最前線で働く公務員が、日々どんな思いで働いているのかを深堀る『公務員図鑑』
今回のゲストは、鹿児島大学を卒業後に熊本県庁で働く村橋友介さんです。
前編では、村橋さんが「地域のために役立ちたい」という情熱と、コロナ禍でのもどかしさからレンタル公務員という活動にたどり着くまでを伺いました。
ここからは、実際にどのように活動をスタートさせ、どんな出会いや経験を積み重ねてきたのか。そして、その活動がご自身や周囲にどんな変化をもたらしたのか──その舞台裏を掘り下げていきます。
村橋さんの姿をとおして、普段日の目を見ることが少ないけど必死に働いてる公務員の姿を、少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。
<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase編集者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)

誰も来ない?ゼロからの営業

レンタル公務員としての活動を始めた時、まずは何から動き始めました?

最初はFacebookで「レンタル公務員始めます!」と投稿したんですが……まぁ依頼は来ないんですよ。笑

「レンタル公務員ってなんだろう?」ってまずは思っちゃいそう。苦笑

ですよね。笑
待ってても依頼が来ないので、地域振興の仕事で繋がりのあった観光協会さんのところに直接行きました。
「レンタル公務員っていう活動を始めたんですが、何かお手伝いできることはありませんか?」と、自分から声をかけて回ったんです。


営業活動からスタートしたんですね!
それって公務員として働く時間内?外?

もちろん時間外です。笑

すごい..!!

とにかく”事例を作る必要があるぞ”って思ったんですよ。
営業する中で「何をどこまでお願いしたらいいのか分からない」って言われたことがあって。
頼む側がイメージしやすいよう、具体例を示せるようになりたかったんです。

本業にも好影響、そして職場の理解

なるほどなぁ。
ちなみに、レンタル公務員の活動を始めたことで本業にも何か良い影響ってあったりしましたか?

ありました!
地域振興の業務の中でイベントを企画することがあるんです。
レンタル公務員の活動を通じて私自身に顔見知りが増えたことで、「デザインはあの人に頼もう」とか「移住支援ならあの地域の○○さんがぴったり」みたいな、具体的で現実的な提案ができるようになったんですよ。

なるほど!!

仕事をしているだけでは出会えなかった人と繋がれたことで「すみません○○さん、今度デザインの仕事があるんですけど、協力してもらえませんか?」ってお願いができたり。
視察先探す時は、「あの地域に移住してきた○○さん、かなり面白い活動してるから参考になるかもしれません」っていう提案が先輩や上司にできたり。


地域の人と繋がりができてるから、それを仕事にも活かせるようになったっていうことですよね!

そうなんです。
しかもどんな立場の人であってもお願いがしやすくなったんです。

というと?

レンタル公務員の活動を通して、いろんな立場の人とフラットに接しているわけですよ。
そうすると、通常は課長クラスじゃないと連絡できないような方とも知り合いになる機会が増えて。
私から直接連絡することができたりして。


レンタル公務員として相手に与える活動をし続けているからこそ、逆に困った時に助けてもらえるっていうことですよね。
すごいよなぁ。
結局、人と人との関係性って感情で動くので、そういう部分が効いてきますよね。

同僚たちからの反応はどうでしたか?
外でレンタル公務員として活動することに対して、どんな反応でした?

始めたばかりの時は職場には言ってませんでした。
始める前に「こういうことを始めようと思います」って伺い立てちゃうと、正直、いろいろ言われちゃいそうじゃないですか。。

めっちゃわかる!
やる前に先回りしてあーだこーだ言われると、モチベーション下がっちゃいますもんね。笑

そうなんですよ!
でも、地域の方が上司に「先日村橋くんが手伝いに来てくれてねー!」と話してくださって。
そこでバレましたね。笑

目に浮かびます。笑

慌てて説明したら、意外にも当時の局長が好意的で。
一番上の責任者が認めてくれたことで、課長や部長にも話しやすくなりました。
みなさん「良い活動だね」と応援してくれて、ありがたかったですね。

応援する以外にないですよね。
若い職員が自分の休みを使って地域に入っていって、そこで無償でお手伝いしてるわけだもん。

昔は県職員が地域イベントに顔を出す機会も多くて、自然に地域と行政の関係性ができていたそうなんですよ。
私自身「県職員が遠くなった」って言われたこともあって。
そういう背景があったので、私がレンタル公務員としてお手伝いをしに行った時に「村橋くんが来てくれて嬉しいよ」と言ってもらえたことは、めちゃくちゃ嬉しかったですね。

人と人のご縁が繋がる

4年間レンタル公務員として活動続けられる中で最も印象的だったレンタルを1つ挙げるとすると、どんなレンタルがありましたか?

