鹿児島の圧倒的なシンボルである桜島。
その桜島が噴火した時に”降ってくる”火山灰を使って、絵を描く『火山灰アーティスト』が、鹿児島には居ます。
火山灰アーティストKYOCOこと、植村恭子さん。

今回は、KYOCOさんがクラウドファンディングにチャレンジするということで、インタビューしてきました。
#2では、火山灰アートへの想いや、なぜクラウドファンディングに挑戦しているのかについて、お話を伺います。
KYOCOさんの話をとおして、少しでも読んでいただいた方に活力が生まれれば嬉しいです。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
クラウドファンディング
どのサイトで始めるか

クラウドファンディングについて、僕自身よく分かってないんですけど。。
そもそも、クラウドファンディングのサイトがいくつかありますよね?
CAMPFIREとかREADYFORとかMakuakeとか。
どのサイトでやるかを、まずは決める感じですか?

そうですね。
正直、私も良く分かってなくて。笑
とりあえず問い合わせてみようと、「これぐらいの時期に始めたいんですけど。。」って連絡してみたんですよ。
一番早く返事をくれた会社で、チャレンジしようと思って。

なるほど。

そしたらREADYFORが最初に返事と電話をくれたので、『じゃあ、ここでチャレンジしてみよう!』と。

そういう決め方なんですね。笑

私の場合はね。笑
会社ごとに傾向というか、得意なジャンルがあるみたいな話も聞きますよ。

傾向?

例えば、A社は物販から社会活動まで幅広く取り扱ってて、B社は公共性が高いプロジェクトが多い。
C社はアプリがあるから定期的に見てくれるお客さんがいて、D社はアプリがないけどWEBでめちゃくちゃ見られてる。
みたいな感じ。

へぇ!
面白い!
もしクラウドファンディングやる時は、自分がチャレンジするプロジェクトに相性の良い会社を、様々な視点から見てみるのも面白いかもですね。

まぁ、全部後日分かった情報で、当時の私は知らなかったから、メールを一斉に送りつけるみたいな決め方をしたんですけどね。笑
プロジェクトをスタートするまでの流れ

笑笑
ちなみに、READYFORでチャレンジすることを決めた後は、どんな流れで進めていったんですか?

他社の進め方はよく分からないんですけど、 READYFORの場合は2つプランがあって。
A プロジェクトの組み立てから最後まで手続きを全部自分でやるプラン【無料】
B 専属スタッフが付いて、フルサポートしてくれるプラン【有料】

なるほど!
クラウドファンディングのことが詳しく分からない人でも、Bのプランだと安心かも。

だから私も『B フルサポートプラン』にしました。笑
専属スタッフにいろいろ質問してもらったり、文章を添削してもらったり。

全部自分で作り上げるのって、結構ハードル高そうですもんね。
あ!
逆に、クラウドファンディングに慣れてる人や、自分でやりきる時間がある人にとっては、お金のかからないAのプランを選択すればいいわけか!

そうそう!
まぁ、私の場合はAll-or-Nothing型でチャレンジするって決めてたから、フルサポートプランにした方が達成確率も上がるんじゃないかっていう思惑もあって。
達成金額は何に使う?

ちなみに、クラウドファンディングの目標設定金額は?

80万円です!

ちなみに、金額の内訳って教えてもらえますか?

基本的にはこんな感じですね↓
会場費:\300,000-
設営費:\ 70,000-
作品制作費:\32,000-
返礼品製作費:\112,000-
広報印刷費:\66,000-
手数料:\220,000-
合計(税込)\800,000-

…会場費って30万もするんですか⁉

会場で借りる鹿児島港が、結構高くて。。笑
会場費がもうちょっとなんとかなったら、その費用を設営費の方に回せるんですけどね。。

設営費って何ですっけ?

ほら、作品展って、絵を飾る以外にも、会場に装飾をしてあるじゃないですか?
絵を飾るためのパネルを増やしたり、案内の看板をつくったり。

してありますね!

なので、鹿児島港の利用料については、鹿児島県庁に交渉しようと思ってます。
桜島港の方は、鹿児島市の船舶局が所管してるんですよ。
こっちはジオパーク推進協議会で後援をいただけたので、無償で使用させていただけることになって。

あぁ!
鹿児島港と桜島港で所管が違うんですね!

