鹿児島の圧倒的なシンボルである桜島。
その桜島が噴火した時に”降ってくる”火山灰を使って、絵を描く『火山灰アーティスト』が、鹿児島には居ます。
火山灰アーティストKYOCOこと、植村恭子さん。
今回は、KYOCOさんがクラウドファンディングにチャレンジするということで、インタビューしてきました。
#1では、今回の作品展にかける想いや、コロナ禍が与えた活動への影響などについて、お話を伺います。
KYOCOさんの話をとおして、少しでも読んでいただいた方に活力が生まれれば嬉しいです。
<聞き手=森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
クラウドファンディング
桜島フェリーの両港で同時開催する意味
ありがとうございます!
そうなんです!
火山灰アートの作品展をするというクラウドファンディングにチャレンジしています!!
最近、めちゃくちゃメディアに出てて、火山灰アーティストとしての認知度が爆上がりしてますよね…‼
ちなみに作品展の場所はどこで?
桜島フェリーターミナルの桜島港と鹿児島港を両方借りて、同時開催する予定です。
両方の港で同時に⁉
なぜ、会場がフェリーターミナルだったんでしょう?
桜島の住民にとっては欠かせない存在の桜島フェリーですが、普段はフェリーを使わない方も、岸から離れ海上でゆっくりと日常を振り返る時間を作ってほしかったんですよね。
閉塞感の漂う今だからこそ、なおさら。
なるほど。
桜島港と鹿児島港で、作品の内容は変えるんですか?
変える予定です。
今年の8月に、鹿児島県庁の18階で作品展をしたんですよ。
ただ、開催期間中にコロナの蔓延防止等重点措置が発令されて、18階に一般人が上がれなくなってしまい、中止せざるを得なくなってしまって。
作品展の途中で中止ですか。。
作品展が中止になった後に、たくさんの友人達から『行こうと思ってたのに残念。。』っていう連絡をいただいて。
それなら、どちらか片方の港は、鹿児島県庁でやってた作品展を見てもらう場にしようと。
なるほど。
もう片方の港は、新しい作品を描いて展示をする予定です。
コンセプトが違う両港を行き来していただいて、ふたつでひとつの作品展ができたらいいなって、そう思います。
1117
植村さんにとって火山灰アートの作品展って、今回で何回目になるんですか?
今回で2回目です。
1回目は昨年の11月に、レトロフトを借りて作品展をしました。
2回目なんですね!
桜島の標高って1117mなんですよ。
だから、2回目である今回の作品展も、11月17日辺りでやりたいなぁと思ってて。笑
おお!
なるほど!!笑
昨年の作品展から1年経ち、未だにこうやって火山灰アーティストとして活動出来てて、少しずつ美術展で賞もいただけるようになってきたんです。
ありがたいことに応援してくださる方もいらっしゃいますし、私の今年1年の集大成を皆さまに見ていただく場が必要だなと思って。
知ってもらう窓口としてのクラウドファンディング
そこから、なぜ今回のクラウドファンディングにチャレンジすることになったんでしょう?
「今年も11月に作品展をやりたいなぁ」っていう話を誰かとしてた時に、ふと言われたんです。
「KYOCOさんの活動をもっと広く知ってもらうんだったら、美術とかアートとかっていう方向性だけではダメなんじゃない?」って。
???
「今まで通りの作品展を開催しても、アートを好きにな人は見に来てくれると思うけど、それ以外の人は知る機会がないよね」って。
じゃあどうすればアートに興味がある人以外にも届けることが出来るかって考えた時に、クラウドファンディングが面白いんじゃないかっていう話になって。
クラウドファンディングであれば、美術とかアートが好きな人以外もいっぱい見てるんじゃないかと。
なるほど…‼
それって、いつぐらいの話です?
今年の8月末~9月頭ぐらいだったかなぁ。
1ヶ月前ですか⁉
クラウドファンディングって、そんなにトントンってやれるもんなんですか…⁉
いやー、わかんないです。笑
でも、今まで興味を持ってくれた人以外の層にも、やっぱり届けたいなって思ったんですよ。
アートっていう入口だけじゃなくて、もっと他の入口からも入ってもらえるようにしたいなって。
純粋にその行動力がすごいと思います。
まぁクラウドファンディング自体は、ほぼノーリスクで始められるし、今回はAll-or-Nothing方式だから、達成しなかったら「ごめんなさい!できませんでしたー!」って正直に言えばいいかなって思ってます。笑
All-or-Nothing⁉
そっちでチャレンジしてるんですか⁉
すごいですね。。笑
火山灰アーティストとしての顔
きっかけは熊本地震の支援
そもそも、火山灰を使って絵を描き始めたのって、いつからでしたっけ?
2016年だから…もう5年前のことですね!
びっくり!笑
たしか、くまモンを描いたのが一番最初でしたよね?
そうそう!
当時、桜島ビジターセンターで働いていたんですけど、地震被害のあった熊本阿蘇にあるビジターセンターへの募金活動を呼びかけるために、足元にあった火山灰を手に握って、くまモン《熊本の公式キャラ》とめじろん《大分の公式キャラ》を描いたのがきっかけでした。
なるほど。
そこから、桜島ビジターセンターでウェルカムボードとして、火山灰を使った絵を描き始めたんです。
床から壁へ
当時は、床に火山灰で絵を描いてたんですよね?
そうそう。
それこそコロナ前までは、ずっと床に火山灰で描いていて、すぐホウキと塵取りで消すみたいなスタイルでしたね。
もちろん、火山灰を固めてないから、描いた絵を持ち運ぶことは出来なくて。
そこから、なぜ今の立てるスタイルに変化したんでしょうか?