うーん、、一番印象的だったのはキャンプ場で行われた結婚式へのレンタルです。

結婚式へのレンタル!?


小国町って結婚式場がないんですよ。
ただ、『どうしても地元で結婚式を挙げたい!』という新郎新婦さんがいらっしゃって、キャンプ場を借りて自分たちで結婚式をつくることになって。
その手伝いに行ったことが自分の中では思い出深いです。
その方々はほとんど面識なかったんですけどね。笑

知らない人の結婚式にレンタルされたわけですね。笑

それこそ、知り合いのコーヒー屋さん(地熱珈琲)のお手伝いをしてた時に、ちょうどご夫婦が結婚式の打ち合わせに来られたんです。
そこで「この方、県職員なんだけどレンタル公務員っていう活動をしてて」って私のことを紹介してくれて。
そしたら「当日スタッフとして来てくれない?」って。笑


笑笑

この一連の流れも印象的なんですけど、当日、まさかのウェディングケーキの切り分け係に任命されて…しかも真四角のケーキだったので、人数分の切り分けがめちゃくちゃ難しいんですよ!
絶対に失敗できないですし!笑

おもしろい!
様々な場所にレンタルされながら、村橋さん自身がいろんな職場体験をしているような感覚なのかもと思いました。

まさに!
その感覚に近いと思います。
「趣味」としてのレンタル公務員

これだけ精力的に活動できる原動力は何なんでしょう?

最初は”経験を積むため”でしたが、続けていくうちに面白い人たちと出会えるのが楽しくて。
今はもう完全に”趣味”ですね。

いろんな場所に出かけて行ったら面白い人たちがいて。
そこでの出会いが原動力になってるわけですね!

そうですそうです!
レンタル公務員の活動に対してみなさん応援してくださるんですよ。
「おもしろい活動してるね!ちょっとうちにも来てよ!」って。

うんうん。

「地域のために土日を使って偉いね」と言われることがあるんですけど、私自身の感覚は全然違うんです。
マラソン好きな人が土日走ることに対して「休みなのにえらいね!」とはならないじゃないですか?
それと同じ感覚で、レンタル公務員の活動を休日することは、私にとって趣味の活動なので全く苦じゃない。


なるほどなぁ!

今住んでるところから阿蘇エリアまで2時間ぐらいかけてレンタルされに来るんですけど、僕にとっては”楽しい!”でしかなくて。
むしろ週末に活動することで、月曜からの活力をもらっています。
毎回「こんな楽しくて良いんかな」って思ってて。笑

最高。
今の発言にレンタル公務員を続けている理由が詰まってる感じがしました。

レンタル公務員の活動って「地域のために自分の時間つかってえらいね!」みたいな文脈で言われることが多いんですよ。
それもあるんですけど、それ以上に自分自身が楽しいからやってる。
無償で提供することが美徳だみたいな風潮あると思うんですけど、私が今もレンタル公務員を続けているのはそこの価値観ではないんですよね。

「趣味でやってる」っていう言葉が完全に腑に落ちました。
お金払って週末にみんな趣味やってますもんね!
村橋さんにとっては、レンタル公務員がそれと同じ感覚だっていうことですね。
家族との関係性

少し話は変わるんですけど、村橋さんってご結婚されてましたよね?

はい。
もともと熊本県庁の同期だった相手なのですが、5年間付き合って昨年の8月に結婚しました。

おめでとうございます!
5年間付き合ってたということは、村橋さんがレンタル公務員の活動を始める前からお付き合いされてたわけですね?

そうです。
レンタル公務員を始める前も始めた時も、全て妻は知ってくれてるので。
正直、活動を始める時「なんて言われるかなぁ..」って思ってたんですよ。

ですよね!
いや、パートナーの方がレンタル公務員の活動に対してどう思っていらっしゃるのかも、今日伺いたかったことの1つだったんですよ。

妻は「好きなことが見つかってよかったね」ぐらいの温度感で応援してくれてて。
レンタル公務員の活動って、私自身「ようやく好きなことが発見できた!」みたいな感覚なので、そこを認めてくれた上でこうやって結婚に至ったことは嬉しかったです。

そこのコミュニケーションが取れてるのは素晴らしいと思います!
(いやー実は妻から反対されてるんです..とかじゃなくてよかった!)

