【後編】仕事とやりたいことのハザマで葛藤する【上野博文|南九州市役所】

公務員図鑑

最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』

今回のゲストは、南九州市役所で土木職として働く上野博文さんです。

この記事は6分で読めます^^

後編では、仕事とやりたいことの間で揺れ動く葛藤について、お話を伺いました。

上野さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。

<聞き手=原本太郎(南九州市地域おこし協力隊/Ten-Lab)、上木寿人(KagoshimaBase取材者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>

前編 行政組織内部にいるからこそ出来ることがある【公務員としての立ち回り方編】

後編 仕事とやりたいことのハザマで葛藤する【悩み編】

今やりたいこと

料理関係への好奇心

森満
森満

冒頭で、「最近元気がない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょう?

掘り下げて聴かせていただいてもいいですか?

上野さん
上野さん

うーん。。

やりたいことが、仕事として出来てないっていう思いがあって。

森満
森満

なるほど。

今、上野さんの中でやりたいことって?

上野さん
上野さん

今一番興味があるのは、料理関係のことなんですよね。

森満
森満

あ!

毎週、お弁当の投稿をSNSでアップしてますもんね!

上野さん作。
 上野さん
上野さん

純粋に、朝お弁当を作ることが楽しいんです。

やりたいことが仕事であまりできていない僕にとって、ある種の精神安定剤というか。笑

自立して稼ぐ力の必要性

上木
上木

今、土木の仕事をされてるんですよね?

全然違うジャンルに興味が出てきたんですね!

 上野さん
上野さん

根本として、公務員として今のまま働くことへの危機感があるんですよ。

社会情勢が目まぐるしく変わる中で、このまま市役所の中だけで働いてていいのかなって。。

森満
森満

なるほど。

 上野さん
上野さん

公務員は安定してるっていうけど、今からの時代、果たして本当にそうなのかって。

自分ひとりで稼いでいく力をもっと身に付ける必要があるよなぁって感じるんです。

森満
森満

うんうん。

 上野さん
上野さん

料理に関することがやりたいっていう想いに加えて、公園担当をしていた時に培ったノウハウを活かしたいっていう想いもあるんですよ。

『公務員って、外の世界では全然通用しないぞ』って言われることが多いんですけど、公務員だって今まで積み重ねてきたものはあるはずじゃない?

森満
森満

たしかに。

やりたいことで稼ぐって難しい

 上野さん
上野さん

『役所の外から、役所と一緒に公園の使い方を考えたり、提案するみたいな役割も必要なんじゃないか?』とか。

今、色々な選択肢を考えてます。

上木
上木

それが上手くビジネスになっていければ、楽しく働けそうですよね。

原本さん
原本さん

ただ、そこをビジネスにするのってめっちゃ難しいですよ。

僕も以前働いてた会社を辞めて、鹿児島に帰ってきて。

今、やりたいことは出来てるけど、年収は以前の半分以下になったので、正直、生活に余裕は無いですよね。

上木
上木

なるほどなぁ。

原本さんって、結婚されてて子どもがいる状況で、仕事を辞めて鹿児島に移住するっていう決断をしたわけですよね?

なぜ、その大きな一歩を踏み出せたと思います?

原本さん
原本さん

辞める時は子供がまだ小さかったんですよ。

だからまだギリギリ『辞める』っていう決断が出来たんだと思う。

森満
森満

さらっと言ってるけど、その決断をできたことがすごいと思う、本当に。

僕は、辞める決心がずっとつかないですもん。

今33歳なんですけど、28歳ぐらいからずっと。

その勇気がずっと持てない。

上木
上木

うんうん。

どういう環境で働きたいか

森満
森満

だから、僕の場合は、どうにかして『公務員やりながらでもやりたいことができる方法はないか』って、今も探し続けてるんです。

上木
上木

僕も似たような感じで。

今二人でカゴシマベースやってるのも、自分たちがやりたいことを公務員の仕事としてやるために、やってる感じだもんね。

上野さん
上野さん

なるほど。

上木
上木

なので、このカゴシマベースをどうすればもっと多くの人に届けられるのか。

業務の延長として、カゴシマベースをやっていく方法はないか。

ずっと試行錯誤しながら、インタビュー記事を作り続けてます。

森満
森満

自分たちがやりたいことと、公務員として求められていることの距離を寄せて行って、やりたいことを業務としてやる!

それが最高に良い形だと思うので。

上木
上木

まぁ、単純に楽しく毎日過ごしたいだけなんですけどね。。

やりたいことで食べていくって、難しいですよね。

どの選択をとっても、やりたいことって簡単に出来ないなって思います。

上野さん
上野さん

ほんとに。

上木
上木

ただね、辞めてやりたいことをやった方が当然自由にはなると思うんですよ。

ふと気づいたら、あっという間に年を重ねてしまってるなって感じることもあって。

原本さん
原本さん

わかります。

前の会社で、『こういうことやりたいんです!』って上司に相談したことがあって。

「あー、それをやるためには、あと10年かかるだろうね」って言われたんです。

その時に、これはもう無理だわって思って。

そのことが、辞める決断をするきっかけだったかもしれません。

上木
上木

公務員でも、今までのやり方と違うことをやろうとすると、時間がかかる場面が多々ありますよね?