そうそう。
鹿児島港が鹿児島県庁。
桜島港が鹿児島市役所。
鹿児島市船舶局が協力してくれる

知らなかったです!
ちなみに、桜島港側では、どんな場所で展示をするんですか?

桜島港の1階に、バスを待つベンチのあるスペースがあって。
そこの近くに、今から船舶局がギャラリーとして貸し出そうとしてるスペースがあるんですよ。

へぇ!


船舶局の方から、「そこのスペースを使いませんか?」って言っていただいて。
ほんと、ありがたいです。

鹿児島市の船舶局、いい仕事してる。
素晴らしい。

ただ、事務室みたいな空間になってるから、作品展らしく空間をアレンジ出来たらなぁって思ってます。
火山灰アートの世界観にあわせた装飾が出来たらなって。

たしかに、レトロフトの作品展を見に行って思ったんですけど、空間の雰囲気とか作り込みって大切ですよね。
のっぺらぼうな事務室に絵が飾ってあるのと、レトロフトに絵が飾ってあるのでは、印象が大きく違いますもん。

クラウドファンディングのリターン

ちなみに、クラウドファンディングのリターン(返礼品)は、どんな設定にしてるんですか?

お手紙、Tシャツ、ポストカードみたいなモノから、火山灰で絵を描く様子の制作過程動画までありますね。
もう少し金額が上がると、『オーダーで火山灰アートを制作して贈呈しますよー』とか。

オーダーで制作するんですか⁉
すご!

一番高いリターンだと、『作品展の会場や桜島からオンラインでガイドしますよー』っていうのがあったり。笑

実物やデータからオンラインガイドまで、リターンが幅広くて面白いです!

支援をカタチとして残したい方と、体験したいっていう方、応援だけしたい方、様々なパターンがあるかなぁと思っていて。
ただ、リターンに力を入れすぎるんじゃなくて、作品展自体にコミットして、やり切りたいなって思ってます。
大前提として、私の活動自体を応援してくれてるわけだから、そこをおろそかにしてはいけないよなって。

なるほどなぁ。
たしかに、返礼品を製作するのに一生懸命になって、作品展にかける時間が無くなったら、元も子もないですもんね。

クラウドファンディング≠資金集め

全然話は変わるんですけど、以前、大学生とクラウドファンディングについて話をしたことがあって。
そこで、僕の固定概念が完全に崩されたんですよね。

というと?

僕よりも一回り年下の大学生たちって、デジタルネイティブで、クラウドファンディングとか当たり前にある世界を生きてると、勝手に思ってたんですよ。
でも、僕が話をした学生たちは、
『クラウドファンディングって簡単にお金集められるんですよね?』
『そもそもやってるのって、意識の高い20代後半の人たちでしょ?』
って言ってて。

なるほど。

あぁそうだよなって思ったんです。
クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げたり支援したりしてる人って、全体で見るとごく一部なんだなって。
自分の心地よい情報しか見えなくなると、その感覚を忘れがちになるというか。
その感覚って、忘れちゃいけないよなって、引き戻されたんですよ。

たしかに。

よく考えてみたら、職場で話をしてると、FacebookやTwitterで当たり前に溢れてる情報でも、全然知らなかったりすることの方が多いんですよね。
『なんとなく流行ってるから、手っ取り早くお金を集めるためにクラウドファンディングをしよう!』みたいな思考になっちゃうと、ちょっと危険だなって、話をしながら思ったんですよね。

それは間違いないですよね。
クラウドファンディングを資金集めだって思うのであれば、やらない方が良いと思います。
そういうものじゃないんだと思う。

うんうん。
クラウドファンディングを利用する

資金集めをしたいんだったら、まだ『募金お願いします』って、街頭に立つ方が誠実というか。
私の場合も、今回のクラウドファンディングで資金を集めるというよりは、このクラウドファンディングを利用して、活動を知ってもらう、その入り口にするみたいなイメージなんですよ。

なるほど。

AllorNothing方式でプロジェクト立ててるけど、じゃあ目標金額達成しなかったからと言って作品展をしないのかと言われると、そういうわけじゃないし。
『作品展をやるorやらない』と『プロジェクトが達成するorしない』は、切り離されてるんです。

全額自腹だったとしても、作品展はやるわけですもんね。

そうそう。
私としては、美術に関心があるわけじゃない人達にも火山灰アートの存在を知ってもらうことによって、その先の景色が少しずつ広がっていくイメージで。
誤解を恐れずに言うと、クラウドファンディングというツールをうまく使わせてもらってると言いますか。

火山灰アートを通して鹿児島を知ってもらいたい

なんとなくモヤモヤが晴れてきました。
『クラウドファンディングすれば資金集まるんでしょ?』っていう考え方と、KYOCOさのクラウドファンディングへの向き合い方では、見てる時間軸が違うのかもしれない。
KYOCOさんにとって、今回のフェリーターミナルでの作品展を開催することがゴールではないわけですもんね?

