2017-18年と2年間にわたって鹿児島市で開催されたリノベーションスクール@鹿児島(以下「リノスク」)。
リノスクに参加した受講生たちは、当時どんな心境で参加していたのかを振り返り、今どこでどんな活動をしているのかを探る本企画『リノスクが鹿児島にもたらしたもの』。
初回のゲストは、おりなす設計室の田渕一将さんです。
後編では、移住に関することや、断熱リノベについて、料理と建築についてなどの話を伺います。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
鹿児島に移住してからの話
リノスクの半年後には鹿児島に移住してた
リノスクを受講した後、どんな流れで鹿児島に移住することになったんですか?
結果的に鹿児島に移住したタイミングは、リノスクを受講した半年後ぐらいだったかな。
早っ!笑
もともとは2-3年スパンで準備して、鹿児島に行く計画だったんだけどね。笑
リノスクで出会った人達が魅力的で、僕も一緒に鹿児島を盛り上げていきたいっていう思いが強くなってさ。
リノスクを受講した翌月には、会社に「辞めます!」って伝えてた。
すごい。
リノスクが色々加速させてますね。
自分の中にハードルを設定しない
鹿児島の生活は、イメージと比べてどうですか?
僕自身が18歳で実家を出て、関西の中でも色々な場所を転々とした経験があったから、正直、鹿児島に対しても「行ってみないとわからないよな」って思ってた。
だから、鹿児島での暮らしを深くイメージしすぎないようにしてたんだよね。
なるほど。
「独立して鹿児島で暮らすけど、食べていけなくなったら、また就職すればいいかな」ぐらいの気持ち。
「何年後にこうなるんだ!」みたいなハードルを自分の中に勝手に設定しないようにしてた。
その話、めちゃくちゃ面白いです。
移住を考えてる人にとって、かなり参考になる話だと思います。
鹿児島での1年は長くて濃かった
鹿児島に移住して1年ぐらい経ったと思いますが、この1年間を振り返ってみて、いかがですか?
長かったですか?短かったですか?
うーん。。
長かったけど、濃かったかな。
濃かった?
会社に勤めてる時と比べて、出会う人の量も質も変わった気がする。
会社員時代とは違って、フリーで動いてると、会いたい人に会いに行けるし、一緒に仕事もできる。
同世代で同じような共通認識を持ってる人と、密につながれる。
その辺が濃さをもたらしてくれてる要因かな。
組織で働いてると、職場と家の往復になってしまいがちですもんね。
会う人も限定されやすいし。
会いたい人に会えて、仕事したい人と一緒に仕事ができるのは、すごく良いよね。
お金になるorならないは、とりあえず置いといて。笑
今でもリノスク参加者とのつながりはある
話は変わりますが、リノスクで一緒だった人とは、今でも関わりがありますか?
ある人もいるよ。
先日、熊本まで断熱DIYのワークショップに参加したんだけど、そのワークショップの主催者がリノスクの受講生だったり。
わざわざ熊本から鹿児島のリノスクに参加されてた方ですよね。
ECOBASEの企画に関わったり、otonariの設計だったりと、田渕さんが鹿児島に来る前から築いてきた人間関係が、現在の仕事にも活かされてる感じがします。
ちなみにECOBASEは、なぜ関わることになったんですか?
ヤマディー経由でECOBASEの依頼がきたのかと思ってました。笑
otonariに関しても、リノスクで同じグループだった坂口さんと、別の案件を一緒にやろうとしてて。
結果的にその案件はポシャってしまったんだけど、その後、otonariの話をいただいて、一緒にやることになったんだよね。
リノスクが終わった後、何を生み出すかの方が大切
そういう話を聞くと、リノスクをひとつのきっかけに、人と人がつながって、この1年で鹿児島の各地に波及効果があったんだなぁと感じます。
リノスクで一番評価されるべきポイントは、まさにそこなんじゃないかなぁ。
いやー本当にそうですよね。
ただ、副次的なそういう効果って、評価されにくい印象があります。
対象物件が事業化されることも大事だけど、リノスクで出会った人達がその後何を生み出すか。
そっちの方が重みがあるんじゃないかと思うよ。
間違いないです。
事務局で頑張ってた職員たちが泣いてると思います(二度目)。
これからの話
空き家を買おうとしてる
以前ちらっと聞いた気がするんですが、空き家を買おうとしてませんでしたっけ?
してるしてる。
かなり真剣に検討してるよ。
おお。。
場所はどの辺ですか?
日置市の美山。
妻の店舗&自宅として検討してるよ。
おお!窯元のまち、美山!
なぜ、美山だったんでしょう?
僕はもともと鹿児島が地元だけど、妻はIターンで移住してきてて。
正直、鹿児島の地の人とのハードルは少しあるし、同世代の友達も鹿児島市だと出来にくかったりするのよね。
なんとなく分かる気がします。
鹿児島市だと、地元じゃない限り、隣近所との付き合いもあんまりないですしね。
その点、美山だと移住して住んでる人が多くて。
しかもクリエイターが多いから、僕ら夫婦と同じような境遇の人が多く住んでる。
それが美山に惹かれてる理由かなぁ。
火を使うことへの抵抗の低さ
あと、美山はものづくりの地域というベースがあった上で、窯元のまちという性質上、火を使うことへの抵抗が低いっていう話も聞いてさ。
おお!
