識出来てるのは素晴らしいと思います!
認識されてるかどうかは、分からないですけどね。笑
まぁでも、あまりにも無料とか少ない金額で依頼が続くようだと、最悪断らないといけないなと思ってます。
カツカザンの会
先日Facebookで見つけたんですけど、桜島の同世代でカツカザンの会っていう活動をしてますよね?
してますね。
先日は山下家で交流会をさせてもらいました。笑
山下家は全員がクリエイターで、桜島のキーパーソンファミリーですよね。
山下夫婦も、最近大阪から地元の桜島に帰ってきたファミリーなんですけど、僕は新しく桜島に来た身として、同世代の横のつながりがほしいっていう思いがあって。
若い世代の受け皿があると、今後僕みたいに桜島に入ってきた人を、「おいで!」って誘うことが出来るじゃないですか。
最高です。
っていうのはほとんど後付けで。笑
「とにかくつながりが欲しい!」っていう僕の欲求が大きかったですけど。笑
この会でご飯を食べながら雑談をする中で、新しいアイデアが出てきたり、コラボが生まれたりするんじゃないかなって思っています。
ポタリング
もうひとつ押川さんの投稿で面白いなと思ったのが『ポタリング』なんですけど、あの投稿を読んで、桜島×自転車ってすごく可能性あるなと感じました。
ポタリングとは
ポタリング(和製英語: pottering)は、目的地を特に定めることなく気分や体調に合わせて周辺を自転車でめぐること。
一人か家族連れや気の合う仲間で、近郊を「散歩」程度に軽くサイクリングすることである。
出典:Wikipedia
桜島の暮らし方とか生活感、観光も含め、全部まるごと楽しめるツールが散策だなと思っていて。
(うんうん)
「あーこんな場所に住んでみたいなぁ。」と思える景色って、桜島がドカンってあるだけじゃなくて、そこにおうちがあって、そこに住んでる人の面影を感じれてみたいなことだと思ってるんです。
なるほど。
それを観光的なサービス開発にして、ゆくゆくは関係人口づくり&移住促進になるようなものに設計出来たらいいなぁって。
まちを巡る時って、自転車が一番ラクなんです。
だから、ポタリングが最高やなって思ってるんですよね。
たしかに、歩きだと疲れちゃうし、車だと風景が流れちゃうから、自転車がちょうどいいかも!
ですよね!
既に、桜島を一周するために、自転車でツーリストが来てたりするんですよ!
琵琶湖一周の『ビワイチ』みたいに、桜島一周することを『サクイチ』って言うらしいんですけど。
サクイチ!
知らなかったです!
桜島一周って、観光×スポーツの良いコンテンツになりそうだと思ってます。
今の時点でそういう基盤はあるので、そこに上手く絡めて良ければいいかなって。
僕はずっと鹿児島に住んでいるんですけど、中学&高校で、桜島を一周走らされる『桜島遠行』っていうイベントがあって。
当時はめちゃくちゃキツかったんですけど、今となっては良い思い出なんです。
桜島に青春が詰まってるような。
なるほど!
だから、観光だけじゃなくて、鹿児島県民でも桜島一周に対する思いを持ってる人、結構いるんじゃないかなと思ってて。
サクイチナイトウォーク
そんな森満さんに。。
今度、『サクイチナイトウォーク』っていうイベントをするんですよ!
おお!
なんか良い前振りになってましたね。笑
夜から朝にかけて、桜島を一周するっていうナイトイベントで。
2019年に一度辞めるってなってたイベントなんですけど、今年からまた復活するんですよ!
いつか参加したいなぁと思ってた中、2019年が最後の開催だっていう話を聞いて、当時ショックを受けた記憶があります。
ずっとやってきた運営メンバーが、体力的に厳しいっていう状況だったみたいで。
昨年はやらなかったんですけど、周りからは開催してほしいっていう声がずっとあったみたいなんです。
僕でさえ思ってたぐらいだから、そういう声が多かったのは想像できます。
そんな時に、僕ら協力隊が桜島にやってきたわけです。
地域住民と自治体が一体となって行えるイベントができないかと思ってた時に、ナイトウォークの話を聞いて。
これだ!やらせてください!って。笑
なるほど。笑
今、開催の準備をしてるんですけど、結構大変だなぁ…って段々思ってきました。笑
地域づくりプロデューサー養成講座について
最後に、鹿児島県のくらし共生協働課が主催してる『地域づくりプロデューサー養成講座』の受講を終えた感想を伺っても良いですか?
外とつながるきっかけになったこと。
これがすごく大きかったなと思っていて。
というと?
地域に入り込んで活動をしていると、視野が狭まりがちだったりするんですよね。
だからこそ、「10活動するうちの1とか2は、外と関わる活動じゃないといかんな」っていう気がしてます。
なるほど。
桜島だけじゃない関係づくりをしておかないと、広がりも出にくいじゃないですか?
アイデア展開にしても、広域連携するにしても、桜島だけで完結する話ではないので。
そういった意味で広い視野をもてる活動母体というか、今回の研修みたいなものが定期的にあると、すごく助かるなってめちゃくちゃ思いましたね。
面白い意見だなぁ。
今回の講座以外にも、色々な研修って受ける機会がありますか?
あるんですけど、1~2日の研修だと、つながりが結構薄いんですよ。
深くつながる前に終わっちゃうと言いますか。
今回みたいに、月に一回でも5ヶ月間継続してあると、その分つながりも濃くなるので。
自治体側でイベントを企画する部署にいる職員はめちゃくちゃ参考になる、現場のリアルな意見!
ということで、今回のインタビューはここまでになります!
深く濃い話をありがとうございました!
また着任1年目にでも、協力隊の活動を振り返るインタビューをさせてください!!
まとめー後編ー
ありがたいです。
ことあるごとに、この『ありがたい』っていう言葉が飛び出すインタビューで、ここに押川さんの愛される理由が詰まっているような気がしました。
今は、桜島に来て半年。
これから1年、2年、3年と、押川さんの気持ちがどう変化していくのか。
また、押川さんが桜島でどんなことを生み出し、どんなコラボが生まれていくのか、ずっと密着していきたいなぁと思います。
ということで、後編では社会人時代の話や、桜島で仕掛けようとしていることを伺いました。
サクイチナイトウォーク、是非チェックしてみてください!
ではまた次回、お会いしましょう!
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