彼女は彼女で自立してて、大切にしたい時間の使い方がしっかりあって。
お互いにやりたいことを認め合う関係性が築けているので、本当にありがたい存在です。
公務員仲間への広がりと未来

レンタル公務員の活動を続ける上で心がけてることってありますか?
いわゆる業務外の活動を公務員の立場で続けるのって、難しい側面もあったりしそうだなと思っていて。

「余計なことするなよ」的なことって言われたりしません?笑

いやっ、職場の方からはそんな風に言われたことはなくて。
そもそも「そうやって言われるの嫌だな」って思ってたので、通常業務をめちゃくちゃ真面目にしてます。笑

なるほど!

最近ではありがたいことに新聞やテレビ等のメディアで、レンタル公務員の取り組みを取り上げていただける機会がありまして。
この状況で私がちょっとでも調子乗ったような態度を仕事で取ると、「業務に支障出てるじゃん」って言われやすくなるじゃないですか?

間違いない。

なので、普段の業務こそ人一倍頑張ろうって決めてるんです。
活動前よりも真剣に取り組むようになったと思います。


外での活動が通常業務にも波及して、良い相乗効果になってるわけですね。
最近は県庁の職員の方々も一緒にレンタル公務員の活動されてましたよね?

そうなんです!
というのも、正直最初の方はあんまり同僚に知られたくなかったんですよ。
たくさんの人に知られるほど、否定的な意見も出てきそうじゃないですか?笑

間違いない。笑

でも、私自身、意識が少しずつ変わってきて。
自分の取り組みがメディアで取り上げられることで他の若い県庁職員が「自分も出来そうだぞ!外で活動しても問題ないんだ!」って思ってもらえたら良いなって。
そもそも公務員になる人って、『地域の人のために力になりたい!』っていう想いを持って採用試験受けてる人が絶対いるはずじゃないですか?


一定数いるはずですよね。

そういう人が少しでもいるならと思って、今年から県庁内の職員が見れる掲示板でDIYや地域活動の募集を共有し始めたんです。
自分自身の阿蘇でつくった繋がりを、熊本県庁職員のみなさんへ少しでも還元することができたらなって。
そしたら初回で6人参加してくれました。
年齢も職種もバラバラで、活動の幅が一気に広がりましたね。

いやー、そういう身内へ自分の活動を共有することって、かなり勇気必要ですよね。
自分が大切にしてる活動であればあるほど。

そうなんですよ!
ただ、思ってる以上に好意的に受け止めてもらえて。
初回の募集には6人も参加してくれて、年齢も職種もバラバラで、活動の幅が一気に広がった気がします。

プライベートなところで一回会うことが、仕事をスムーズに回すためにもかなり大切だったりしますよね。
頭で分かってても不得意な人が公務員には多い印象なので、すばらしい巻き込み方だと思います。

かこつければどこにでも行ける

大学での講演も先日されてましたよね!?

はい。尚絅大学で学生たちに先日お話しさせてもらいました。
SNSでの私の活動を知ってくださった県職員の先輩が、大学の先生に推してくださったみたいで。
いろんなご縁が繋がって、ありがたいです。

活動を続けているからこそ、良い循環が起こってるんですね..!!

まさに。
自治体ワークスっていうメディアから取材を受けたことで、九州各地の公務員の方と繋がることができたり。
鹿児島大学の法文学部のHPで取り上げてもらったことで、先日鹿児島のイベントにお声かけいただき、そこで森満さんとも出会えて。


その時のご縁で私たちもこうやって今熊本に来れてるので、感謝しかないです!

熊本と鹿児島はお隣同士なので、お互いに情報交換しながら仲良くしてもらえると嬉しいです。笑

いや、ほんとに!こちらこそ今後ともよろしくお願いします!笑
村橋さんのように「自分軸」で動く姿は、働き方に迷っている人の背中を押すと思います。
今日はありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました!
まとめ-後編-
「誰も来ないかもしれない」
そんな不安から始まったゼロからの一歩。
それでも扉を叩き続けた先には、笑いと涙が交差する、かけがえのない現場がありました。
「やらなきゃ」ではなく「やりたいからやる」。
その純粋な気持ちが、活動を長くあたたかく続ける力になっていきます。
そして週末の活動は本業の自分までも豊かにし、名刺や肩書きではなく人と人がつながる喜びを思い出させてくれました。

気がつけば、その背中は同じ職場の仲間や、まだ社会に出る前の学生たちに、小さな勇気をそっと手渡しています。
──人をつなぎ、地域を温める“趣味”が、小さくとも確実に未来を動かしているのかもしれません。
ということで、今回も最後までご覧いただきありがとうございました!
また次回お会いしましょう!



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