上野さん
上野さん

ありますよねぇ。。

年齢と働き方

森満
森満

上野さんって、仕事や働き方の話を奥様としたりします?

 上野さん
上野さん

しますします。

妻は、「別にやりたいことをやればいいんじゃない?私もそれで以前の会社辞めたし。」

って、さらっと言ってくれるんですよ。笑

森満
森満

奥様、さすがだなぁ…‼

 上野さん
上野さん

今、妻は自宅横の建物をリノベーションして、ヨガ教室をやっていて。

そんな妻に、すごく刺激をもらってます。

気づいたら僕も40代半ばになってて。

年取れば取るほど、色んな意味でリカバリーが効かなくなってくるじゃない?

上野さんの奥様がやってるヨガ教室。おばあちゃんちをセルフリノベして開業したところもすごい!
上木
上木

それは間違いないですね。

 上野さん
上野さん

公務員としてどんな働き方をこれからしていくのか、今後の身の振り方についてじっくり考えてみようと思ってます。

ヨガ教室をやってる建物は、友人達と床張りも壁塗りを行ったそう。というか森満もがっつり参加させてもらいました!楽しかったなー!

公務員で居続けるメリット

原本さん
原本さん

森満さんも、以前『転職したい』って言ってたと思いますけど、辞めたい気持ちは無くなりました?

森満
森満

うーん、、

今、僕はこの『Kagoshimabase』を運営することが楽しくて。

このメディアって、基本的に取材対象が公務員なので、カゴシマベースを続けるなら公務員で居た方が何かと好都合だなぁと感じてます。

原本さん
原本さん

好都合というと?

森満
森満

取材相手が公務員の場合、取材する側も公務員だった方が、警戒されにくいじゃない?

どこまで記事にしていいかとか、組織内部の事情もある程度理解できるわけなので。

原本さん
原本さん

たしかに。笑

森満
森満

職場での人間関係も良好だと思ってるし、毎日のように残業があるわけでもない。

公務員で働いた時間を家計のベーシックインカムとして、勤務時間外をカゴシマベースの活動だったり、家事育児の時間に充てるっていう生活が、結構充実してるんですよ。

人間関係がつらくて、仕事もきついみたいな時期は、心の底から辞めたかったですけど。笑

原本さん
原本さん

なるほどね。

森満
森満

ただ、市役所の業務が自分に向いてないっていうこと+係長以上の業務が完全に向いてないっていうことも、最近分かってきたので。

早めに方向性を決めたいなとは思ってます。

まぁ、公務員だろうとなかろうと、家族が食べていけて楽しく働けるなら、ぶっちゃけ何でもいいんですけどね。笑

上野さん
上野さん

そこ、みんな悩みますよねぇ。

客観的に見つめること

上木
上木

上野さん、一番下の子って何歳ですけ?

 上野さん
上野さん

1歳です。

1歳。かわええ…‼
上木
上木

お弁当作りもそうですけど、家族との時間をもっと持つことが上野さんの力になるんじゃないかなって思って。

育休を取ってみるのはどうですか?

原本さん
原本さん

あ!それめっちゃ良いと思う!

上木
上木

僕は今10ヶ月の育休を取って、仕事していた時間を全て家族との時間に充ててるんですけど、すごく幸せですよ。

 上野さん
上野さん

うーん。。なるほど。。

原本さん
原本さん

僕も前の会社で育休を1年ぐらい取った時に、自分とじっくり向き合って、鹿児島に来ることを決めましたもん。

上木
上木

育休の後は、復帰せずに辞めたんですか?

原本さん
原本さん

復帰して、年度末のタイミングですぐ辞めました。笑

森満
森満

笑笑

職場を離れることへのためらい

 上野さん
上野さん

いやー、、でも、やっぱり職場のことが気になっちゃうんですよね。

今自分が育休で抜けると、係の業務が回らないんじゃないかなぁって。

一人いなくなるだけで、結構なしわ寄せが周りにくるじゃないですか。

上木
上木

いやいや!

正直、なんとかなりますよ。笑

僕も今10ヶ月間の育休中なんですけど、職場めちゃくちゃ回ってますもん。笑

あと、育休取ると、仕事上での付き合いが完全になくなるんですよ。

上野さん
上野さん

うんうん。

上木
上木

そうなってくると、今の僕と関係性を持ち続けてくれる人って、プライベートで付き合ってくれる人だけなんですよ。

仕事をしなくなった瞬間に関係性がスッと切れる人が出てきたから、それが面白いなと思って。

上野さん
上野さん

なるほど。

上木
上木

役所という組織の中だけで生きてると、定年して仕事が無くなったら、人間関係も全部無くなるんだなって、育休取って感じました。

やりたいことにはチャレンジして、一個人として付き合える人をつくっておかないと辛いなって。

原本さん
原本さん

たしかに。

僕も育休を取った時は、仕事はなんとかなるでしょと思って、取りましたもんね。

上木
上木

心配することはなにも起きなかったでしょ?