2020年にコロナ禍がやってきて、一気に自粛モードに突入しましたよね。
桜島ビジターセンターも公共施設なので、もちろん閉まるわけですよ。
ビジターセンターで火山灰アートを描くこと自体が出来なくなってしまって。
そうですよね。。
そんな時に、東京にいる高校の先輩から『鹿児島にいつ帰れるか分からないから、火山灰で描いた絵を送ってほしい』っていう依頼をいただいたんです。
実は、コロナ前にも火山灰で描いた絵を固められないかチャレンジしたことはあったんですけど、そこまで本気で考えていなくて。
でも、こうやって依頼をいただいたからには、この先輩に火山灰アートを届けるために、なんとかして灰を固めないといけないじゃないですか?
たしかに。
そこからは、灰を固める方法を試行錯誤しましたね。
ビジターセンターに行くはずの時間がまるまる空いてたので、100円ショップで色々材料を買ってきて試したりしながら。笑
コロナで影響を受けたことによって、今まで出来なかった部分にチャレンジする時間が生まれたわけですね!
そうそう。笑
最初は透明なマニキュアに火山灰を接着させて書いてたんですけど、粘着性が強くて灰のぼかしがきかなかったり、臭いが残ってしまったりしてたんですよ。
ぼかし!
たしかに、植村さんの火山灰アートって、濃淡による陰影が特徴的ですもんね。
そうなんですよ。
もうちょっと何とか出来ないかなぁって試した結果、今は木工用ボンドを水で溶いて、キャンバス全体に塗った上に火山灰で描いてます。
へぇ!
それだと濃淡が表現できるんですか?
出来るんです!
水と木工用ボンドを混ぜてるだけだから、水分が蒸発するまでの間は接着しないし、それまでは灰を自由に動かせるんですよ!
なるほど…‼
逆に乾いたとしても、木工用ボンドって水性なので、水を付ければ接着がほどけて、灰を自由に動かせるようになるんです。
おもしろい!!
コニシから後援もらおうかな。。笑
克灰袋と色味似てますしね。笑
たしかに。笑
私にとっては、コロナが良くも悪くも転機になりましたね。
コミュニケーションのきっかけ
あと、コロナの影響という意味では、病院から火山灰アートの依頼をいただくようになったんです。
病院に飾らせてほしいって。
病院から?
病院を訪れる人って、みな何かしら不安を抱えてくるわけじゃないですか?
その上、最近はマスク、検温、消毒が徹底されるようになって、気持ち的に重たくなるんだと。
たしかに。
病院側としては、火山灰アートを訪れる方に見てもらうことで、そういう『不安感みたいなものを少しでも癒してほしい』っていう想いがあるみたいで。
素敵な想い。
火山灰アートって、飾ってあるだけでコミュニケーションのきっかけになったりするんですよ。
コミュニケーションのきっかけ?
「この絵って何で書いてると思います?」とか、「これ白熊アイスを灰で描いてるんですよー」とか。
一緒に絵を見ながら、会話をするきっかけのツールになるんです。
なるほど!
年齢問わず、桜島とか火山灰って、鹿児島県民にとっては慣れ親しんだものだから、会話のきっかけとしては最適かも!
そうなんですよね。
こういう使い方をしていただけることが嬉しいし、継続的に火山灰アートのオーダーもいただけてて、ありがたい限りです。
作品の価格帯について
昨年、レトロフトでやってたKYOCOさんの作品展を観に行かせてもらったんですけど、飾ってある絵のほとんどを『売りますよー』ってやってたじゃないですか。
そこで、金額を見てすごく驚いたんですけど…金額安すぎません?
笑笑
正直、0がひとつ足りなんじゃないか?って思いましたもん。
いやー、私、プロでもないし、美術の学校行ってるわけじゃないから、金額の付け方とか全然わかんなくて。笑
わかんないから、googleで色々調べてみたんですよ。
笑笑
なんか、色々価格の付け方はあるみたいなんですけど。。
まぁ強いて言うなら、灰を拾いに行く移動費とか、絵を描く時間の人件費とか、その辺を考慮して、『時給これぐらいもらえればいいかな』ぐらいの感覚で、今は金額を付けさせてもらってますね。
ほう。。
まぁでも、だからこそ、手に取りやすさも感じていて。
というのも、アートを買う層って、いわゆるお金を持ってる人みたいなイメージだったんですよ。
なるほど!
でも、7千円とか、1.2万円で玄関に飾れるサイズの火山灰アートが売られてたから、僕みたいな普通の公務員でも、「ちょっと買ってみようかな」って思えるというか。
試しに玄関に飾ってみようかなって思えるから、通常のアートに興味がある層より幅広い層にアプローチ出来てると思います!
なるほど!
それこそ今、色々な公募展に出品してるんですけど、少しずつ賞をいただけるようになってきてて。
これからもっといろんな賞をいただけるようになれば、少しずつ作品の価値が上がっていくかもしれない。
今火山灰アートを買ってもらった方には、そういう形で恩返し出来たらなぁって思ってます。
まとめー前編ー
火山灰アートはコミュニケーションのきっかけとなる
鹿児島県民のシンボルである桜島。
活火山である桜島で、厄介者扱いされがちな火山灰をアートにすることで、地域振興や癒しに転換しているKYOCOさん。
少しずつ認知度が広がり、世界へ羽ばたこうとするKYOCOさんの活動に目が離せません!
ということで、#1では、今回の作品展にかける想いや、コロナ禍が与えた活動への影響などについて、お話を伺いました。
#2では、クラウドファンディングの中身について、深いところまでお話を伺いますので、お楽しみに!
ではまた次回、お会いしましょう!
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