公務員を辞めて民間企業で働き始めた人。フリーランスになった人。
民間企業を辞めて、公務員になった人。
やりたいことや夢をかなえるために、新たな道へ踏み出した『元』公務員や『現』公務員に密着します。
彼らは何を思って行動し、今何を感じているのか。
今回は、鹿屋市役所から民間企業へ転職した、谷村亜希子さんです。

第1話では、公務員から民間へ転職するきっかけについてお話を伺いました。
谷村さんの姿をとおして、働き方で迷ってる人や悩んでる人のモヤモヤが、少しでも晴れてくれれば嬉しいです。
<聞き手=上木寿人(KagoshimaBase編集者)、森満 誠也(KagoshimaBase編集者)>
谷村亜希子さんのプロフィール
鹿児島県鹿屋市出身。
高校までを鹿屋市で過ごし、鹿児島大学へ進学後、ディズニーストアでのアルバイトを経て鹿屋市役所へ。
16年勤めた鹿屋市役所を退職し「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」へ転職。東京での暮らしが始まる。
その後、高知、東京での生活を経て「みらいワークス」へ転職した後に鹿屋に戻り、フルリモートワークで地方創生の仕事に携わる。
気づいたら27歳になっていた

谷村さんって今は民間企業で働いていると思うのですが元々鹿屋市役所で働かれてましたよね?
大学を卒業してすぐに鹿屋市役所に入ったんですか?

いや、新卒ですぐに市役所へ!というわけではなく、結構フラフラしてましたね。笑

そうなんですか!?

ちょうど就職氷河期に卒業したのもあるんですが、真面目に就職活動もしてなくて..
当時は鹿児島市の天文館に「デイズニーストア」があって、大学生の頃にそこのオープニングスタッフとして働き始めたんですよ。

あー!ありましたよね!

その仕事がすごく楽しくて。
大学卒業してからもディズニーストアでアルバイトをしていました。

(大学卒業してからも..!?)

気づいたら、いつの間にか27歳になっていて「そろそろ就職しないと!」って思って。
でも、就職難の時代に何のキャリアもなくて、就職できるかって話ですよね。笑
「これはやばいぞ..」と、色々考えて思いついたのが公務員試験で、いくつか受けたうちの一つが鹿屋市役所でした。


僕も大学時代に海外旅行してたらいつの間にか26歳になってて、慌てて公務員試験受けたクチなので、すごく共感します。笑

おー!笑
私の場合は、運良く鹿屋市役所にひろってもらえたんです。
感謝です!

ディズニーストア⇔公務員が僕の中でどうしても結びつかないんですけど、公務員以外にも就職試験は受けたんですか?

受けてないです。
新卒じゃなくて27歳だったので、年齢的に中途採用になるんですよね。
でもアルバイトの経験だけじゃ中途採用枠にも入れず..断念しました。

ほぼ同年代なので当時の空気感が分かるんですけど、そんな時代でしたよね。笑
壺からリアルに塩を投げられて

ディズニーストア勤務からの市役所だと、働き方が大きく変わっていそうですが..鹿屋市役所ではどんな業務を?

最初の所属先が税務課だったんですが、めちゃくちゃ面白かったですね。

(税務課=面白い..?)

民間の会社じゃ会えないような人にたくさん会えたので。
当時は窓口で怒鳴られることもよくあったんですけど、それまで人生で怒鳴られたことなんかなかったわけですよ。
それなのに、急に知らないおじさんから「今挨拶しなかっただろうが!」って怒鳴られる日々が始まって。笑

(..笑ってるけど普通にしんどくないか?)

税務課なので夜間徴収にも行ってたんですけど、「税務課です」って言うか言わないぐらいのところで最初からめちゃくちゃ怒ってて。
壺に入った塩を投げられて。
人生で人からリアルで塩を投げられることって、なかなかないじゃないですか。笑
「わあーびっくりした!」ってことの連続でした。


未知との遭遇だったわけですね。

いろんな人と会えるのが面白くて。

「怖い」とかじゃなくて「面白い」と捉えられてるのがシンプルに凄いです。

面白かったんですよね。職場もみんな仲が良くて、ユニークな人も多くて。
窓口でわぁーって怒られてたりすると同僚が出てきて場を収めてくれたり。
「疲れたー」と思ってたら「さっきは大丈夫だった?」って聞きに来てくれる人がいたり。
毎日が変わった出来事の連続って感じでした。

なるほど。

ある先輩職員が年配の方から納税の相談を受けている時に、親しみを込めて「お母さん」って話しかけてたら、「お前のお母さんじゃない!」って怒られてるみたいなことがあって。

ありますよね、良かれと思ってしたことが裏目に出るパターン。

近くの席だったので先輩が怒鳴られてるのが聞こえてくるわけですよ。
それを聞いてて、すごく可笑しくて。
先輩もニヤニヤしながら「じゃっとな(そうだよね)」って言いながら戻ってきて。笑

ネガティブなこともポジティブに変換できるって最高ですね!(僕はそう思えないタチなんだよなぁ..)