原本さん
原本さん

起きなかったですね。

というか、逆に、そういうことを気にせずに男性が育休を取る職場環境こそ、今求められてると思いますし。

社会的な流れを見ても、育休取った方が良いと思う!

上野さん
上野さん

若い職員は、うちの市役所でも育休取ってるんですけどね。

40代になると、どうしても気にしちゃうんだよなぁ。

森満
森満

たしかに気になっちゃいますよね。。

原本さん
原本さん

でも、ぶっちゃけ絶対大丈夫ですよ。

僕が所属してるテンラボも、理事長だった永山さんが日置市長になって抜けたけど、残ったみんなで仕事回してますし。笑

森満
森満

それを言われたら、何も気にする必要ない気がしてきました。笑

やりたいことがあるって素晴らしい

上木
上木

でも、上野さんみたいに、自分のやりたいことがハッキリ見えてるって、純粋にすごいなって思うんですよね。

僕なんか、『これがやりたい!』って思うもの、今パッと思い浮かばないですもんね。笑

森満
森満

ほんとにそう!

僕なんて、正直そこが見えてないから、まだ公務員にしがみついてるので。

上木
上木

今は、弁当を作ってる感じなんですか?

上野さん
上野さん

ですね。

今は月曜の朝だけ、弁当を作ってます。

森満
森満

なぜ月曜の朝?

上野さん作。うまそう!
 上野さん
上野さん

いつも月曜の朝って、「あーつらい!仕事行きたくない!」って思うんですよ。笑

森満
森満

めっちゃ分かります。笑

 上野さん
上野さん

まぁでも『弁当だけは作るか』って思って、朝起きて弁当を作り始めるんです。

それで、弁当を作り終わると、それなりに達成感があって。

森満
森満

なるほど。

子供達と一緒に魚をおろす。
 上野さん
上野さん

『まぁ今日も弁当を頑張って作ったから、仕事も頑張ってみようかな』って。

自分の気持ちを弁当作りが支えてる感じですね。

上木
上木

面白い!

弁当を作るって、純粋に『めんどくさい作業』みたいなイメージでした。

児童館とチャレンジショップ

上野さん
上野さん

いやっ!笑

料理をすること自体が、純粋に好きなんですよね。

特に最近は、テイクアウトの惣菜店に興味があって。

森満
森満

ほうほう。

 上野さん
上野さん

自分が食べたいなって思えるようなお惣菜を、仕事帰りの人がさらっと買えるようなお店をつくってみたいなぁって。

原本さん
原本さん

最近、南九州市内でも子育て支援施設ができたり、保育園とか児童クラブのリニューアルが予定されるじゃないですか?

そういった場所でお惣菜屋さんができると良いですよね!

森満
森満

良い!

特に、チャレンジショップ的なやつ!

上木
上木

一回、お試しでやってみるのはアリですよね!

やってみて、その結果をみてから次のステップを考えればいいし。

原本さん
原本さん

ちょっと思ってたんですよ。

鹿児島市の『そらのまち惣菜店』みたいな惣菜屋が保育園とか児童クラブにあれば、お迎えに来たお母さんがお惣菜を買って帰れる。

今は子どもをお迎えにいく時も、ママ同士の繋がりとかもなさそうだし。

出典:そらのまち惣菜店Facebookページ「https://www.facebook.com/solanomachisozaiten/?ref=page_internal
上木
上木

今そういうものが南九州市に無いのであれば、需要はありそうですよね!

 上野さん
上野さん

たしかに。

実際、自分が食べたいと思うようなお惣菜が売ってる店って、周りにはあんまりないよなって思っていて。

原本さん
原本さん

上野さんが心をつないでるもの、毎週月曜の弁当作りみたいなものを、上野さん自身の中に他にも少しずつ増やしていけたらいいですよね。

月曜は弁当作り、土日はお惣菜屋みたいに。

そしたら、毎日がもう少し楽しくなりそう。

 上野さん
上野さん

たしかになぁ。

森満
森満

ということで、今回のインタビューは終わろうかなと思います。

なんか、好き勝手にアドバイスしまくって、すみませんでした。笑

ありがとうございました!

 上野さん
上野さん

いやいや、全然!笑

こちらこそ、ありがとうございました!

まとめー後編ー

組織で働くことの葛藤

『市役所で働くこと=3-4年で異動すること』が宿命で。

自分の得意不得意に関わらず、そこは全てを受け入れて、働かなければいけない現状があります。

そこは受け入れた上で、それでも、上野さんが得意なこと、上野さんにしかできないことが活かせるような働き方が出来たら、もっとみんなが幸せに生きられるのになぁと、そんなことを感じました。

川辺祇園祭(おぎおんさぁ)での上野さん。最高。上野さんの今後の歩みを、定期的に取材しにいきますからね!

ということで、後編では、仕事とやりたいことの間で揺れ動く葛藤について、お話を伺いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

ではまた次回、お会いしましょう!

前編 行政組織内部にいるからこそ出来ることがある【公務員としての立ち回り方編】

後編 仕事とやりたいことのハザマで葛藤する【悩み編】

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