尚子さん、キャンドルアーティストですもんね!
そうそう!笑
色々な意味で、僕にとっても妻にとっても、良い場所になるんじゃないかなって。
最近、美山を経由して、いちき串木野市に行く機会があったんですけど、鹿児島市からも結構近いですよね!
車で40分ぐらいだったかな。
地理的な観点からも、美山は面白い場所だなぁと感じました。
ちなみに空き家の目星はついてるんですか?
ついてるよ。
それこそ、ヤマディーに初めてECOBASEに連れて行ってもらった帰りに、美山に寄り道してさ。
美山笑点で吉村さんと会って話をしてたら「最近、近くに空き家出たんだよ」ってを聞いて。
そのままの勢いで、空き家を見せてもらったことがきっかけでさ。
すごいスピード感。笑
断熱の効果を体感できるリノベがしたい
もし、本当に移住するとしたら、なんとなく空き家をリノベーションして住むのは嫌で。
外側だけきれいにして、リノベしました!ってするんじゃなくてさ。
断熱リノベを体感できる場所にしたいんだよね。
断熱を体感できる場所っていうと?
「こういう条件の空き家を断熱リノベするとしたら、こことここを抑えて改修すれば、これぐらいの室内環境の仕上がりになりますよ!」
っていう様なことを、データと体で感じられる場所にしたい。
店舗であれば、室内の温かさとか涼しさをお客さんに体感してもらうことができるからさ。
なるほど!
空き家のリノベーションで、断熱までやる人ってまだ少ないイメージですけど、暮らすことを考えたら室内環境に一番影響を与えるのって、断熱性能だったりしますもんね。
僕の今住んでる家も空き家をリノベーションしたんですけど、お金をケチって断熱までやらなかった結果、冬がめちゃくちゃ寒いですもん。。
断熱って目に見えにくいから、後回しにされやすいもんね。
住んだ後に「やっとけばよかった。。」って後悔するパターンが多そうですよね。
「標準的な中古住宅で、例えば天井と窓と床下の断熱工事をすれば、夏でも冬でも快適に過ごせますよー!しかも値段はこれぐらいですよー!」
っていうのが提示できれば、これからリノベを検討する人にとっては、断熱も選択肢の一つとして考えやすくなるかも!
おまけー料理と住宅についてー
料理と建築は似てる
最後に、もうひとつだけ質問させてください。
田渕家は夫婦共にクリエイターで、共働きですよね?
家事はどんな感じでこなしてるんですか?
家で二人とも仕事してるから、家事は分担してやってるよ。
ちなみに料理はどちらが?
料理は基本的に自分が作るかな。
そもそも学生時代は飲食店の厨房でバイトしてた経験があって。
料理と建築って似たようなところがあると思っててさ。
あー!それめちゃくちゃわかります!
材料とか作る手順とか、これ茹でてる間にこっち切って…とか、頭の使う場所が似てるのかも。
そうそう!
しかも料理って、家事の中で唯一と言っても過言ではないぐらい、なにかを作り出す作業じゃない?
たしかにそうかも!
家事も押し付けあうよりは、好きな方が好きな家事をする方がいいじゃん。
間違いないですね。
でもさ、自分が料理を作ってて、もうそろそろ完成しそうだなってタイミングで、妻に「そろそろできますよー」っていうアピールをするのよ。
まだ妻はキャンドルを作ってる。
料理ができました。
テーブルに持っていきます。
まだキャンドル作ってる。
なるほど。笑
ちょっと!今食べてよ!!
今が一番美味しいのに!!!っていうね。笑
食べるタイミングはどうにも出来ないですもんね。笑
料理をする設計者としない設計者
ちょっとまじめな話をすると、住宅を設計する上で『料理をする設計者か、しない設計者か』って大きな違いがあると思ってて。
というと?
キッチンって毎日使う場所じゃない?
そのキッチンが使いやすいかどうかって、実際に料理をする人にしか分からないよね。
たしかに!
シンクの奥行で洗い物がしやすかったり、作業スペースとコンロの動線が大事だったり。。
毎日使う場所だからこそ、大切なポイントですよね。
だから、料理をしてない設計者は、想像力をかきたてて頑張ってほしい。笑
笑笑
あとは、インスタとかで色々な家庭の状況をリサーチするようにしてて。
各家庭の状況ってみんな違ってさ。
子育てひとつにしても、子供のパーソナリティが全然違うから、苦労してるポイントも家庭ごとに全然違うんだよね。
たしかにそうかも。
「みんなが暮らしやすい家はこれです!」みたいなのは無くて、各家庭ごとに最適解が違うってことですよね。
そうそう。
想像力を働かせる意味でも、色々な家庭の状況をリサーチして、それを設計に反映させられるようにしてるよ。
リノスクの話から、移住の話や料理と住宅の話まで、幅広くお話いただきありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
まとめ
インタビューをする中で、暮らしを大切にしている人だなぁという印象を受けました。
断熱にしても、料理と設計の話にしても、建物自体というよりは、建物の中で、住む人がどれだけ快適に過ごせるかみたいな話をされていて。
住む人の暮らし方に寄り添ってくれる設計者はめちゃくちゃ貴重な存在だし、これから一緒にやりたいことがたくさんあるなぁと、そんな期待感に満ち溢れたインタビューでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
また次回!
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