そうそう!
というか、もはや私が火山灰アートを世界に広めることって、地域振興の一部だと思ってやってますもん。笑
鹿児島県民から嫌がられる火山灰という存在であっても、見方を変えれば魅力的なものになり得るんじゃない?って。

ほう!

鹿児島に住んでる人にこそ、身の回りのあるものをもう一度見つめ直してほしいというか。
私にとって火山灰アートはツールでしかないんですよ。

???

鹿児島とか桜島の魅力を伝えられるものであれば、何だって良くて。
例えば、明日から火山灰アートじゃなくて、サツマイモを売ることになっても、私は全然良いかなって思ってます。笑

なるほど。
何のために何をやるかみたいな話ですね…‼

そうそう。
とはいえ、今は火山灰を活用した新しい見せ方が出来ているので、しばらくはこの活動を続けたい。
一度『これだ!』って始めたことは、続けないと何のためにもならないと思ってて。

続けるっていう観点でいうと、お金をどう得るかって大事ですよね。
ずっと自己資金で活動してると、いつか枯渇してしまいますし。

たしかに。
今は、火山灰アートを通して、日本中や世界中に桜島や鹿児島の存在を知ってもらいたいんです。
知ってもらうためには続けないといけない。
私が火山灰アートを辞めちゃうと、桜島を知ってもらえたり、火山や地理に興味が出てくる人が増えたかもしれないのに、その可能性を摘んでしまうことになるじゃないですか?


なぜそこまでして、鹿児島や桜島の魅力を届けたいと思えるのでしょうか?

やっぱり、『桜島は鹿児島にしか無い唯一無二のものだから!』です。
そして、桜島みたいなその土地特有のモノは、地球上全ての場所に存在すると思うんですよ。

なるほど。

だから、コミュニケーションの手段として使ってる部分が大きいです。
例えば初めましての方とお話しする時、『私の住む場所の素晴らしいモノはコレです!』と桜島を紹介して、替わりに皆さんの土地の素晴らしいモノを教えていただくみたいな。
そうやって、世界中の人と仲良くなれたら、楽しいじゃないですか!

最高です。
それにしても、最初に火山灰アートを描き始めたのが2016年ということで、もう5年間も描き続けているわけですよね?
なぜ、そこまで続けることが出来るんでしょうか?
気づいてしまったからには責任を取る

火山灰アートに魅力を感じるうちは続けようと努力することって、やり始めた本人の責任かなって思います。
やり始めちゃったからには最後まで責任を取る、そういう感覚で活動を続けてるかもしれないです。

覚悟をもって続けてるわけですね。

例えば今後、火山灰アートのニーズが無くなったとして、それ自体はしょーがないことだと思うんです。
でもニーズが無くなったことに気づいたってことは、逆にどこにニーズが移ったかも分かるはずじゃない?

うんうん。

だったら、その時点での新しいニーズに合わせたカタチに柔軟に変えていけばいいじゃんって、そう思います。

おもしろいお話をたくさん、ありがとうございました!
クラウドファンディングが2021年11月1日まで。
作品展が2021年11月12日~11月18日ということで、大変だと思いますが、楽しみにしてます!

こちらこそ、こうやって注目してくれてすごく嬉しかったです!
ありがとうございました!

まとめー後編ー
火山灰アートを通して、日本中や世界中に桜島や鹿児島の存在を知ってもらいたい
『火山灰アート=鹿児島を知ってもらうためのツール』っていう話は、めちゃくちゃ興味深かったです。
『火灰アートを世界に広めることで、鹿児島や桜島に興味をもってもらうきっかけにしたい』っていう想いが素敵すぎる。
益々応援したくなるような、そんなインタビューでした!
ということで、 #2では、 火山灰アートへの想いや、なぜクラウドファンディングに挑戦しているのかについて 、お話を伺いました。
また次回、お会いしましょう!
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