普通に社会人してたら、こんな事なかなか起きないですもん。
「今日もちょっと変わったことあったな」みたいな環境が、私にとっては新鮮ですごい面白かったですね。
好きな職場でした。
お寺で決めた退職

全部で何年ぐらい鹿屋市役所にいらっしゃいました?

16年間いましたね。

16年所属して、しかも公務員の仕事も面白いと感じられるタイプだったのに、なぜ転職をすることに?
何かきっかけがありましたか?

ヒラ職員の時って割と自由に動けてたんですけど、 27歳から16 年経つと管理職になるわけですよ。
管理職の仕事って、現場に出向くというよりは内部調整したり、議会に対する仕事をしたり、全然外に出られなくなって。
「えっ、出世したらずっとこれが続くってこと?」ってふと思った時に、「私はきっと、このままここにいても今までのように楽しく働けない」と思ったんです。

なるほど..!!

公務員って辞める人少ないし年功序列なので、なんとなく将来こうなるんだろうなっていうモデルケースが見えやすいじゃないですか。
何歳ぐらいになったらこうなってとか、こんなことをしてとか。
「なんかつまらないかも」って正直思ってしまったんです。

うんうん。

適性ってあると思うんです。
私の場合は「面白いか面白くないか」が仕事をする基準なので、席に座って、調整、交渉を続けていくのは無理だと思いました。
それが転職する大きなきっかけですね。

そこに気がついてから退職するまでって、どのくらいの期間でした?

うーん..3ヶ月ぐらいだったかな。

3ヶ月!?!?

サクッと3ヶ月です。笑

辞めようと思って働きながら転職活動したら、意外と早く転職先見つかったみたいな感じですか?

いや、全く。笑
辞めるまで全く転職活動してなかったんですよ。
市役所での最後の仕事が国民文化祭で、当時は担当係長だったんですけど。
アホみたに仕事したんですよ。ほとんど休みなく働いたんですね。
なのでイベントが終わったら、燃え尽きてしまって。


なるほど..

イベントの後は足を引きずるように仕事してたんですけど、体調が悪くなって休職したんです。
「戻っても、調整とか交渉をするんだよな..」っていう思いが消えないんですけど、ただ、公務員とし長く働いてきたから安定的な給料がなくなるのも不安だったりして。

不安ですよ!
間違いない!

その頃、ぶらっとお寺に行ったんですね。
昔からお寺の中の雰囲気が好きでたまに行ってたんですけど、お寺の静かな環境の中でこれからどうしようって考えてて。
お寺からの帰り道に車を走らせてる時、市役所の総務課から電話が来たんです。

ほうほう!

「体調どうですか?復帰いつにしますか?」って聞かれたんですけど、気がついたらその電話で「辞めます」言ってました。

ええ!

休んでたので、自分自身と向き合うことにじっくり時間をかけて考えられたんですよね。

そういうタイミングでお寺に行くの、すごく気持ち分かります。
静かで、ゆっくり時間が流れてて、自分と向き合える環境ですよね。

心落ち着くんですよ。

40代での東京進出

転職先が決まってから辞めたんじゃなくて、「辞めます!」→「これからどうしよう」って感じだったんですね。(すごいことだよな..)

はい。
だから「やべぇ!」ってなりましたよね。笑

でしょうよ!笑

辞めることは決まったものの、「これまでの公務員としてのキャリアを活かせる仕事は何だろう?」って、速攻でネット検索しました。

私も公務員から民間企業への転職組なので、転職先探す時の難しさが分かるつもりでいるんです。
公務員としてのキャリアって数値で語り辛いので、かなり難しくないです?
どういう探し方をしたんですか?

今までのキャリアを活かすことは大前提としつつ、私の場合は仕事に関しては身分の安定よりも面白さを優先していたので、自分自身が面白いと思えそうな企業を探しました。
あと、鹿屋市内で転職しようとすると、いろんなところで「なんで市役所辞めたんですか?」って聞かれるのがしんどいなと思いまして。

地方だと噂話回るの早いので、そうなっちゃいそうですよね。
特に公務員を辞めたってなると、そんな人周りに居ないのでより聴かれちゃいそう。

そんなことを考えてた時に、ふと「東京で暮らしてみたい!」って昔思っていたことを思い出したんですよ。
「東京..良いかも!なんか面白そうだし、行ってみよう!」って思って。
そこで見つかったのがふるさと回帰センターの相談員という仕事でした。

まとめー第1話ー
なんか面白そうだし、行ってみよう!
27歳で「そろそろ就職しないと」と思って公務員試験。
税務課の窓口では、怒鳴られたり塩を投げつけられたりという出来事を、「日々の変わった出来事みたいな感じで面白い」と、人との摩擦や予測不能なやりとりの中に「仕事の面白さ」を見出す谷村さん。
昇進とともに変わる仕事内容への違和感を無視せず、仕事に関しては身分の安定よりも、面白さを優先する。
谷村さんと話していると、自分の感覚や素直な気持ちに従って生きていくことの大切さを感じます。
「なんか面白そうだし行ってみよう!」
そうそう、この感覚!そう感じた今回のインタビューでした。
次回は、転職後の東京での生活と現在の鹿児島でのリモートワーク生活について深掘りしていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
また次回、お会いしましょう!



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